シャントの狭窄・閉塞って?起きた場合の治療法と早期発見について
シャントは透析治療を受ける透析患者さんにとっては、透析器と体をつなぐ大切な血管です。シャントには透析治療の度に大量の血液が行き交うため、ストレスがかかりやすい部分です。
そのため、シャントのトラブルはよく起こります。今回はシャントの狭窄・閉塞について詳しく学んでいきましょう。
内シャントとは
血液透析治療の際には、体の中から一度に血液をたくさんとり出して透析器に通し、再び体の中に返す必要があります。一般的に採血などで針を刺す静脈から透析に必要な大量の血液を持続的にとり出すことはできません。また、心臓から送り出される血液が流れる動脈は止血が難しいため、透析専用の血管と血液の出入口をつくります。
透析専用につくる血液の出入り口をバスキュラ―アクセス、血管を内シャントといいます。
内シャントには、動脈血を静脈に流すように動脈と静脈をつないでつくる自己血管内シャントと、動脈と静脈を人工血管でつなぐ人工血管内シャントがあります。
シャントの狭窄・閉塞とは
透析治療の度に大量の血液が行き交うシャントは、血管が狭くなる狭窄や血流が途絶える閉塞といったトラブルが起こりやすくなります。
自己血管内シャントでは静脈と動脈をつなぐので、静脈にも勢いよく血液が流れます。動脈に比べて静脈は薄く血管の太さが変わりやすいので、勢いよく多量の血液が流れると血管が伸びて蛇行したり、血管の内壁にストレスがかかって一部が厚くなったりします。
蛇行した部分や血管の内壁が厚くなった部分で狭窄が起こります。人工血管内シャントでは人工血管と自己血管のつなぎ目で狭窄が起こりやすくなります。
針を刺すときの傷痕部分が修復時に厚くなり、何度も同じ場所に針を刺しているとだんだんと血管の壁が厚くなり、血管が狭くなることもあります。
シャント部分に重いものをぶら下げる、腕枕などでシャントが圧迫されるとシャントが塞がってしまいます。また、過剰な除水での血圧低下や下痢や過度の水分不足などで脱水になると、血流が悪くなってシャントが塞がります。
シャントが感染を起こして狭窄や閉塞につながることもあります。
狭窄・閉塞でみられる症状と治療法
シャントの狭窄や閉塞が起こっているときにみられる症状とシャント狭窄・閉塞の治療法について説明します。
シャントの狭窄・閉塞でみられる症状
シャントの狭窄や閉塞が起こると次のような症状がみられます。
- ・シャントの痛みや熱感がある
- ・シャントが硬くなる
- ・シャント部の皮膚の張りや盛り上がりが少なくなる
- ・聴診器でシャントを流れる血流の音を聞いたときに音がいつもより小さい、聞こえない、高い音が鳴る、音が短く途切れる
- ・シャントが入っている手や足が冷たくなる
- ・血液をとり出しにくく、戻しにくくなり、警報アラームが鳴る
シャント狭窄・閉塞の治療法
シャントが狭くなったり詰まったりした場合、シャントの作り直しや、詰まりを起こしている血の塊を取り除く手術を行う治療法が昔は主流となっていました。
しかしシャントの作り直しになると、現在の位置よりも心臓に近い位置にシャントを作り直すことになり、心臓に負担がかかって心臓が悪くなることがあります。手術の際の体への負担も大きく、入院期間も長くなります。
そのため現在では、シャントに風船のついたカテーテル(細い管)を通し、内側から風船を膨らまして広げる経皮的シャント拡張術(VAIVT)が行われています。以前まではシャントPTA(経皮的血管形成術)と呼ばれていた治療法です。
VAIVTは血管の中に造影剤を通してレントゲン撮影を行う方法と超音波エコーでシャントの状態を確認しながら行う方法があります。
VAIVTは局所麻酔で対応でき、外科的な手術を行う治療法に比べて体への負担を軽減でき、手術時間も短くなります。
VAIVTが行えない症例やVAIVTを行っても再びシャント狭窄が起こる場合はシャントの作り直しを行うことがあります。
狭窄・閉塞は早期発見が大切
シャントが狭窄・閉塞してから時間が経過するとVAIVTでの治療が行えない場合が多くなります。シャントの外科的な作り直しになると、透析患者さんへの体の負担が大きくなるので、できるだけシャントの狭窄・閉塞を早期に発見して対応することが大切です。
シャントの狭窄や閉塞があっても透析治療は行えるため、シャント部の異常に気付くことが必要です。毎日シャント部分の観察や聴診器でシャント音の確認をして、いつもと違うと感じることがあれば、透析スタッフや主治医に伝えましょう。
まとめ
シャントの狭窄・閉塞は、多くの血液が勢いよくシャントの中を流れることでストレスがかかって血管が傷みやすくなることや血管に針を何度も刺すこと、シャント部分の圧迫、血圧低下や脱水、感染などが原因となります。
シャントの狭窄・閉塞が起こったまま長い間放っておくと、シャントの作り直しの手術が必要となるため、シャントの狭窄・閉塞が起こったときにできるだけ体に負担の少ない治療で対処できるように早期発見が大切です。
日頃からシャント部の観察やシャント音の確認を行い、異常にいち早く気づけるようにしておきましょう。
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