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2024年06月27日

透析患者が腎不全になった原因疾患トップ5

透析患者が腎不全になった原因疾患にはどのような病気があるのでしょうか。原因疾患トップ5で見られる症状についても説明します。腎不全の原因疾患や合併症などのリスクを知ることで病気の発症予防や重症化予防につなげましょう。

透析患者の男女比

男女

腎不全は、腎機能が著しく低下し、ほとんど機能しなくなった状態です。慢性腎臓病(CKD)が進行し、腎機能の障害が深刻化すると、慢性腎不全となります。さらに悪化して命に危険が及ぶと、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)が必要になります。

腎不全につながる慢性腎臓病(CKD)は心血管障害と深く関連しています。脳卒中、心筋梗塞、大動脈瘤などの心血管障害があると腎臓の動脈も狭くなり、障害されることがあります。これにより、腎臓自体も障害を受け、腎機能が悪化しやすくなります。

慢性腎臓病と循環器病の要因は共通しており、互いに腎機能や動脈硬化に悪影響を与えます。両方の病気に共通するリスク要因は加齢、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症などの生活習慣病です。生活習慣病は、特に食生活、運動習慣、喫煙、ストレスなどに関連します。

そのほかにも、腎障害の原因疾患となる病気には薬剤性腎障害、尿細管間質性腎炎などもあります。

・日本泌尿器科学会 末期腎不全と言われた

腎不全になった原因疾患トップ5

血液透析患者を対象とした調査(2021年)では、腎不全となったトップ5の原因疾患は1位糖尿病性腎症(36.7%)、2位慢性糸球体腎炎(29.7%)、3位腎硬化症(12.9%)、4位のう胞腎、(4.6%)、5位急速進行性腎炎です。

糖尿病

1位:糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症として腎臓の機能が低下する症状です。糖尿病で高血糖状態が続くと、血液中のブドウ糖がたんぱく質と結びつき、小さな血管を傷つけやすくなります。特に腎臓の糸球体は細い血管が多いためダメージを受けやすく、糖尿病性腎症の原因となります。

初期には症状がほとんど現れませんが、進行するとむくみや貧血、高血圧がみられ、最終的には人工透析が必要になることも多いです。

2位:慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎は、腎臓の血液を濾過して尿を作る部分である糸球体に持続的な炎症が生じる病気です。血尿やたんぱく尿が続くことで次第に腎機能が低下し、重症化すると腎不全に至ります。

日本における慢性糸球体腎炎はIgA腎症が多くみられます。自覚症状がほとんどみられず、健康診断などで偶然発見される割合が高い病気です。透析が必要になる場合が多く、早期診断と適切な治療を受けることが重要です。

3位:腎硬化症

腎硬化症は、高血圧が長期間続くことで腎臓の細い動脈に動脈硬化が起こり、腎障害を引き起こします。進行すると、糸球体への血流が減少し、腎機能が低下して腎不全に至ります。高齢者に多い病気で自覚症状はほぼなく、尿所見にも異常がみられないことがほとんどです。塩分制限や血圧コントロールで進行を予防することが大切です。

4位:のう胞腎

のう胞腎とは腎臓に液体の入った袋ができる病気です。その中でも遺伝性ののう胞腎は多発性のう胞腎と言います。初期は症状がなく、嚢胞の数が増えて大きくなってくると腎機能が低下します。

さらに、肝臓にものう胞ができてお腹が張ることや高血圧、脳動脈瘤のリスクも高くなるのが特徴です。

5位:急速進行性腎炎

急速進行性腎炎は一般的には急速進行性糸球体腎炎をさします。数週間~数ヶ月と短い期間に急速に腎機能が低下する病気で、中高年に多い傾向があります。

症状としては、目に見える血尿や尿量の減少、倦怠感、微熱、食欲低下などがみられます。進行すると、息苦しさ、吐き気、痰や便に血が混じるといった症状や意識の低下などが起こります。早期に発見し、治療を行うと病気の進行を抑えることが可能です。発見が遅れると、透析や腎移植などが必要となります。

・公益社団法人日本透析医会 2021 年度 血液透析患者実態調査報告書
・厚生労働省 e-ヘルスネット 糖尿病性腎症
・東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 慢性糸球体腎炎(IgA腎症など)
・国立研究開発法人 国立循環器病研究センター さらに詳しく腎硬化症
・難病情報センター 多発性嚢胞腎(指定難病67)
・難病情報センター 急速進行性糸球体腎炎(指定難病220)

こんな合併症にもご用心

腎不全の合併症としては、循環器合併症、骨・関節・筋障害、血液透析中の合併症などがあります。

合併症

循環器合併症

心臓や血管が障害されることにより、心不全、心肥大、狭心症・心筋梗塞、不整脈、高血圧・低血圧、心外膜炎、動脈硬化、脂質異常症、脳出血・脳梗塞などが起こります。

骨・関節・筋障害

骨の痛み、骨折しやすくなる、関節痛、骨の変形、成長障害、腱の断裂、異所性石灰化などがみられる二次性副甲状腺機能亢進症、アルミニウム骨症、骨軟化症、骨粗しょう症などがみられます。

血液透析中の合併症

透析中には、吐き気や嘔吐、頭痛、腹痛、血圧の変動、脱力感、筋肉のけいれんなどの不均衡症候群が起こる場合があります。

・多川斉 透析患者の循環器合併症 透析会誌 1992 25(9)p.969-976 
・窪田実 腎不全患者の骨障害 順天堂医学 1996 42(1)p.27-35
・国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 腎不全

まとめ

腎不全は、腎臓の機能が著しく低下し、最終的には透析や腎移植が必要となる深刻な状態です。主な原因疾患として、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、のう胞腎、急速進行性腎炎が挙げられます。特に糖尿病性腎症は最も多く、全体の約4割を占めます。原因疾患は早期の発見と適切な治療が進行を抑えます。

また、腎不全に伴う合併症も多岐にわたり、循環器合併症、骨・関節・筋障害、血液透析中の合併症などが代表的です。これらの合併症は生活の質を大きく左右するため、日常的な管理と予防が重要です。

腎不全や合併症に対する理解を深め、早期の対応につなげることが予後を改善し、生活の質の向上が期待できます。定期的な検診や主治医の指導のもと、健康管理に努めることが大切です。

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