タバコはNG?透析患者さんに知ってほしい喫煙について
一般的にタバコは身体によくない影響をもたらすことが知られていますが、透析患者さんもタバコはNGなのでしょうか?
喫煙と動脈硬化との関係、喫煙が腎臓にもたらす影響から透析患者さんの喫煙について学び、喫煙する透析患者さん本人はもちろん、まわりの方も一緒に喫煙の弊害について考えてみましょう。
透析患者さんはタバコNG?
タバコを吸うことは余命を縮めることがわかっています。がんや脳卒中、心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患、胃・十二指腸潰瘍、歯周病、老化の促進など、身体に悪影響をもたらすことも知られています。
透析患者さんも当然、健康のためには禁煙するにこしたことはありません。喫煙は血管を収縮させる作用があるので、血管がたくさん集まってできている腎臓の血流量が低下して、腎機能が悪化します。
透析患者さんにとって喫煙は、重篤な疾患の発症リスクを高めるだけでなく、腎臓の機能を悪化させる原因となります。喫煙のタバコから出る煙が身体に悪影響を及ぼします。
自分がタバコを吸うだけでなく、周りの人がタバコを吸う場合も副流煙として健康への被害や腎機能の悪化を招くので、透析患者さん自身も透析患者さんの家族や周りの人もタバコはNGです。
参考文献1:e-ヘルスネット 喫煙による健康影響
参考文献2:厚生労働省のTOBACCO or HEALTH 最新たばこ情報 たばこのリスク
タバコは動脈硬化を促進する恐れあり
タバコの煙は血管を収縮させ、血流の低下、血管の石灰化、血管の内膜の肥厚などを起こし、動脈硬化を促進させます。
日本人男性では、生涯タバコを多く吸う人ほど動脈硬化のリスクが高くなることが報告されています。また、喫煙は活性酸素などの動脈硬化を促進させる原因となる物質を発生させます。活性酸素は血管の内壁を傷つけ、コレステロールの塊をつくり、血管の内腔を狭くして動脈硬化を進めます。
さらに過剰に活性酸素が発生すると、活性酸素を抑える作用や血管を広げる作用、血液を固まりにくくする作用をもつ一酸化窒素のはたらきが抑えられ、動脈硬化が促進されます。
動脈硬化は高血圧や狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などを発症するリスクが高くなります。透析患者さんは、動脈硬化が進んで起こる狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患にかかっているケースが多く、喫煙は動脈硬化を進行させてさらに虚血性心疾患のリスクを高めることになります。
参考文献1:国立大学法人 滋賀医科大学 Hisamatsu T, Miura K他 喫煙習慣は全身の血管で動脈硬化の進展に影響する~滋賀動脈硬化疫学研究SESSAより~
参考文献2:公益財団法人 日本心臓財団 喫煙と循環器病(禁煙のすすめ) 企画 日本循環器学会教育研修委員会 監修 泰江弘文 (熊本大学医学部循環器内科教授)
タバコの腎臓への影響
タバコの煙には化学物質が多量に含まれており、喫煙は腎臓にも以下のような大きな影響を及ぼします。
ただし、現在タバコを吸っている人でも、禁煙によって腎不全になるリスクが軽減する可能性があることが研究によって示されています。
たんぱく尿が増加する
タバコを吸う量と比例してたんぱく尿は増加します。たんぱく尿の程度がひどくなると腎臓の機能が悪くなり、腎不全となることがわかっています。
高血圧、糖尿病、慢性腎炎があると腎不全になりやすくなる
高血圧や糖尿病があると、タバコを吸うことでたんぱく尿とアルブミン尿が増え、腎不全になるリスクが高まることがわかっています。慢性腎炎があると、末期腎不全に陥りやすいと言われています。
腎細胞がんのリスクが高まる
タバコを吸うことによって膀胱がんや尿管がん・腎細胞がんなどの泌尿器系のがんになるリスクが高まります。
まとめ
タバコは動脈硬化を進行させ、腎臓の機能を悪化させます。透析患者さんは動脈硬化になる方が多いですが、喫煙すると、さらに動脈硬化が促進され、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気になる確率を高くなります。
また、悪くなった腎臓の機能を透析治療で補っているのに喫煙すると、透析治療に反して腎臓の機能を傷めつけることになります。
タバコは吸っている本人だけでなく、タバコを吸っている周りの人も影響を受けます。タバコの身体への影響を知ったうえで、今一度、喫煙について考えてみましょう。
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