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2020年01月09日

血液浄化療法って?各治療の違いを徹底解説

血液浄化療法は、除去したい血液中の物質によって種類があります。慢性疾患や急性疾患・疾病の種類によって、適用される血液浄化療法は異なります。

ここでは血液浄化療法の種類と特徴、適応疾患について詳しくみていきましょう。

     

血液浄化療法とは

血液浄化療法とは、血液中の不要な物質や有害な物質を除去する治療方法です。一般的によく知られているのは、慢性腎不全に対する血液透析療法です。血液透析療法のほかにも、除去したい物質や適応疾患などによって血液浄化療法にはいくつかの種類があります。

大きな分類としては、慢性血液浄化療法と急性血液浄化療法があり、慢性腎不全の方に対して行われる維持透析は慢性血液浄化療法に分類されます。急性血液浄化療法は急性腎障害や救急・集中治療で用いられています。

     

慢性血液浄化療法

慢性血液浄化療法は慢性腎不全などの慢性疾患に対して、生命維持を目的として行われる血液透析です。週3日、1回4時間の透析治療が標準的です。

     

急性血液浄化療法

急性血液浄化療法は、急性腎不全に対する血液浄化療法をはじめ、急性疾患の重症例に対して病気の原因となる物質や体内の過剰な薬物、余分な水分の除去を目的として行われる血液浄化療法です。

重症急性膵炎、多臓器不全、敗血症性ショック、急性薬物中毒、劇症肝炎、急性肝不全などに対して用いられます。

     

血液浄化療法の種類

血液浄化療法の種類

血液浄化療法には、透析、濾過、血漿交換、吸着療法といった種類があります。それぞれの原理と適用される疾病についてみていきましょう。

     

透析

透析は、透析液の中の物質が透析膜を通して濃度が濃い方から薄い方へと移動して濃度が均一となる拡散の原理と、機械的に血液側から透析側へ圧力をかけると血液中の水分が押し出されて除去する限外濾過の原理で行われます。

     

血液透析(HD)

血液透析は、バスキュラ―アクセス(血液をとり出したり、戻したりするために身体につくった出入り口)から血液をとり出し、透析器で浄化して体内へ戻す治療です。

透析療法の中でも最も多く取り入れられている方法で、透析治療全体の68.2%を占めます。(わが国の慢性透析療法の現況2017 年 12 月 31 日現在)

【適応】急性腎不全、慢性腎不全

     

腹膜透析(PD)

腹膜透析は、お腹の中にカテーテルを通して透析液を入れ、腹膜を透析膜として使用します。

血液中の不要な物質や有害な物質は透析液の中に移動し、体内の余分な水分は血液と透析液の浸透圧の差によって血液から透析液へと移動し、除去されます。腹膜透析は慢性透析療法の2.7%ほどのシェアとなっています。

【適応】慢性腎不全

 

参考記事:一般社団法人 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

濾過

濾過は、濾過器などを使用して血液を濾過し、血液中の不要な物質や有害な物質を除去する血液浄化療法です。

 

限外濾過(ECUM)

限外濾過は透析液は使用せずに、透析膜に圧をかけて体内の余分な水のみを取り除く方法です。血液中の老廃物を取り除くことはできません。

【適応】心不全、肺水腫

     

血液濾過(HF)

濾過器を使用して体内の老廃物が含まれた体液を捨てて、新しく補充液を血液中に注入する方法です。血液透析に比べると、分子量の小さな物質を十分に除去することはできませんが、急激な血圧の変動が起こりにくいというメリットがあります。

【適応】血液透析で低血圧を起こす透析困難症の方、眼圧の高い方(緑内障)、心臓に障害がある方(心不全)、脳圧の高い方

     

血液濾過透析(HDF)

血液透析と血液濾過を同時に行う治療法です。透析液を使用しながら濾過を行い、補充液を血液内に注入します。血液透析よりも大きな老廃物も除去できます。血液濾過透析は28.4%で、血液透析の次に多い慢性透析療法です。腹膜透析とも併用される治療方法です。

血液濾過透析で用いる補充液の代わりに清浄化した透析液を使用する、オンライン血液濾過透析(OHDF)もあります。

血液濾過透析で使用できる補充液の量は10L程度ですが、オンライン血液濾過透析では、多量の透析液を使用できるので、さまざまな老廃物の除去を期待できます。血液透析よりも急激な血圧の変動が起こりにくく、大きな分子量の物質が除去できます。

【適応】血液透析で血圧低下が起こる方、透析アミロイドーシスで手根管症候群や関節痛のある方、かゆみの強い方

     

血液濾過透析

血漿交換

血漿交換は血液中の血漿を交換する血液浄化療法です。

単純血漿交換(PE)

単純血漿交換では血漿中の病気に関連する物質を除去するために、血液から血漿を分離して捨て、捨てた血漿と同じ量の健常の方の血漿やアルブミン製剤を補充します。

凝固因子を補充して治療することもできます。

【適応】活動性が強い膠原病でステロイドや免疫抑制剤が効かない場合、神経・筋疾患、甲状腺クリーゼ、胎児溶血性疾患などの産科疾患、血栓性血小板減少性紫斑病、肝不全、劇症肝炎

     

二重濾過血漿交換

二重濾過血漿交換では血液から血漿を分離した後に、さらに小さな分子量の物質のみが通れる濾過膜に通します。分子量の小さな物質は残り、分子量の大きな物質が捨てられます。

【適応】活動性が強い膠原病でステロイドや免疫抑制剤が効かない場合、神経・筋疾患、甲状腺クリーゼ

     

吸着療法

吸着療法は、吸着剤を使用して血液中の病気の原因となる物質を吸着して除去する血液浄化療法です。

     

血液吸着(HA、DHP)

活性炭などの吸着剤を用いて血液中の有害な物質や病気の原因となる物質を取り除きます。透析では除去しにくい尿毒などの物質を除去することができます。

【適応】薬物中毒、肝不全、多臓器不全

     

血漿吸着(PA、PP)

血漿吸着は、血液から血漿を分離して、分離した血漿を吸着カラムに通して特別な物質を吸着して除去する治療法です。カラムの種類を変えることで特定の物質を吸着して除去でき、さまざまな疾患に応用できます。

LDL吸着や免疫吸着、エンドトキシン吸着、白血球吸着、顆粒球吸着などがあります。

    
    【適応】
  • ・LDL吸着(LDLコレステロールを除去):家族性高コレステロール血症、高脂血症(薬剤の副作用によって継続してみられる場合)、閉塞性動脈硬化症、難治性ネフローゼ症候群
  • ・免疫吸着療法(免疫複合体、抗DNA抗体、リウマチ因子、抗アセチルコリンレセプター抗体などを除去):>全身性エリトマトーデス、悪性関節リウマチ、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、重症筋無力症
  • ・エンドトキシン吸着(グラム陰性菌を除去):エンドトキシン血症、グラム陰性菌による敗血症性ショックや重症感染症
  • ・白血球吸着(顆粒球、リンパ球、単球の除去)、顆粒球吸着(活性化した顆粒球を除去)潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患

血液浄化療法の種類と適応症

まとめ

血液浄化療法というと聞きなれない治療法に感じられますが、腎不全の患者さんに対して行われる人工血液透析も血液浄化療法のひとつとなります。

血液中の余分な水分や有害な物質を除去する血液浄化療法には、透析や濾過、血漿交換、吸着などがあり、除去したい物質や身体の状態、治療したい病気などによって使い分けられています。

     

さまざまな疾患の治療に取り入れられる治療法なので、ぜひ覚えてみてくださいね。


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