副甲状腺機能亢進症って?透析と甲状腺の関係
透析患者さんの合併症で腎臓の機能低下に続いて、副甲状腺ホルモンの分泌が過剰となる二次性副甲状腺機能亢進症があります。
なぜ透析患者さんに副甲状腺機能亢進症が起こりやすいかについて、腎臓の機能と副甲状腺の関係をみていきましょう。
副甲状腺ホルモンが過剰に分泌するとどのような症状が起こるか、治療法についても詳しく確認していきましょう。
透析患者さんと甲状腺の関係
副甲状腺は喉にある甲状腺の裏側にあります。通常はチョウチョのような形をした甲状腺の左右上下の四隅に4つ位置していますが、位置や数が異なる人もいます。副甲状腺は米粒程度の大きさで副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌しています。副甲状腺は血液中のカルシウム、リン、ビタミンDの濃度を調整する働きがあります。
一方、腎臓は体内のリンが一定の濃度になるように、尿からリンを排出して調整しています。また、活性型ビタミンDというホルモンをつくり、腸からのカルシウム吸収を促して骨を丈夫にしています。
腎臓機能が低下している透析患者さんでは、体内のリンを尿に排出できなくなって体内のリンの濃度が上がります。活性化ビタミンDもつくられなくなるので腸からカルシウムが吸収されにくくなり、血液中のカルシウム濃度が低下するということが起こります。
そのため、カルシウム、リン、ビタミンDの濃度を一定にしようと副甲状腺が働きます。
透析患者さんがかかりやすい二次性副甲状腺機能亢進症とは
透析患者さんの合併症として二次性副甲状腺機能亢進症があります。
腎臓の機能が低下して、次のような状態が起こると二次性副甲状腺機能亢進症となります。
- ・尿中にリンが排出されずにリンの濃度が高くなり、高リン血症となる
- ・活性化ビタミンDがつくられず、カルシウムが不足して低カルシウム血症となる
二次性副甲状腺機能亢進症では高値になったリンの濃度や低値となったカルシウムの濃度を調整するために、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになります。
副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることが続くと副甲状腺が大きくなり、血液中のリンやカルシウムの濃度に関係なく、常に副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され続けるようになります。その結果、さまざま症状が引き起こされます。
二次性副甲状腺機能亢進症の主な症状と治療法
二次性副甲状腺機能亢進症の症状と治療について説明します。
主な症状
高カルシウム血症
副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、体内のカルシウム濃度が高くなるとイライラ感、不眠、嘔吐、皮膚のかゆみ、食欲低下、消化器潰瘍、筋力低下、不整脈などがみられます。
繊維性骨炎
二次性副甲状腺機能亢進症となると、体内の不足しているカルシウムを骨から必要以上に取り出すために骨が溶ける繊維性骨炎となります。
繊維性骨炎になると、骨がもろくなって骨の痛みや変形、病的な骨折が起こりやすくなります。
異所性石灰化
体内のリンやカルシウムが骨以外のところに溜まる異所性石灰化がみられるようになります。
石灰化が関節に起こると関節炎となり、皮下に起こるとかゆみが生じ、眼の粘膜に起こると目が充血します。血管が石灰化すると動脈硬化を起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気を起こすこともあります。
治療法
薬物療法
治療は不足している活性型ビタミンDの内服や透析回路への注射、高くなっているリン濃度を下げるためのリン吸着剤の内服、過剰になっている副甲状腺ホルモン分泌を抑制する薬などを用います。
日常生活
日常生活では食生活でカルシウムとリンの摂取をコントロールすることが大切です。リンを多く含む魚、肉、芋類、乳製品、卵黄、インスタント食品、チョコレート、玄米、豆類などの食べ過ぎに注意して、リンの摂取をおさえます。
透析治療
透析治療はリンをできるだけ除去し、血液中のカルシウム濃度を調整することを行います。十分な透析治療を受けることも二次性副甲状腺機能亢進症の大切な治療、予防となります。
手術
薬物療法でも改善せず、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され続けて血管の石灰化が深刻となり、命が危険になる状態が危惧されると副甲状腺を取り除く手術の適応となります。副甲状腺を取り除くと骨折や命に関わる危険性が低くなりますが、低カルシウム血症のリスクが大きくなる側面もあります。
まとめ
腎臓の機能が低下で起こる血液中のカルシウム濃度の低下やリン濃度の高まりを調整しようと副甲状腺が働き、副甲状腺ホルモンの過剰な分泌が続くと、繊維性骨炎や異所性骨化によって骨折や心血管疾患を起こすリスクが高くなります。
重症化すると命に関わる状態となり、手術が必要となることもあるため、カルシウムやリンをコントロールした食事療法、透析治療で予防し、定期的な血液検査で異常を早めに発見して治療を開始することが大切です。
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