透析時の漏血警報って?知っておきたい原因と対策
透析時には異常を知らせるためのさまざまなアラームが鳴ることがあります。そのひとつである漏血警報は、人工腎臓であるダイアライザーの透析膜を通らずに、透析液に血液が漏れ出てしまう事態を知らせるアラームのことを言います。
漏血警報が鳴る原因にはいくつかあります。今回は、漏血警報が鳴ったとき早い対応が行えるように、漏血警報が鳴る原因と漏血警報が鳴らないための対策を学んでいきましょう。
透析時の漏血警報とは
透析時の漏血警報とは、血液が透析液の中に漏れ出したときに鳴るアラームのことを指します。
透析治療において、透析患者さんの腎臓の代わりをする装置をダイアライザーといいます。ダイアライザーに送られた血液中の余分な水分や老廃物は、透析膜を介して透析液へと除去されます。
ダイアライザーに送られた血液が透析膜を介さずに透析液へと漏れ出ると、水質基準の低い透析液に含まれるエンドトキシンや細菌などが血液中に混入してしまい、ショックや重篤な状態となることがあるため、漏血警報を鳴らすことでこれらの事態を予防するようになっています。
透析時の漏血警報の原因と対策
透析時の漏血警報の原因には、主に以下のことが考えられます。
ダイアライザーの透析膜の破損
ダイアライザーの中にはストロー状の中空糸が多数通っています。製品不良やダイアライザーを落とした・エア抜きの際にダイアライザーを叩くなどで中空糸が切れて破損し、透析膜が破れると、血液が透析膜を介さずに透析液側に漏れ出てしまうことが起こります。
ダイアライザーの空気の除去が不十分
ダイアライザーの空気除去が不十分なことによっても、漏血警報が鳴ることがあります。
血液透析を開始する際には、ダイアライザーと血液回路の洗浄と、生理食塩水や透析液を満たして空気抜きを行うプライミングが必要です。
ダイアライザーの空気の除去が十分に行えていないと、透析効率の低下や、身体から血液をとり出すときにダイアライザーの膜が破れる、血液回路が破損するなどが起こります。
また、ダイアライザーに残った空気が透強い衝撃を加えるなどにより破損しないようにすることが大切です。透析開始時に漏血検知器に流れ込むと、漏血警報が鳴ることがあります。
溶血
溶血(赤血球が壊れ、細胞の中に含まれるヘモグロビンが漏れ出して血清、血しょうが赤くなる)が過度に起こると、透析膜から透析液へとヘモグロビンが漏れ出て、漏血警報が鳴ることがあります。
脱血不良(身体から血液が出ていきにくい状態)で、血液回路の圧力が過度に下がる(陰圧)、または、上がる(陽圧)ことが起こると赤血球が壊れて溶血が起こります。
漏血検知器の汚れや故障
漏血を検知するセンサーが汚れていたり、故障していたりすると漏血警報が鳴ります。
参考文献1:ワンポイントEナース ライブラリ
参考文献2:「漏血警報」発生時の対処と原因について
漏血を防ぐために大切なこと
漏血を未然に防ぐために気をつけたいことは以下の通りです。
ダイアライザーに強い衝撃を加えない
透析治療での漏血を防ぐためには、ダイアライザーの取り扱いに十分注意し、強い衝撃を加えるなどにより破損しないようにすることが大切です。
空気抜きの際にカンカンたたくことは避け、運ぶ際や保管時などに下に落としたダイアライザーは破損している可能性があるため、使用しないようにします。
プライミングをしっかり行う
血液透析開始前のダイアライザーと血液回路の洗浄や空気抜きなどのプライミングをしっかりと行うようにしましょう。
血液流量を十分に確保する
脱血不良とならないように血液流量を十分に確保して、血液回路の圧が急に上がったり、下がったりしないようにします。
漏血警報センサーの管理
漏血警棒センサーが汚れていないかの点検を行い、汚れていれば洗浄します。センサーが壊れている場合はすみやかに修理を行い、漏血警報センサーが正しく作動するように管理しましょう。
漏血警報が鳴ったときの対処法
漏血警報が鳴ったら、まずは血液ポンプを止めてダイアライザーの漏血を確認します。目で見て漏血が確認できない場合は、試験紙で漏血を確認します。
漏血があれば、ダイアライザーを新しいものに交換して血液回路内の血液を破棄するなどの対応をとります。
ただし、医療機関によっては透析液が清浄化されており、血液に透析液が混入しても問題ない場合もあるため、医療機関によって対応は異なります。
まとめ
透析治療時に鳴るアラームのひとつに漏血警報があります。
漏血警報がなぜ鳴るのか、鳴ったときにはどのように対処すればよいのか、警報が鳴らないための対策や鳴ったときの対応を全スタッフ間で共有し、実行できるようにしておくことが大切です。
漏血警報について知り、トラブルの回避とトラブルの発生時にすばやい対応がとれるようにしましょう。
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