年金はもらえるの?透析治療とお金の話
透析治療は一般的には週3日、1回4時間程度の治療が必要であり、体調の変化や時間的な制約などから、健康な時と同じように就労することは難しくなります。
そのため、透析を受けながら年金がもらえるかどうか不安に思う方もいらっしゃるでしょう。
透析患者さんは年金を受給できるのか、受給するためにはどのような手続きが必要かについて、詳しく確認していきましょう。
析患者さんは年金はもらえるの?
透析患者さんがもらえる障害年金には障害基礎年金、障害厚生年金、障害共済年金があります。
加入している年金の種類によって、を受けられる条件が異なります。それぞれみていきましょう。
障害基礎年金
自営業や専業主婦、会社員、無職などの職業に関わらず、全国民が加入している国民年金から支給されます。
障害の原因となる病気やケガの初診日があり、障害等級が1級、2級の場合には、日本年金機構から障害基礎年金を受け取ることができます。
透析患者さんでは障害等級が原則2級と認定されます。症状や検査結果、日常生活時の状態などにより、障害等級が1級に認定される場合もあります。
支給額は、2級は780,100円、1級は(780,100円×1.25)円となります。18歳以下(18歳になってから3月31日を経過していない)の子供がいる場合または子供が20歳未満で障害等級が2級、1級の場合には、支給額に第1子・第2子は各224,500円、第3子以降は74,800円がプラスされます。
基礎障害厚生年金
透析患者さんでは厚生年金保険の被保険者加入している期間に人工透析を初めるきっかけとなった病気の初診日から1年6か月以上経過している場合、もしくは、初診日から1年6か月以内で透析治療を開始してから3か月経った場合に、障害等級2級、または1級となり、障害厚生年金を受けることができます。
支給額は、2級が(報酬比例の年金額)+〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕、1級が(報酬比例の年金額)×1.25+〔配偶者の加給年金額(224,500円)〕となります。
報酬比例の年金額とは、(平均標準報酬月額×0.007125×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×0.005481×平成15年4月以降の被保険者期間の月数)と(平均標準報酬月額×0.0075×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×0.005769×平成15年4月以降の被保険者期間の月数)の額が高い方となります。
障害共済年金
透析患者さんの場合、組合員である間に透析の原因となる病気の初診日があり、人工透析を開始してから3か月を経過した場合(初診日から1年6カ月以内)、もしくは、透析の原因となる病気の初診日から1年6か月以上経過している場合に障害基礎年金に加えて、障害共済年金を受け取ることができます。
障害共済年金の支給額は、厚生年金相当額+職域加算額+加給年金額224,300円となります。厚生年金相当額、職域加算額はKKRのホームページに詳しく書かれていますので、ご参考ください。
参照リンク:KKR国家公務員共済組合連合会
「人工透析」で障害年金を受給するためのポイント
透析患者さんが障害年金を受給するときには、初診日を明確にすること、障害認定日がいつかを把握すること、腎疾患の場合にはアンケートの提出が必要となることをおさえておきましょう。
初診日を明確にする
障害年金を受給するためには、透析を受ける原因となった病気の「初診日」を明確にする必要があります。しかし、透析患者さんは病気になってから長い経過を辿った末に透析治療を開始するケースが多く、次のような理由から「初診日」の特定が難しくなります。
- ・初診が何十年も前の子供の頃で、病院自体が存在しない
- ・初診が5年以上前で病院にカルテが残っていない
- ・今までにかかった病院が複数あり、透析の原因となった病気で初めてかかった病院がどの病院かがわからない
また、糖尿病が原因で透析治療を開始した場合、必ずしも糖尿病内科が初診ではなく、目の症状で最初は眼科に受診している場合や尿の症状で泌尿器科が初診の場合もあります。
どのような症状が最初に現れて、どの病院を受診したのかということをじっくりと思い返して初診日を特定することが必要です。
初診の病院が無くなっていたり、カルテが破棄されていたりしても、領収書や健康診断の結果などの資料から初診日を証明できることがあります。これらの資料を含めて、しっかり初診日をチェックするようにしましょう。
障害認定日
透析の原因となる病気の初診日から1年6か月以内の場合は、透析治療を初めて受けてから3か月経過した日が障害認定日となります。
初診日から1年6か月以上経過している場合は、透析治療をまだ開始していなくても障害年金の支給の手続きを行うことができます。
透析の原因となる病気が腎疾患の場合
腎疾患の場合には、初診日についてのアンケートの提出が必要です。
アンケートといっても、障害年金の審査に影響する書類として扱われるため、診断書などのほかの提出書類との相違がないようにしっかり記載する必要があります。
透析で障害年金を申請する手順
透析で障害年金を申請するためには、住んでいる地域の年金事務所に相談し、必要な書類をそろえて年金事務所に提出します。
初診日の証明
初診日を証明するために、透析の原因となる病気で初めて受診した病院で受診状況証明書を書いてもらいます。初診の病院で作成してもらうことができなかった場合には2番目、3番目にかかった病院で作成してもらいます。
初めて受診した病院で書類を書いてもらうことが叶わなかった場合は、できるだけ初診日の記載のある領収書やお薬手帳、健康診断の記録などを参考資料として提出することが必要です。
また、受診状況証明書、および受診状況など証明書が添付できない申立書は日本年金機構のホームページから取得できます。
診断書
診断書は記入上の注意を切り離さないようにし、できるだけ空白がないように記載してもらいましょう。診断書が手元に返ってきたら、記載要領を確認し、記入漏れのあるところがある場合には加筆修正をお願いしましょう。
特に、現症時の日常生活活動能力及び労働能力、予後は必ず記入が必要です。診断書は疾患によって提出する書式が異なります。透析の原因となる腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害用の診断書は日本年金機構のホームページから取得できます。
病歴・就労状況など申立書
病歴・就労状況など申立書は、発症から現在までの受診状況や日常生活においての不自由度、仕事の状況などを確認するための書類です。
診断書に書かれている記載と相違がないように記入する必要があります。自由記入が必要な箇所は、不自由に感じている点や日常生活の状況などを具体的に書くようにします。病歴・就労状況等申立書は日本年金機構のホームページから取得できます。
参照リンク:病歴・就労状況等申立書を提出するとき
そのほかに必要な書類
年金手帳、本人の生年月日を明らかにできる書類(戸籍謄本、戸籍抄本、戸籍の記載事項証明、住民票、住民票の記載事項証明書のいずれか)、受取先金融機関の通帳等(本人名義)、印鑑が必要です。
そのほか、配偶者や子供の有無、年金の受給状況などによって必要な書類が変わってきます。必要書類についての詳細は、日本年金機構のホームページから確認できますので、チェックしてみてください。
参照リンク:障害厚生年金を受けられるとき
まとめ
障害年金を受給するためには申請が必要です。
申請には申請が可能なタイミングや、揃える書類など、申請のための条件があります。加入している年金によって受給できる障害年金額が多くなることもあるので、申請できる時期にスムーズな申請が行えるように申請条件を把握し、準備しておくことが大切です。
そのほか透析患者さんが受けられる福祉サービスなどについてはこちらをご参考ください:【障害者手帳で医療費を免除】人工透析と福祉サービス・障害年金を受ける流れ
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