リハビリを取り入れよう!透析患者さんの運動への取り組みについて
透析患者さんもリハビリテーションを行うことで、今の身体機能や生活の質の改善、将来の機能維持ができることが報告されています。
ここでは透析患者さんが運動をすることで得られる効果や運動療法の内容について詳しくみていきましょう。
透析患者さんにリハビリは必要?
以前から、海外では腎疾患のある方にも運動制限は行わないことが一般的です。
日本でも腎疾患の方の場合、運動を行うと腎機能や蛋白尿が悪化するという考え方や、透析患者さんは透析前後に疲れやすいため、安静に過ごすことが基本とされてきました。
しかし昨今、「透析患者における運動療法は、運動耐容能、歩行機能、身体的QOLの改善効果が示唆されるため、行うことを推奨する」とも言われているように、透析患者さんに対して運動療法が導入されています。
透析中の腎臓リハビリテーションや訪問リハビリテーションにより、透析患者さんへの運動療法が実施されています。
参考記事:日本腎臓リハビリテーション学会 腎臓リハビリテーションガイドライン
透析患者さんがリハビリすることに対する効果
透析患者さんの特徴として、もともと糖尿病や高血圧、心不全などを合併しているケースが多いことが挙げられます。
そのほか運動機能・身体機能が低下していることや、透析治療での長時間の安静や透析後の疲労によって活動性が低下し、筋力低下や運動機能の低下がみられることも多くあります。
さらに、加齢による心身機能の低下がすでにみられる場合や、フレイル(加齢にともなう心身機能の低下)やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少、筋力の低下)を発症する可能性が高いことなどが挙げられます。
- ・筋肉が萎縮して、筋力が低下している
- ・運動耐容能が低下している
- ・糖尿病や高血圧、心不全などを合併しやすい
- ・フレイルに陥っている
- ・加齢にともなう身体機能の低下
- ・ADLは比較的保たれるもののQOLが低下している
透析患者さんがリハビリテーションを行うことにより、次のような効果があると言われています。
- ・運動耐容能の向上
- ・筋力の向上
- ・歩行機能の向上
- ・身体的QOLの改善
- ・透析効率の改善
- ・フレイルやサルコペニア、心血管疾患の予防
透析患者さんや慢性腎臓病患者さんに対してのリハビリ療法の効果については、国内外での研究報告が多数あります。
筋力や運動耐容能が低下し、糖尿病や高血圧、心不全の合併によって心臓や血管系に障害を抱えやすい透析患者さんは、運動を行うことで筋力や運動耐容能が向上し、心血管疾患の予防にもなります。
また、筋力や運動耐容能が向上することで、歩行機能や身体的QOLも改善します。運動を続けることで、加齢とともに陥りやすいフレイルやサルコペニアの予防も期待できます。
また、透析中の運動療法によって血流が増加し、透析効率が改善するという研究報告もあり、運動は透析治療にも良い影響をもたらします。
参考記事:簑島絵美ほか 透析中の運動療法が透析効率に及ぼす効果
少しでも運動をする習慣を
透析患者さんに対して行われる腎臓リハビリテーションや、自宅での運動はどのようなことをすれば良いのでしょうか。
腎臓リハビリテーション
運動が透析患者さんに良い効果をもたらすということがわかるようになり、透析患者さんに腎臓リハビリテーションを導入するケースも増えてきています。
透析治療中の透析患者さんに対して理学療法士などのリハビリテーションスタッフが、医師の指示のもと、ベッド上で寝た姿勢や座った姿勢で取り組むことのできる運動療法を行います。
透析中の腎臓リハビリテーションの流れ
透析患者さんに実施する腎臓リハビリテーションの例を紹介します。運動療法は一般的に、透析開始30分後から2時間以内に実施します。
1.ストレッチ
初めに準備運動として、下肢を中心としたストレッチを行います。(3分)
2.レジスタンス運動(筋力増強運動)
リハビリテーション用のチューブを使い、軽く負荷をかけて下肢のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかけて繰り返し行う運動)を行います。(10~15分)
3.有酸素運動
エルゴメーターで下肢の自転車こぎ運動やエルゴメーターがない場合には足ぶみ運動などの有酸素運動を行います。(10~30分)
4.ストレッチ
クールダウンとしてストレッチを行います。(3分)
透析中にリハビリ療法を実施するメリット
透析患者さんのリハビリテーションは、透析を行わない日にするのが理想的とされていますが、あえて透析中に運動療法が導入されているのには、次のようなメリットがあるためです。
- ・医療スタッフの指導のもと、監視下で安全に行うことができる
- ・透析効率を改善することができる
- ・運動習慣のない透析患者さんにとって、運動をすることへのモチベーションとなる
- ・透析中に運動の機会が持てる
- ・透析中の運動で身体が慣れて自信がつくと、自宅での自主的な運動へとつながりやすい
透析をしていない日は4000歩以上歩くことを目標に
透析患者さんの身体活動量をアップさせるためには、透析をしていない日に4000歩以上歩く、もしくは、30分以上の散歩を週に5日行うことが目標とされています。
できるだけ、歩く時間を設けて1日4000歩を目指しましょう。筋力低下がある場合には、自宅でスクワットや踵上げ運動、チューブを使った上肢の運動などのレジスタンス運動も行いましょう。
テレビを見ながら足を上げる、足踏みをするなど、少しでも動くことを意識することから始めてみましょう。
透析患者さんの運動時の注意点
最後に透析患者さんが運動を取り入れる際の注意点についてご紹介します。
- ・主治医に運動を行っても良いか、どれくらいの運動であればよいかを確認しましょう
- ・透析直後の運動は避けましょう
- ・透析直前は軽い運動にとどめましょう
- ・体調のすぐれない日は無理をせず、休みましょう
- ・運動中に体調の異変を感じたら、すぐに中止し、主治医に相談しましょう
参考記事:透析患者の運動療法
まとめ
透析患者さんもリハビリテーションや運動を行うことが推奨されています。事前に運動の可否を主治医に確認し、実施しても良いとのことであれば、少しでも歩く量、動く量を増やすように心がけましょう。
ストレッチとレジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせて行うことで、「身体が楽になる」、「前よりも長い距離を歩けるようになる」などの変化がみられ、QOLの向上につながることも報告されています。
加齢による心身機能の低下の予防や心血管疾患の予防のためにもリハビリや運動をして、活動的に過ごしましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。