【知っておきたい】人工透析の時間と予後の関係とは
透析治療にはどのくらいの時間がかかるのでしょうか。透析にかかる時間は個人の体格や食事、使用する透析機器の性能などによって決定されており、日本では半数以上の透析患者さんが4~4.5時間の透析を行っています。
透析時間は長く行うと死亡率が低くなることが報告されており、長時間透析がここ最近注目されています。今回は、人工透析の時間と予後について詳しくみていきましょう。
透析治療にかかる時間はどれくらい?
施設での血液透析時間は、4~4.5時間が67.9%で最も多く、次いで3~3.5時間が11.6%、3.5~4時間が7.4%となっています。一般的には日中に1回4~5時間の透析を週3回ほど行います。
また、1回で6時間以上の透析を行う長時間透析や、夜間の寝る時間を利用して7~8時間透析を行うオーバーナイト透析のような身体の負担を軽減する長時間透析もここ最近注目を浴びています。
反対に、1回の透析時間を短くして週に5回以上透析を行う頻回透析など、1回4~5時間の標準的な透析よりも短い時間で行う透析もあります。
透析の時間の決め方
透析の時間は誰でも同じ時間ではなく、体格や摂った食事の量や内容、ダイアライザ―の性能、体重当たりの血液流量などから、身体に溜まった老廃物や余分な水分を取り除くために必要な透析時間数を個人ごとに決めます。
体格の小さな人よりも、大きな人の方が老廃物や余分な水分を取り除くために時間がかかります。
また、透析の時間数は食事の量や内容によっても変わってきます。透析日と透析日の間に摂った食事の量が多い場合や、水分量の多い食事を摂った場合、透析時間を長く設ける必要があります。
透析時間と予後の関係
一般的な透析時間の4~4.5時間の死亡率を1として比較すると、平均して4.5時間以上の透析時間を取った場合、死亡率が0.8倍となり、死亡リスクが減ります。
反対に、3.5~4時間未満の透析では死亡率が1.3倍、3~3.5時間未満の透析では死亡率が3倍となり、透析時間が短いと死亡リスクが高くなることがわかっています。
透析の時間を増やすと元気になる?
先程みたように、透析時間が長い方が死亡率が低いことがわかっています。透析の一般的なスケジュールである週3回、1回4時間(週当たり12時間)の透析時間では、透析によって補われる腎臓の機能の働きは約5~20%とされています。
仮に、5%しか腎臓の機能を補えなかったとすると、残されている腎臓の機能低下が進むとともに生命予後も悪くなります。
透析時間を少しでも増やすことが元気へとつながる
もし、透析時間を週3回、1回8時間(週当たり24時間)とすると、透析で補える腎臓の機能は約10~30%となり、補える腎臓の機能の程度が増えます。
しかし、実際の生活で1回8時間を透析治療にとられるとなると、仕事や家庭にかける時間とのバランスから、なかなか実行することは難しく、体力的な面で8時間の透析時間が厳しい方もいらっしゃいます。
透析時間は3時間よりも4時間、4時よりも5時間と1時間でも長い方がよく、普段4時間の透析時間を1時間増やして5時間にするだけでも、体調良くなったとおっしゃる方も珍しくありません。
長時間の透析では老廃物や余分な水分をいつもより多く除去することができるため、食事制限も緩やかになり、食べられる量も増えます。しっかりと食事をとることができるので、結果的に元気になることへとつながるのです。
まとめ
一般的な透析のスケジュールは週3回、1回4時間程度ですが、透析時間を長くすると死亡率が低くなります。また、1回4時間の透析時間を5時間に増やすだけで、無理せずに除水が行え、食事制限も緩やかになって食べられる量や内容が拡がります。
「永く元気でありたい」「少しでも身体の負担を減らしたい」そんな方は、一度長時間透析を検討してみることをオススメします。
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