腎不全の進行度がわかるCKDステージとステージ毎の症状・治療法
慢性腎臓病が進行すると、だんだんと腎臓の働きが悪くなっていき、ついには腎臓がほとんど働かない腎不全となります。
腎不全の進行がわかるCKDステージを確認し、自分や家族のCKDステージがどのステージであるのか、進行するとどのような症状がみられ、どのような治療を行うかということを知っておきましょう。
腎不全のCKDステージとは
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、
- ① たんぱく尿などの尿の異常、画像や血液の異常など、腎臓の障害がみられる状態
- ② GFR(糸球体ろ過量)※が60 ml/min/1.73㎡ 未満の状態のいずれか1つ、もしくは2つともが3か月以上続いている場合です。
※GFRは、血清クレアチニン値、性別、年齢から推算した、1分間に腎臓の糸球体が血液をろ過して尿をつくる値
慢性腎臓病という病気にかかるわけではありません。糖尿病や慢性糸球体腎炎などの病気や、高血圧症、高脂血症、加齢などが原因で腎障害や腎臓の機能低下が起こった状態が慢性腎臓病です。運動不足や肥満などの生活習慣も大きく影響していると考えられています。
慢性腎臓病は早期に治療をすれば回復も見込めますが、進行して慢性腎不全となると自然に回復することはなく、放っておくとさらに進行していきます。GFRを用いて腎臓の働きの程度を区分分けし、慢性腎臓病の進行を示したものがCKDステージです。
CKDステージ毎の腎臓の働きと症状
CKDステージはGFR区分でG1、G2、G3a、G3b、G4、G5の6段階に分けられます。各ステージの腎臓の働きと症状について説明します。
ステージG1、G2の腎臓の働きと症状
G1はGFR値が90以上で、腎臓に障害はみられるけれども腎臓の働きは正常または亢進している状態です。G2はGFR値が60~89で腎臓の障害がみられ、腎臓の働きが軽度に低下した状態です。
G1、G2では尿検査や血液検査で異常が見られても自覚症状はほとんどありませんが、たんぱく尿が高度の場合はむくみがみられます。
ステージG3a、G3bの腎臓の働きと症状
G3aはGFR値45~59で腎臓の働きは軽度~中等度低下した状態です。G3bはGFR値30〜44で腎臓の働きは中等度~高度に低下した状態です。
G3になると、電解質バランスの崩れや日中の尿産生の低下、造血ホルモンの産生の低下などが起こり、むくみ、手足がつる、夜間頻尿、腎性貧血による疲れやすさや顔色の悪さといった症状がみられます。
ステージG4の腎臓の働きと症状
G4はGFR値15~29で腎臓の働きが高度に低下した状態です。G4になると、むくみや尿量の減少、高血圧などの症状や、血液中に尿毒素がたまって体のだるさや頭痛、吐き気、食欲低下、睡眠障害などの尿毒症の症状が出ます。
ステージG5の腎臓の働きと症状
G5はGFR値15以下で、腎臓の働きが極度に低下した末期腎不全の状態です。尿毒症の症状が進行し、肺水腫や心不全、呼吸困難、意識障害などの命にかかわる状態となります。
・順天堂大学医学部付属順天堂病院 腎・高血圧内科 慢性腎臓病 Chronic Kidney Disease; CKD
・全腎協 腎臓病について 症状について
CKDステージと治療法
慢性腎臓病の治療は、GFR値で6段階に分けたCKDステージに加えて、原因疾患とたんぱく尿の程度をA1、A2、A3に分けて評価したCKDの重症度分類に応じて治療が進められます。
ステージG1、G2の治療
腎臓の働きが低下している原因の病気に対する治療を行います。糸球体腎炎では精密検査を受け、専門的な治療が必要となります。糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣が原因の場合は、日常生活での塩分やカロリーを制限した食事や禁煙、運動、減量が大切です。
たんぱく尿がみられる場合はたんぱく質の制限も行います。生活習慣の改善で状態がよくならない場合は、薬物療法も行われます。
ステージG3の治療
ステージG3では腎臓の働きが約半分以下まで低下し、腎臓の働きの低下に伴って現れる腎不全合併症の治療も必要です。腎臓の働きの低下をもたらす病気の治療と、生活習慣の改善に加えて、高血圧や貧血、心不全・肺水腫などの合併症に対する治療も行います。
ステージG4の治療
ステージG4では、食事療法や生活習慣の改善、薬物療法をより厳格に行います。命にかかわる肺水腫や不整脈などの尿毒症の症状や心不全、脳卒中などの腎不全合併症に注意し、今よりも悪くならないように維持していく治療が中心となります。腎臓の機能低下が進んだときのために透析治療や腎臓移植の準備も始めます。
ステージG5の治療
末期腎不全になると、腎臓の機能を補う腎代替療法として透析治療や腎臓移植が必要です。透析治療を開始しても食事療法や生活習慣の改善、薬物療法は継続します。
・順天堂大学医学部付属順天堂病院 腎・高血圧内科 慢性腎臓病 Chronic Kidney Disease; CKD
・東京都 ほっとけないぞ!CKD
・旭化成ファーマ株式会社 ステージの特徴と治療
・守山敏樹 日常診療におけるCKD診療ガイドの活用 日本内科学会雑誌 第97巻第5号1108-1116,2008
まとめ
CKDステージをみると、GFR値によって慢性腎臓病の進行度がわかります。ステージG1、G2では自覚症状はほとんどなく、むくみや夜間頻尿、疲れやすさなどの症状が現れたときにはステージG3段階であることも多いです。
より早期に適切な治療を開始しなければ、どんどん腎不全が進行していきます。今より改善、もしくは現状維持するために、主治医の指示のもとにCKDステージに合った治療と食事療法や日常生活上の注意などを継続しましょう。
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