透析による手足のしびれは?原因と対策を知ろう
透析による合併症のひとつに、手足のしびれがあります。手足のしびれは透析患者さんに非常によくみられる症状で、透析期間が長いほど症状が現れやすくなります。
しびれがあると、夜間の睡眠が妨げられるたり、歩くことや手を使うことが困難になります。
透析によって起こる手足のしびれの原因と対策について、詳しくみていきましょう。
透析治療による手足のしびれ
透析患者さんは腎臓のはたらきが低下し、尿毒素物質が身体に蓄積して知覚神経が障害され、手足のしびれやけいれんなどの症状が生じます。また、動脈硬化によって手足の末梢動脈が細くなり、血流が低下して手足にしびれがみられる方もいます。
長期の透析治療を受けている患者さんでは、透析治療では除去しにくい老廃物(β2-MG:ベータ2ミクログロブリン)が体内に蓄積し、骨や腱、靭帯、関節に沈着します。β2-MGはアミロイドという物質になって、透析アミロイド―シスという状態になり、肩の痛みや手のしびれ、指の動きの障害といった症状をきたします。
参考文献:透析患者さんの手足のしびれ
透析アミロイドーシスによるしびれ
透析アミロイド―シスになると、手首の手根管部や手指の屈筋腱・伸筋腱、肘の内側の肘部管、肩関節の筋肉の腱など、アミロイドが沈着する部位によって、次のようなさまざまな上肢の病気が起こります。
- ・手根管症候群
- ・ばね指
- ・狭窄性腱鞘炎
- ・肘部管症候群
- ・肩関節症(透析肩)
神経が通っている手根管や肘部管の靭帯や腱にアミロイドが沈着すると、手根管症候群や肘部管症候群となります。アミロイドが沈着して管の中が狭くなり、中を通る神経が圧迫されると、手のしびれや筋肉がやせ細って力が入りにくいなどの症状がみられるようになります。
手根管症候群によるしびれ
手根管は手首にある指の屈筋腱と正中神経が通る管で、手根骨と横手根靭帯に囲まれています。
老廃物がアミロイド繊維となって横手根靭帯へ沈着し、横手根靭帯が厚くなって正中神経を圧迫する結果、手根管症候群が起こります。10年以上透析を続けている患者さんでは、手根管症候群の発症リスクが高くなると言われています。
手根管症候群によるしびれは、正中神経が支配する親指から薬指の親指側半分までに生じます。安静にしているときにしびれが強くなる傾向があり、透析治療の終わりごろにしびれが強くなる、夜間の睡眠中にしびれで目が覚めるといった症状がみられます。
また、しびれのほかにも親指の付け根の筋肉がやせ細って、親指を使ってものをつまみにくくなり、ペットボトルのふたがあけにくい、ボタンの留め外しが行いにくい、小銭をつまみにくいなどの症状がみられます。
参考文献:透析患者さんの手のトラブル
肘部管症候群によるしびれ
肘部管は尺骨神経が通る肘の内側の管で、骨と靭帯に囲まれています。靭帯にアミロイドが沈着して厚くなり、尺骨神経を圧迫することで手のしびれや手の変形、手の運動障害が生じます。
肘部管症候群の手のしびれは、尺骨神経が支配する薬指の小指側半分から小指にかけてみられます。小指の付け根の筋肉がやせ細り、小指と薬指が伸ばせない状態になる、小指の曲げ伸ばしが行いにくくなる、握力が低下するなどの症状がみられます。
参考文献:日本整形外科学会・「肘部管症候群」
透析による手足のしびれへの対策
透析患者さんの透析アミロイド―シスで起こる手根管症候群、肘部管症候群による手のしびれは、アミロイドが徐々に沈着していき症状が進行していきます。
自然にしびれが無くなることはないので、日常生活に支障をきたすしびれがある場合は神経の圧迫を取り除く手術を行う必要があります。
皮膚の切開の範囲も小さく、低侵襲で行える手術が主流になっており、透析治療への影響も少なく行えます。手のしびれがみられたら早期に診断を受け、治療を受けることが大切です。
まとめ
透析患者さんは老廃物が溜まることで起こる末梢神経障害や、動脈硬化によって血液循環が悪くなることで手足のしびれが生じます。動脈硬化や腎不全の病状の悪化を予防するためには、禁煙、指導されている食事内容を守る、運動をして身体を動かすことを継続することが大切です。
長年の透析治療で生じる透析アミロイド―シスによる手のしびれは、自然に治ることはありません。日常生活に支障をきたすようなしびれがあれば、はやめに診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
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