むずむず脚症候群って?透析と足のケアについて
むずむず脚症候群は、足がむずむずする異常な感覚が起こります。透析患者さんではむずむず脚症候群を抱えている人の割合が多く、診断がつけば治療が必要です。
どのような症状がみられるのか、その原因や治療法についても詳しくみていきましょう。
むずむず脚症候群とは
むずむず脚症候群は「落ち着かない」「眠れない」「休むことなく」などの意味を持つ「レストレス」を用いて「レストレスレッグス症候群群」とも呼ばれます。
日本での有病率は1~4%で、男女比では女性に多くみられます。
むずむず脚症候群は、夜に寝ようとすると足がむずがゆくなり、足を動かさずにはいられないぐらい不快な感覚が現れる病気です。そのため、夜によく眠れない、眠りが浅くなるといった不眠の症状や昼間の異常な眠気などがみられます。
むずむず脚症候群の診断基準
むずむず脚症候群の診断基準は以下の4つすべてにあてはまることです。
- ①不快な足の異常な感覚により、足を動かさずにはいられない気持ちになる
- ②安静、横になる、座る状態で症状が現れるまたは症状が強くなる
- ③歩く、足をのばす運動で症状はよくなる
- ④昼間よりも夕方や夜に症状が強く出る
さらに、診断の補助として次の3つの特徴が挙げられます。
- ①家族にむずむず脚症候群の人がいる
- ②ドパミンのはたらきを補助するドパミン作動薬で症状が改善する
- ③寝ているときに足の不随意運動が一定間隔でみられる周期性四肢運動を合併している確率が高い
むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の原因ははっきりとはわかっていませんが次のことが関係していると考えられています。
- ①ドパミンを出して、むずむずする、かゆみ、熱いなどの異常な感覚を脳に伝えることを抑制している神経のはたらきが悪くなる
- ②ドパミンの産生に関連する鉄の不足
- ③遺伝の関連
そのほかにも、肥満や喫煙、運動不足、飲酒、糖尿病があるとむずむず脚症候群がみられやすいという報告もあります。
透析患者さんのむずむず脚症候群の原因と特徴
透析患者さんがむずむず脚症候群である割合は一般の人よりも高く、約20%にみられると言われています。
透析患者さんでは、むずむず脚症候群があると寝つきの悪さや入眠途中で目が覚めるなどの睡眠障害が起こりやすくなり、心血管疾患の発症や悪化も引き起こして死亡率が高くなるという報告もあります。
透析患者さんにむずむず脚症候群が高い割合でみられる原因は明らかになっていませんが、透析で十分に除去されないグアニジン誘導体などの尿毒性物質や、透析患者さんに合併しやすい二次性副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症、高リン血症の影響による尿毒症性の末梢神経障害が関係していることが考えられています。
むずむず脚症候群への治療法
透析患者さんのむずむず脚症候群の治療では次のことを行います。
生活習慣の改善
飲酒やカフェインの摂取、喫煙はむずむず脚症候群の症状を悪くするので控えるようにします。カフェインは鉄の吸収も妨げます。
十分な透析治療
透析時間を長くする、透析治療の血液量を多くする、面積の大きい透析膜を使う、血液透析よりも大きな毒素を取り除くことのできる血液濾過透析(オンラインHDF)などの方法で透析量を増やして透析治療で尿毒性物質をできるだけ取り除くようにします。
鉄の補充
鉄不足がみられる場合は鉄剤で鉄の補充を行います。
薬物療法
むずむず脚症候群の治療薬としては、神経の興奮を抑える抗てんかん薬のクロナゼパム(リボトリール)やドパミンのはたらきを補うドパミン受容体作動薬のプラミペキソール(ビ・シフロール)があります。
まとめ
むずむず脚症候群は足の不快な症状から、睡眠障害が生じて生活の質が低下することや心血管疾患のリスクが高まることによって死亡率が上がることが問題となります。
透析患者さんの場合は一般的な割合よりも高い割合でむずむず脚症候群がみられます。夕方や夜寝る前に足のむずむずする感じが強くなり、足を動かすと少し楽になるという症状がみられたら、主治医に相談しましょう。
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