■OASIS heart 20号
透析と旅行 ~グローバルに視点を向けて~ |
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アウトバウンドへの支援に取り組む――ここまでは、インバウンド(海外患者さんの受け入れ)のお話をしてきましたが、そもそも私たちには、日本の患者さんに活動範囲を広げていただきたいという思いがあります。つまり、アウトバウンド(日本の患者さんを海外へ)への取り組みも行っています。昨年はアジア3カ国への視察を行っています。そのうちの1カ国がベトナムだったのですが、実際に行かれてみて、現地の透析事情はいかがでしたか。 看護師:まず、施設によって透析事情は大きく異なります。国立病院は過酷な状況です。1日4~5クールは当たり前で24時間稼働。93ベッドで650人の患者さんの透析治療をしており、救急が月に250件もある状況です。 しかも保険の関係で、ダイアライザーだけでなく回路のリユースも当たり前です。さらに透析が必要な人のうち10%しか透析を受けられない状況でもあります。その理由の1つは、圧倒的な透析施設の不足です。透析施設は大都市にしかなく、透析をしたい患者さんは「透析村」と呼ばれる透析施設に近いエリアに引っ越して来るしかありません。その一方で、私立病院はとてもゴージャスで、もちろんリユースはありません。個室の完備もあり、日本の透析よりも素晴らしい設備もあります。
――現地の透析費用はどのくらいですか。 看護師:国立病院ですと保険請求でだいたい1,500円くらい。私立病院ですと1万~1万8,000円ほどだと思います。
――ここで、北米に行かれた患者さんのエピソードを聞かせていただけますか。 ――それは大変でしたね。費用の面はいかがですか。 看護師:北米はアジア圏よりも高いと思います。例えばフィリピンの日系病院ですと3万円くらいですが、北米は500~600ドルで大体8万円と思います。 ――それは高いですね。看護師・コンシェ:高いです。 私たちが旅行透析をサポートする理由~日本の透析治療を提供しているという責任感――実は以前、患者さんアンケート調査をした時に「海外旅行に行くならハワイに行きたい」というご意見が非常に多かったのです。患者さんのその思いを私たちは何とか叶えて差しあげたい、何か出来ることはないかと考えています。しかし、これまでお伝えしてきました通り、旅行透析にはインバウンド・アウトバウンド共に、それぞれに大変なことがあります。それでも私たちOasisMedicalは旅行透析を支援し続けているわけですが、その点についてお話しください。
看護師:仕事もするし出張もするし、家族との旅行も楽しんでいるアクティブな患者さんに、国内外問わず、うち(OasisMedical)で透析をされてた患者さんに「安全・安心な透析ができてよかった」とか「また来年も来たいです」って言ってもらえたら嬉しいし、その瞬間、その言葉を聞けるだけでも良かったって思います。だからまた頑張れるのです。 ――それは日本の透析の質を担っているという重責でもありますね。 看護師:はい。コンシェ:私も同じ意見です。先程(前号)の台湾のお婆ちゃまの言葉もそうですが、海外旅行から帰国された患者さんも同じで、「海外旅行、楽しかったよ」とか「また行きたい」などと、笑顔で、そしてキラキラした表情で言われたら、私たちもまた頑張ろうって思います。 オリンピックイヤーまであと3年~私たちが頑張っていること~――東京オリンピック・パラリンピックまであと3年足らずです。もちろん多くの透析患者さんが海外から日本に来ると思います。そんな中、私たちは「安心・安全な透析」を提供するために、更に頑張り続けなければならないと思うのですが、それぞれオリンピックイヤーに向けて、何を頑張りますか。 看護師:個人的になりますが、グローバル対応ができるナースになりたいです。海外の文化や相手の考えを理解しながら、言語も相手の言葉を使えるようになれたら素晴らしいなと思います。ただ、とてもハードルは高いですが(笑)。頑張りたいなと思っています。コンシェ:同じく言葉の壁なのですが、通訳を通すと微妙なニュアンスが伝わらないことがあるので、会計の時や受付レベルでの英語対応は、できるようになりたいと思います。――ありがとうございました。 (Visited 1 times, 1 visits today) |