透析を受けるとトイレの回数が減る?お手洗い事情について
透析治療を受けている時間は長時間にわたるため、尿意や便意をもよおすときもあるでしょう。透析中は透析機器と腕のシャントが回路でつながっている状態のため、「トイレはどうやって行くのだろう」「一度針を抜いてからトイレに行き、また針を刺さなければならないのだろうか」など、不安に感じることもあると思います。 透析治療を開始してからのトイレの回数や、透析中に起こる便意などの透析患者さんのお手洗い事情について知り、トイレ時の不安を軽くしましょう。
透析中にトイレに行っても大丈夫?
透析治療は一般的に3~5時間、長い場合は6時間と長時間にわたります。透析中にトイレに行きたくなった場合は透析を一時的に中断してトイレに行くことができます。針につながっている透析機器側の回路を外し、腕に刺さっている側の2本の針は処置をして刺したままトイレに行くことが可能です。
ただし、便意の場合は血圧が低下していることがあるため、血圧低下が認められた場合は寝た状態で便器を挿入して排便を行うこともあります。
透析を受けているとトイレの回数が少なくなりやすい
透析を受けた当初にある程度尿が出ていても、透析治療で腎臓のはたらきを補い続けていると、腎臓がだんだんと萎縮して全く機能しなくなります。腎臓が機能しなくなると、尿量は減少して出なくなります。
水分制限や透析による除水によって便の中の水分量が減ることや、食事制限による食物繊維不足で腸の働きが低下すること、運動の機会が減って腸の働きが低下することや筋力が低下して排便時にいきみにくいこと、リン吸着薬の副作用などから透析患者さんは便秘になりやすいため、便の回数も減りやすくなります。
透析中の便意について
透析患者さんは便秘の人が多いですが、透析中に便意が起こる原因としては服用している下剤の影響、急性腸炎、過敏性腸症候群、過除水が考えられます。
下剤の影響
排便コントロールのために服用している下剤の効果が透析中に現れた場合に便意が起こります。
急性腸炎や過敏性腸症候群
急性腸炎や過敏性腸症候群で腹痛や下痢がみられる場合は医師の診察を受け、必要に応じて検査や治療を行います。
過除水
透析間の体重の増加が大きかったときなど、透析で多く除水すると血圧が低下して血液循環量が少なくなります。腸管の血液量も減少し、血液が行きわたらない状態になると便意が起こることがあります。
過除水による血圧低下は透析の除水が進んだ透析後半の時間帯に起こりやすく、血圧の低下が起こるよりも先に便意が生じる場合もあります。 便意の訴えがあった際に血圧の低下がみられれば、除水を中断して生理食塩水を補います。
透析前は下剤の服用を遠慮いただくことも
透析患者さんが下剤を服用して排便コントロールを行っていて、透析中に毎回便意をもよおすようであれば、医師と相談のうえ、下剤の量の調整や、透析前の下剤の服用を遠慮いただいて飲むタイミングをずらすこともあります。
下剤の量や飲むタイミングの調整を行う場合はきちんと排便があるように調整することが重要なため、自己判断で下剤の服用を中止せずに主治医や透析室の看護師へ相談しましょう。
まとめ
透析患者さんが透析を開始してからは、徐々に腎臓が機能しなくなり、尿が出なくなってゆきます。透析患者さんは水分量の制限や食事制限、除水などの影響から便秘になりやすく、便の回数も減りがちです。
透析中に尿意や便意をもよおした場合は、透析を一時中断して針を刺したままの状態でトイレに行くことが可能です。ただし、過除水による血圧低下で便意が起こっていることもあるため、血圧の確認を行うことが大切です。下剤の影響で透析時に毎回便意をもよおす場合は主治医や透析室の看護師に相談しましょう。
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