体温調節機能が乱れやすい。透析患者さんと体温の関係
透析患者さんでは、夏場はクーラーをかけている室内でもひどく暑く感じ、冬場は暖房がかかっている室内でも厚着しないと過ごせないほど寒さを感じるなど、健常な人との体感温度のずれが生じやすくなります。
透析患者さんが健常な人に比べて夏暑く、冬寒く感じやすい理由と夏場や冬場の具体的な体温調節の方法について知り、対策を行っていきましょう。
透析患者さんは体温調節機能が乱れやすい
糖尿病や腎臓機能が低下して尿毒素が体にたまる尿毒症の影響で、透析患者さんは自律神経が障害されやすい状態です。
自律神経は生きていくために必要な体の内部環境を一定に保つ働きを担っており、体温や血糖、血圧、呼吸、免疫などの機能を維持しています。
体温調節機能では、暑いときには皮膚の血管が拡がって皮膚の温度が上がり、皮膚から熱を逃がそうとする反応や、汗をかき、熱を逃がして体温を下げようとする反応が起こります。
反対に、寒いときには皮膚の血管は収縮して体の熱が逃げていくことを抑制する反応や体の震えを起こして筋肉で熱をつくろうとします。このようにして、暑いときにも寒いときにも体温は一定に保たれるようになっています。
しかし、自律神経が障害されると体温を調節する機能がうまく働かず、外の気温に応じて暑いときには体温が上がり、寒いときには体温が下がりやすくなります。
夏場の体温調節のポイント
透析患者さんは体温調節機能が低下しているため、暑いときにも発汗が起こりにくい状態です。さらに日常的な水分制限や塩分制限の影響で、高温の時期には簡単に脱水となります。
高齢の方や高血圧を合併している患者さんも多く、もともと体の水分量が足りていない状態に加えてのどの渇きも感じにくくなります。暑さで疲労や不眠などの体調不良にも陥りやすく、体調が悪いときには体温調節機能も働きにくくなります。
このような状態から、透析患者さんは夏場の高温・多湿時には熱中症に注意が必要です。
熱中症に陥らないための体温調節のポイントを確認しましょう。
- ・室温が28度以上であればクーラーを使用して室温を下げる
- ・水分や塩分が奪われやすい夏場は水分や塩分をやや多くとった方が良い場合があるため、水分摂取量・塩分摂取量について主治医に確認する
- ・体重・血圧・飲水量をチェックして水分量の管理を行う
- ・通気性・吸水・速乾性に優れた衣類を選んで熱がこもらないようにする
- ・身体を冷やす冷却グッズを活用する
- ・体調の悪いときには外出や活動を避ける
冬場の体温調節のポイント
透析患者さんは冬場は外気の気温に合わせて低温が下がり、寒さを感じやすくなります。また、血液循環が低下することで足や手などの体の末梢の冷えを感じやすくなります。
寒いとたくさん服を着こんで暖をとろうとしがちですが、服を重ね着すると動きにくくなって転倒しやすくなったり、服の摩擦で皮膚のかゆみを引き起こしたりします。
寒いからといって熱いお風呂で体を温めるのも皮膚が乾燥してかゆみを発生する原因となります。
糖尿病で神経障害が進行している患者さんは、電気あんかやカイロの使用で低温やけどに至ることもあるため、冬の温めグッズを使用する際にも注意が必要です。
転倒やかゆみ、低温やけどを避けて冬の暖をとるための体温調節のポイントを確認しましょう。
- ・分厚い上着や厚みのある靴下は転倒しやすくなるため、薄手の保温性のある機能性インナーや靴下を活用する
- ・皮膚に刺激となる素材の衣類は避ける
- ・暖房で部屋の空気を暖めると同時に、部屋が乾燥しないように加湿器などを併用する
- ・保湿剤を塗るなど、皮膚の保湿をしっかり行う
- ・熱いお湯での入浴は避け、入浴後は体が冷めないように洗面所や脱衣所をヒーターなどで暖めておく
- ・夜寝るときに電気あんかやカイロをつけっぱなしにしない
まとめ
透析患者さんは自律神経機能の障害から体温調節機能が低下しやすく、夏は暑く、冬は寒さを感じやすくなります。
クーラーや暖房で室温を適温に保つとともに、温度調節に優れた機能性インナーなどの衣類を活用しましょう。夏場はとくに熱中症に注意が必要です。冬場は着こんで動きにくくなることでの転倒やカイロなどによる低温やけどにも注意しましょう。
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