知っておきたい!透析に用いるシャントの種類に関する基礎知識
透析治療で必要不可欠な身体から血液をとり出し、再び戻す出入り口となる「バスキュラーアクセス」には種類があります。それぞれのバスキュラ―アクセスにはメリット、デメリットがあり、患者さんの状態や目的を考慮して選択されます。
今回は、透析治療において血液の出入り口となるバスキュラ―アクセスによって異なるシャントの種類と特徴について、一緒に学んでいきましょう。
バスキュラ―アクセスとは
血液透析を行う際に身体の中から血液をとり出し、透析器でろ過して浄化した後、再び身体の中へと血液を戻す経路のことをバスキュラ―アクセスと言います。
バスキュラ―アクセスには、シャントと非シャントがあります。シャントは、動脈と静脈をつないだ血流があるもののことで、身体の中で動脈と静脈をつないでいるものを内シャント、身体の外でチューブを用いて動脈と静脈をつないでいるものを外シャントと言います。
非シャントは動脈と静脈がつながっておらず、シャントをつくらないバスキュラ―アクセスです。
シャントと非シャントの種類と特徴について、続いてはみていきましょう。
参考記事:医療法人社団ふけ会 冨家千葉病院 バスキュラ―アクセス
シャントの種類
シャントには種類があり、内シャントと外シャントがあります。さらに、内シャントには自己動静脈内シャントと自己血管内シャントがあります。
内シャント
内シャントは、動脈と静脈を皮膚の下でつないで動脈血が静脈に流れるようにしたものです。静脈の血流は増えて血管は太くなり、透析時に必要な血流量を確保できるようになります。
現在では内シャントが主流であり、シャントというとほとんどが内シャントのことを指します。
自己動静脈内シャント
自己動静脈内シャントはAVFとも呼ばれ、患者さん自身の動脈と静脈を直接つないだシャントです。AVFは透析治療のバスキュラ―アクセスの主流となっています。
わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)によると、バスキュラ―アクセスがAVFの人の割合は、男性は91.5%、女性は84.6%を占めています。
AVFは長期間使用でき、感染症のリスクも低く、管理も比較的簡単に行えるというメリットがあります。一方でシャントが発達して血流が多くなりすぎると心臓への負担が増す、瘤ができることがある、指先が冷たくなるなどのデメリットもあります。
人工血管内シャント
人工血管内シャントはAVGとも呼ばれ、自動脈と静脈を人工血管でつないだシャントです。血栓ができやすい、長期間の使用が難しい、感染症のリスクがあるなどのデメリットがありますが、自己血管が細くてシャントが難しい方でも行えるメリットがあります。
AVGは男性で5.5%、女性で10.6%の割合で使用されています。
参考記事:わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)第7章 バスキュラ―アクセス
外シャント
外シャントは、チューブの先端を動脈と静脈にそれぞれ挿入し、動脈から静脈へと血液を流し続けます。透析治療時にはチューブを外して透析器につなげ、透析終了後に再びチューブを動脈と静脈につなぎなおします。
外シャントは透析治療の歴史の中で、内シャントが使用されるようになる以前まではよく使用されていましたが、血栓ができて詰まりやすく、長持ちしにくいというデメリットがあるため、現在ではほとんど使用されていません。内シャントが使用されることが多くなっています。
非シャントの種類
続いては非シャントの種類と特徴について詳しくみていきましょう。
非シャントとは動脈と静脈をつなぐシャントのないバスキュラ―アクセスです。非シャントの種類には、動脈表在化法、カテーテル法、動脈・静脈直接穿刺法があります。
動脈表在化法
上腕動脈表在化は肘関節より肩側の上腕部分で、本来、筋肉の奥の深い位置に走っている上腕動脈を皮膚の下まで持ち上げて、透析治療時に穿刺できるようにする方法です。皮膚の下に持ってきた太い動脈から透析治療時に血液をとり出し、透析器を通って浄化した血液を静脈へと戻します。
動脈表在化法は心臓への負担がシャントに比べて少ないというメリットがあり、心臓機能が低下している方やシャントを作成できる血管がない方に使用されます。一方で、血腫ができやすい、止血に時間がかかるなどのデメリットがあります。動脈表在化法は男性1.6%、女性2.0%の割合で使用されています。
参考記事:わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)第7章 バスキュラ―アクセス
カテーテル法
カテーテル法には短期留置カテーテル、長期留置カテーテルがあります。
短期留置カテーテルは、シャントなどのバスキュラ―アクセスの作成が透析開始に間に合わないときに一時的に使用されます。首や足の付け根の太い静脈にカテーテルを入れ、カテーテルから血液をとり出し、透析器を通って浄化された血液を身体へと戻します。
長期留置カテーテルは内シャントや動脈表在化が適応にならない方に用いられます。首や足の付け根部分、鎖骨下に身体から血液をとり出すチューブと身体へ血液を戻すチューブがついたカテーテルを挿入します。短期留置カテーテルにはないカフがついていて、抜けにくい構造になっています。
針を刺さなくても直接チューブから血液をとり出して、身体へと血液を戻せるため、針を刺す痛みや負担がなく、心臓への負担も少なく透析を行うことができます。しかし、チューブが外に出ているため、感染のリスクが高く、カテーテル内で血栓が詰まりやすいというデメリットがあります。
使用されている割合は男性0.9%、女性2.2%で透析期間が35年以上の女性に多くなっています。
参考記事:わが国の慢性透析療法の現況(2017年12月31日現在)第7章 バスキュラ―アクセス
動脈・静脈直接穿刺法
動脈と静脈に直接針を刺して透析治療を行います。ほかのバスキュラ―アクセスのように手術の必要はありませんが、動脈は深い位置にあるため、針を刺すことが難しく、また止血しにくいため、緊急の場合に用いられる方法です。
まとめ
今回は、意外と知らないバスキューラアクセスの種類と違いについて詳しくみていきました。
年齢が高くなるにつれて、また、透析期間が長くなるにつれて、静脈がつぶれて使えなくなってしまうことや心機能などの問題から自己動静脈内シャント以外のバスキュラーアクセスが使用される割合が多くなっています。
それぞれのバスキュラーアクセスにはメリット、デメリットがあるので、身体の状態などを考慮したうえで適切なバスキュラーアクセス、シャントを選択することが大切です。
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