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2019年12月04日

【合併症のサインかも】透析患者さんが知っておきたい血尿について

腎臓の病気が悪化して血尿が出ることもあれば、透析患者さんが、血尿がみられる病気を合併する場合もあります。

血尿でみられる症状や血尿がみられた時に考えられる原因、合併症の早期発見のために透析患者さんが知っておきたいことについてみていきましょう。

     

血尿ってどんな症状?

血尿は尿に血が混じった状態のことで、腎臓や尿が通る部分に異常があるサインのひとつとなります。

血尿には尿が赤くなり、血が混じっているのが見た目でわかる「肉眼的血尿」と、見た目では血が混じっているとはわからず、検査すると尿の中に血が出ている「顕微鏡的血尿」とがあります。

肉眼的血尿で痛みを伴う場合は、尿路結石や急性膀胱炎、前立腺炎など、痛みがない場合は腎臓・膀胱のがんなどが疑われます。顕微鏡的血尿の場合は精密検査を行っても異常がない場合もありますが、腎結石や腎嚢胞、がんが見つかる場合もあります。

透析患者さんが透析治療を開始するきっかけとなる原疾患の糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎(IgA腎症)、腎硬化症、多発性嚢胞腎でも血尿がみられることがあります。

     

血尿の原因

血尿が出るときは、腎臓に病気があって血が混じる場合と、尿が腎臓でつくられた後に腎盂、尿路、膀胱、尿道などからの出血で血が混じる場合があります。

腎臓の病気で血尿がみられる場合は、腎臓がん、特発性腎出血、腎炎などの腎臓内科の病気が原因となり、尿がつくられた後に尿の通り道の出血で血尿がみられる場合は、膀胱炎や尿路結石、膀胱がんなどの泌尿器科の病気が原因となります。

そのほに、腎臓の血管の奇形や薬の副作用、女性では月経時に血液が混じり、血尿がみられることもあります。

     

血尿と透析の関係

透析患者さんは血尿に要注意

透析患者さん血尿がみられた際には、嚢胞腎やがんに注意が必要です。早期に診断、治療を行うために気をつけたいこともチェックしましょう。

     

後天性嚢胞腎と腎がん

透析患者さんは、透析期間が長くなるにつれて腎臓に嚢胞がたくさんできる後天性嚢胞腎となり、後天性嚢胞腎は腎がんの発症リスクが高くなることが言われています。

後天性嚢胞腎の嚢胞が破裂した場合や出血した場合、腎がんを発症した場合に血尿がみられます。長期間透析を受けている患者さんで血尿がみられる、お腹にしこりがあるといった場合は注意が必要です。

後天性嚢胞腎に合併する腎がんは、自覚症状がほとんどありません。血尿は検査時に発見されることが多いため、透析患者さんは定期的な尿検査や腹部超音波検査、CT検査などを受け、腎臓の病気や腎がんの早期発見、治療につなげることが大切です。

     

参考記事1:三島外科胃腸クリニック 後天性多のう胞化腎(ACDK)

参考記事2:透析患者と腎癌透析会誌 47(10):589~598,2014

長時間透析のメリット

透析導入前から定期的な検査を

透析治療そのものとがんの発生リスクとの関連については、年々調査が行われています。

新規透析導入患者のがんの発症についての疫学調査(2001年~2006年)では、透析患者さんでがんの診断を受けている人のうち、透析治療を開始してから5年以内にがんの診断を受けている人は88.3%であったという報告があります。

透析治療を開始してから比較的早くにがんが見つかる結果となっていることから、透析治療開始前からがんが発症しており、慢性腎臓病とがんの発症に関連があるのではという考え方もあります。

また、透析患者さんは透析治療の導入前から慢性腎臓病を長く患っている場合が多く、血尿などの病気のサインに早く気付けるように定期的な検査を受けることが大切と言えるでしょう。

     

参考記事:1)海津嘉蔵ほか わが国の透析患者における癌の疫学と現状について 透析会誌 50(1):79~80,2017

血尿のサインとは

血尿は合併症のサインの場合も

血尿は腎嚢胞やがんだけではなく、それ以外の原因でもみられます。血尿がみられた際には、前立腺肥大症、尿路結石、尿路感染症といった合併症のサインである可能性があります。

     

前立腺肥大症

前立腺は男性のみにある生殖に関わる臓器です。加齢とともに前立腺は大きくなり、膀胱や尿道を圧迫して、頻尿や尿の出が悪くなるなどの症状がみられます。前立腺が大きくなると前立腺部の尿道粘膜から出血が起こり、血尿がみられます。

     

参考記事:名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室 前立腺肥大症

尿路結石

腎臓から尿道までの尿路のいずれかに結石ができ、激しい痛みや残尿感、頻尿などの症状が出ますが、結石の場所や大きさによっては症状が出ない場合もあります。結石が尿路にこすれて出血すると、血尿が出ることがあります。

     

参考記事:名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室 尿路結石

尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)

細菌が尿道出口から入り、膀胱で炎症が起こると膀胱炎、腎盂にまで炎症が及ぶと腎盂腎炎となります。頻尿、排尿時痛、残尿感、血尿などの症状がみられ、腎盂腎炎では発熱や腰や背中の痛み、身体のだるさなどの全身症状が出ます。

     

血尿と病気の関係

まとめ

血尿は腎臓や尿路に障害がある場合にみられます。血尿がみられる疾患の中にはがんなどの早期発見、早期治療が必要な命に関わる病気があります。

血尿には、見た目に尿が赤くなる肉眼的血尿と尿検査で発見される顕微鏡的血尿があり、早期発見には定期的な尿検査を受けることが有用です。

血尿は、透析患者さんの原疾患である腎炎や糖尿病成腎症、腎硬化症のほか、尿路感染症や尿路結石、前立腺肥大症などの病気のサインであることもあります。異変に気づいた場合は、できるだけ速やかに主治医にかかるようにしましょう。

     

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