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2020年02月20日

透析治療の重要ポイント!タンパク質を減らしすぎない・摂り過ぎない上手な付き合い方

透析患者さんはタンパク質やリンを摂り過ぎても減らしすぎてもいけません。

今回は、透析患者さんがバランスの良い食事を摂るためにタンパク質やリンを制限しなければならない理由・食事でどのような食品を選ぶと良いか、また、工夫の方法についてみていきましょう。

     

透析患者さんがタンパク質制限を行う目的

食事でとったタンパク質は、エネルギーとして体内で使用された後、老廃物である窒素代謝物がつくられます。

老廃物は腎臓のはたらきによって除去されますが、腎臓のはたらきが低下している透析患者さんは、老廃物を十分に除去することができず、体内に老廃物が溜まります。また、はたらきが低下している腎臓は処理能力を超えて老廃物を除去しようとするため、腎臓に負担がかかります。

透析患者さんは、腎臓にできるだけ負担をかけないため・老廃物が溜まるのを少しでも軽減するためにタンパク質制限が必要なのです。

     

透析治療とタンパク質

タンパク質の過剰摂取はリンの摂りすぎにつながる

リンは魚肉練り製品や加工食品、乳製品、卵黄、レバー、小魚などのタンパク質に多く含まれています。そのため、タンパク質を多く摂り過ぎると必然的にリンも多く摂り過ぎることになります。

リンは骨や歯をつくりますが、摂り過ぎたリンは腎臓でろ過されて尿に排出されます。腎臓の働きが低下した透析患者さんでは十分にリンを排出できず、血液中にリンが蓄積します。

リンが蓄積するとカルシウムの吸収が妨げられ、骨折しやすくなり、骨粗しょう症が起こりやすくなります。また、心筋梗塞や心不全など、心臓血管疾患での死亡率が高くなります。

リンを多く含むタンパク質を摂り過ぎるとリンの過剰摂取になってしまうため、リンを摂り過ぎない工夫が必要です。

     

タンパク質とリンの摂取量

リンの少ない食材を知ってタンパク質不足を避けよう

リンを摂り過ぎてはいけないからといってタンパク質の摂取を極端に制限してしまうと、タンパク質不足になってしまいます。また、透析患者さんでは透析治療によりアミノ酸が失われやすい状態にあります。

タンパク質が不足すると低栄養となり、筋肉量の減少や体力低下、認知機能低下、免疫低下などをきたして日常生活に支障が及び、介護が必要な状態に陥ることもあります。

透析患者さんの1日のタンパク質量の摂取基準は0.9~1.2 g/㎏標準体重/日とされています。リンの摂取量をできるだけ抑えながらも必要なタンパク質を摂れるように、リンの少ない食品、リンの多い食品を知りましょう。

     

リンの含まれる量の少ないタンパク質

リンの多く含まれるタンパク質、リンの含まれる量の少ないタンパク質はリン/タンパク比(mg/g)で比べることができます。

リン/タンパク比(mg/g)
~5mg/g 5~10mg/g 10~15mg/g 15~25mg/g 25mg/g以上
・鶏ひき肉 ・ぶり ・鶏もも肉 ・牛肩ロース ・牛モモ肉 ・鶏ささみ ・鶏むね肉 ・豚ひき肉 ・豚ロース ・さんま ・豚もも肉 ・まぐろの赤身 ・かれい ・鮭 ・鯖 ・鱈 ・厚揚げ ・全卵 ・納豆 ・牡蠣 ・うなぎ ・豆腐(絹・木綿) ・牛レバー ・しらす干し ・ししゃも ・ベーコン ・ハム ・無糖ヨーグルト ・牛乳 ・プロセスチーズ ・アーモンド ・アイスクリーム ・まぐろの赤身 ・かれい ・鮭 ・鯖 ・鱈 ・厚揚げ ・全卵 ・納豆 ・牡蠣 ・うなぎ ・豆腐(絹・木綿) ・牛レバー ・しらす干し ・ししゃも ・ベーコン ・ハム ・無糖ヨーグルト ・牛乳 ・プロセスチーズ ・アーモンド ・アイスクリーム
     

参考文献:1)慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版 日本腎臓学会 日腎会誌 2014;56(5).

主菜の選び方

主菜で使用する肉・魚・豆類・卵といったタンパク質は、リンの含まれる量の少ないものをなるべく選び、リンの多く含まれるタンパク質ばかりの組み合わせとならないようにしましょう。

例)鶏もも肉のソテー、厚揚げの鶏そぼろがけなど。

     

副菜の選び方

リンの含まれる量が少ない食品は、「野菜、こんにゃく、春雨、いも類、きのこ類、海藻類」です。これらのリンの少ない食品は、副菜に選ぶとバランスがとりやすくなります。 例)野菜の煮物やヒジキ煮など。

     

気をつけたい食品

「缶詰、冷凍食品、魚肉練り製品、漬物、ハム・ベーコンなどの加工食品、骨ごと食べる小魚、乳製品、豆類、ナッツ類、レバー」などの食品にはリンが多く含まれますので、摂り過ぎないように注意しましょう。チョコレートやホットケーキ、ポップコーン、ポテトチップスなどのお菓子やするめ、ビーフジャーキーなどのおつまみにもリンは多く含まれます。

一日全体の摂取量を考えて、間食やおつまみでもリンを摂り過ぎないように注意しましょう。

 

治療用特殊食品を組み合わせて工夫しましょう

タンパク質やリンは主食となる炭水化物にも含まれています。

食品(100gあたり) 食パン 玄米 白米 スパゲッティ(乾) そば(乾)
タンパク質 9.3g 6.8g 2.5g 12.2g 14g
リン 83mg 290mg 34mg 130mg 230mg

主食は摂取量も多くなりがちですので、たんぱく質やリンの摂り過ぎとならないように工夫が必要です。

タンパク質やリンが調整された治療用特殊食品を主食に置き換えると、エネルギー量を確保しながら、タンパク質やリンの摂取量を抑えることができ、メニューの幅も広がりやすくなります。

 

参考文献:文部科学省第二章日本食品標準成分表

バランスの良い食事量

まとめ

透析患者さんでは、タンパク質やリンを摂り過ぎることで腎臓への負担が増し、老廃物が体内に溜まりやすくなります。また、骨粗しょう症や骨折、心筋梗塞、心不全などを起こしやすくなります。

タンパク質やリンの少ない食品と多い食品を知り、一日を通じてのメニューの組み合わせを工夫することが大切です。治療用特殊食品をうまく活用することもおすすめです。


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