人工透析と日常生活で知っておきたい4つの必須ポイント
現在の医学では、人工透析は一生受け続けなければならない治療です。そのため患者さんは、仕事はどうしたらいいのか、治療を受けながら学校に通えるのかなど、さまざまな不安と戦うことになります。
人工透析治療にはどのくらいの時間がかかるものなのでしょうか。また、それによって日常生活ではどんな制約を受けるのでしょうか。
人工透析治療にかかる時間はどのくらい?
腎臓は365日24時間、休むことはありません。常に、血液を濾過して老廃物を取り去り、体内の塩分や水分量を調整して、体を万全に保つ働きをしています。人工透析は、そんな腎臓の働きを機械で代替する治療ですから、当然のことながら通院しなければならない回数も多くなります。では、人工透析治療には、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。
一般的に、人工透析を受ける患者さんは週3回、月・水・金、もしくは火・木・土のように曜日を決めて通院するケースがほとんどです。1回の人工透析には約4~5時間かかるので、週にして12~15時間は人工透析治療に時間をとられることになります。
人工透析とシャント手術
そのほかに、治療を始める前に人工透析を受けやすくするため、腕動脈と静脈を繋ぐ「シャント」と呼ばれるものを作る手術を受けなければなりません。シャントは通常、利き手ではないほうの手首、または腕の血管を繋いで作ります。
手術自体は約1時間程度で終わる簡単なもので、なかには日帰りで手術を行っている病院もあります。ただ、シャントは人工透析を受ける患者さんにとっては、生命線といっても過言ではないほど大切な部分です。
手術後は、シャントがある部分を圧迫しないよう、手首や腕が締めつけられる服や腕時計は避けなければなりません。また、血圧測定や採血といった医療行為も、シャントがある腕を避けて行います。
長時間拘束されるうえに、注意しなければならないこともたくさんある人工透析。果たしてそんな状態で日常生活が送れるのかと、不安になるかもしれません。でも、それまでの生活習慣をあまり変えずに、人工透析を受ける方法もあるのです。
人工透析を受けながらの日常生活
日本透析医学会の「(速報)わが国の慢性透析療法の現況(2014年末現在)」によれば、2014年末現在、日本には約32万人もの人工透析を受けている患者さんがいます。そのため、患者さんがなるべく負担なく治療を受けられるよう、さまざまなサービスも充実しています。
人工透析と出張について
都市部の病院では、学校や仕事に影響が出ないように、夕方17時ころから夜間にかけての透析治療を行っている病院があります。出張などで別の地域に行く際には、出張先で透析治療を行っている病院を調べ、事前に予約をして出張先で透析治療を受けることもできます。
透析治療を行っているような大きな病院には、日常生活の不安などの相談に乗ってくれるケースワーカーさんがいます。患者さん本人が相談するだけでなく、職場での理解を求めるため、上司を伴って相談に訪れるのもいいでしょう。
人工透析と運動について
学生さんの場合、心配なのは体育の授業でしょう。昔は、人工透析を受けている人は、ふだんもなるべく安静にして過ごす必要がありましたが、現在では透析の技術も進歩し、とくに安静にする必要はなくなりました。
逆に現在では、積極的に体を動かしたほうがいいとされています。もちろん体調も考えなければなりませんし、シャント部分を痛める可能性があるバレーボールなどは避けなければなりませんが、人工透析を受けていても体育の授業に参加できます。
人工透析と旅行について
そのほか、人工透析を受けている患者さん向けの旅行ツアーなどもあります。旅行先での透析治療はもちろんのこと、食事なども患者さん向けに考えて作られているので、不自由を感じることなく旅行できます。
もちろん、そういったツアーに頼らなくても、塩分や水分の摂取量に気をつけたり、事前に旅行先での透析治療を予約したりすることで、自分なりのツアーを楽しむことができます。
まとめ
透析治療を受けながらの日常生活で、大切なのは自己管理です。でも逆にいえば、塩分や水分の摂取量など注意すべきポイントさえ守っていれば、人工透析を受けていても学業や仕事を諦めることなく、無理せず日常生活を送ることができるのです。
人工透析は一生続けなければならない治療ですから、できる限りストレスを貯めずに過ごすようにしたいものです。
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