透析治療の2022年診療報酬改定
診療報酬改定により、保険で受けられる診療内容、検査項目や回数、湿布薬の枚数も決められます。透析医療における診療報酬の内容や2022年度の診療報酬改定で改訂される項目と改定内容についても知っておきましょう。
診療報酬とは
診療報酬とは医療機関に対して保険者から支払われる報酬です。医療保険制度に加入している被保険者が医療機関などで医療サービスを受けたときには、被保険者が自己負担分として1~3割支払い、残りは国民健康保険、全国健康保険協会、健康保険組合などの保険者から支払われます。
診療報酬は医療保険の対象となる医療行為などの対価として支払われ、医療行為ごとに個々の技術やサービスを点数化した「診療報酬点数表」に基づいて1点10円で算定されます。
診療報酬は、医科、歯科、調剤の技術やサービスの評価と、物品の評価である薬価や材料の価格に分けられます。医科診療報酬でいうと、診療内容に応じて、初診料・再診料、入院基本料、医学管理等料、在宅医療料、検査料、画像診断料、投薬料、注射料、手術料、画像診断料、処置料などが加算されます。
診療報酬の内容、点数は、薬価は年に1回、そのほかの報酬は2年に1回見直され、この見直しを診療報酬改定といいます。
透析治療の診療報酬について
人工透析の診療報酬は透析技術料、ダイアライザーなどの人工腎臓用特定保険医療材料、検査などの医学管理料、人工腎臓の加算などがあります。
透析技術料
透析技術料は人工腎臓の点数です。人工腎臓は透析用監視装置の台数や患者数などの透析クリニックの規模に応じて3つの基準に分けられ、4時間未満、4時間以上5時間未満、5時間以上の透析時間によって点数が定められています。
人工腎臓の加算
人工腎臓の加算として、時間外・休日加算(入院以外)、障害者等加算、透析液水質確保加算、長時間加算、導入期加算、慢性維持透析濾過加算、下肢末梢動脈疾患指導管理加算などがあります。
ダイアライザーなどの人工腎臓用特定保険医療材料
人工透析に使用するダイアライザー、ヘモフィルター、吸着型血液浄化器などの価格です。ダイアライザーの機能分類と膜面積によって価格が設定されています。
検査などの医学管理料
定期的に実施するリンやカリウムなどの血液検査、心胸比を調べる胸部の画像検査などの検査料である慢性維持透析患者外来医学管理料があります。
・2019年度「全腎協ニューズレター」第8号全腎協事務局作成(2020.3.6)
・今日の臨床サポート J038人工腎臓(1日につき)
2022年の診療報酬改定について
2022年の人工透析の診療報酬改定では、透析時運動指導等加算、有床診療所療養病床入院基本料慢性維持透析管理加算が算定可能となりました。そのほか、慢性維持透析患者外来医学管理料、人工腎臓の評価の見直しがあります。
透析時運動指導等加算
透析中にベッド上で下肢エルゴメーターによる運動などの実施によって、透析中の血圧低下の予防を図れることや、筋肉量や筋力が増えて透析の効率が上がること、予後が良くなることが期待されています。
2022年の診療報酬改定では、透析患者に対する透析時運動指導等加算75点が算定できるようになりました。これは、透析患者の状態と療養環境などをふまえたうえで、療養上に必要とされる運動などを透析中に20分以上連続して行った場合に算定されます。
透析患者への運動指導の研修を受講した医師と理学療法士と作業療法士、医師から具体的な指示を受けた看護師が実施した場合に、指導を開始してから90日を限度として算定が可能です。
有床診療所療養病床入院基本料慢性維持透析管理加算
19床以下の有床診療所が、大きな病院から退院して在宅復帰するまでの間や急変時の入院の際に透析患者を多く受け入れていることから、1日につき100点が算定可能となったものです。
慢性維持透析患者外来医学管理料
血液検査や画像検査などの定期的に行う検査料が39点引き下げられ、ひと月あたり2,211点となります。
人工腎臓の評価
人工腎臓の評価では、新たに内服薬を点数に含む場合やもともと点数に含まれていた薬の価格によって、点数の引き上げや引き下げの変動があります。
その他
外来患者に処方される湿布薬は1回につき70枚が上限でしたが63枚に引き下げられました。医師が63枚以上必要とする場合は処方箋と診療報酬明細書にその理由を記載すれば処方が可能となる予定とされています。
・令和4年度診療報酬改定 Ⅳ-6重症化予防の取組の推進-①透析中の運動指導に係る評価の新設
・2021 年度「全腎協ニューズレター」第7号全腎協事務局作成(2022.2.25)
まとめ
診療報酬は保険者から医療機関へと払われる医療費です。診療報酬によって保険で受けられる診療内容や検査の項目、回数などが決められており、定期的に診療報酬は見直され、改訂されています。
2022年度の診療報酬改定では、透析患者への運動療法によるQOL向上を期待し、透析時運動指導等加算が新たに追加されました。そのほか、医療の実態によって新たな加算や点数の引き下げ、引き上げなどが行われています。受けられる透析医療の内容にも影響してくるので、透析医療を受けるにあたって診療報酬について知っておくと役立つでしょう。
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