【高カリウム血症の防止に】人工透析とカリウムの関係・調節ポイントまとめ
人工透析を受ける患者さんにとって、カリウム量の調節は重要な治療の一貫です。しかし、目に見えず、量の計測もできないカリウムは、厳密に調整しようと思うとなかなか難しいもの。
また、食材の種類や食材の量から厳密に計算しようと思うと、大変で頭を抱えてたくなってしまいます。今回は、そんなカリウム量を大幅に減らすためのポイントも含め、カリウムとの付き合い方についてご紹介します。カリウムを摂取しすぎた場合に起こる病気や症状も含め、ひとつひとつみていきましょう。
人工透析中はカリウムが体内に溜まりやすい
健常者の場合、体内に取り入れたカリウムは尿と一緒に排出されますが、人工透析治療を受ける患者さんの場合、カリウムが体内に溜まりやすくなっています。
カリウムは多くの食材の中に含まれており、腎臓の機能の低下した透析患者さんは、特に摂取量に気をつけたい栄養素のひとつです。カリウムが体内に貯まると、高カリウム血症という病気を引き起こします。最悪の場合、死に至る可能性もある高カリウム血症にならないためにも、カリウムの摂取量をしっかりと把握し調節することが重要です。
高カリウム血症の原因と症状って?
高カリウム血症は、血液中のカリウム値が6.0mEq/L以上になった場合に起こります。食事によるカリウムの摂取だけでなく、降圧剤の服用や便秘によっても発症する場合があり、血液透析を受けている患者さんはカリウムの一日の摂取量に制限があります。
高カリウム血症の症状としては以下のようなものがあります。
- 嘔吐
- しびれ(特に舌や口)
- 知覚過敏
- 脱力感
- 足に力が入らない
ただし、軽度の高カリウム血症の場合症状はほとんど現れません。気付かないうちに血清カリウム濃度が高くなっていることも多く、致死的不整脈を起こし死に至る危険もあります。症状の有無に関係なく、透析患者さんはカリウムの摂取量に配慮することが大切です。
透析患者さんのカリウム摂取量の基準
透析患者さんの一日のカリウム摂取量は、日本腎臓病学会の慢性腎臓病に対する食事療法基準により定められています。具体的には以下のようになっています。
- 腹膜透析患者の場合:2,000mg/一日 以下
- 血清透析患者の場合:制限なし※
※ただし、高カリウム血症を起こしている場合は、腹膜透析患者と同様の摂取制限とする
特にカリウムの多く含まれる食品
カリウムは、野菜や果物に多く含まれる栄養素です。また、豆類にも多く含まれているので要注意です。カリウムを特に多く含む食品としては、以下のものが挙げられます。
- パセリ
- 豆みそ
- よもぎ
- 昆布佃煮
- アボカド
- ひき割り納豆・納豆
- ほうれん草(生)
- ゆりね
- ザーサイ
- きゅうりの糠漬け
参考サイト:簡単!栄養andカロリー計算
これらの食品を摂る際には、量を調整したり加工方法を工夫してカリウム量を減らすようにしましょう。また、野菜ジュースやドライフルーツは、カリウム量が濃縮されているので要注意です。
カリウムを減らすためのポイント
カリウムは水溶性の性質を持っているので、洗ったり茹でることである程度まで食材に含まれるカリウム量を調節することが可能です。
カリウム量を減らすために、調理方法に工夫するようにしましょう。また、カリウムを多く含む食材の代わりに、カリウム量の少ない食材に置き換えることで調整するのもポイントです。
食材や量を計算することで、カリウム量を調整しようとするととても時間と負担がかかります。調理方法の工夫によって、高カリウム血症を予防することをおすすめします。具体的には、以下のような方法があります。
食材を小さく切って茹でる
カリウムの水溶性の性質を利用して、できるだけ多くのカリウムを食材外へ排出するために食材を細かく切るようにしましょう。
また、茹で野菜の場合、小さく切った状態で茹でるとカリウム量をさらにカットすることができます。
茹で汁を捨てるとカリウム量は30%減!
例えばお味噌汁を作る場合、カリウム量の多い野菜だけ別に茹でておき、後からお味噌汁に入れるようにしましょう。なんと、茹で汁を捨てるとその食材のカリウム量を約30%も減らすことができます。この方法は、スープや炒め物にもおすすめです。
似た食材への置換え
カリウムを多く含む食材の代わりに、カリウム量の少ない食材に置き換えてカリウム量を調整してみましょう。例えば、
- カリウム量の多いパセリの代わりに、カリウム量の少ない大葉を利用する
- レタスの代わりにサニーレタスを食べる
このように食べる食材自体に工夫をするだけでも、カリウム量を減らすことができます。
生野菜は細かく切って水にさらす
この方法もカリウムの水溶性を利用した方法です。生野菜を食べる場合は、30分以上水にさらしてから食べるようにしましょう。また、細かく切った状態で水にさらすことで、更にカリウム量を減らすことができます。
まとめ
いかがでしたか?カリウム量を調整し、高カリウム血症を引き起こさないことが延命の上でも重要です。特に腹膜透析治療を受けられており、カリウム量の調整に頭を抱えている方も少なくありません。
調理する際の工夫ポイントを知れば、実はカリウム量を減らすのはそんなに難しくありません。しっかりと工夫し、カリウム量をストレスなくコントロールするようにしましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。