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2021年03月30日

痛み止めは飲んでも大丈夫?透析治療とお薬の話

痛みを抑えるために使われる痛み止めは、消炎鎮痛薬と呼ばれる薬です。

歯の痛みや頭痛などの痛み止めとして一般的に使用されているのは、非ステロイド性消炎鎮痛薬(以下、NSAIDs)やアセトアミノフェン(製品名:カロナール、アンヒバなど)です。NSAIDsは市販薬としてよく名前が知られているものもあります。

透析患者さんが痛み止めを飲むことで起こる影響について知っておきましょう。

 

透析患者さんは痛み止めを飲んでも問題ないか

NSAIDsは腎臓の機能低下を起こしやすいため、腎臓の機能が残っている透析患者さんでは腎臓の機能を悪化させるリスクがあります。消化性潰瘍や消化管出血などの胃腸障害も起こりやすく、ひどくなると穴が開いて緊急手術が必要となる場合もあります。

 

透析患者さんで使われる痛み止め

透析患者さんの痛み止めとしては比較的副作用が少なく、子どもの解熱にも使われるアセトアミノフェンが推奨されますが、アセトアミノフェンは炎症を抑える作用はなく、NSAIDsに比べて痛みの緩和が得られにくいことからNSAIDsが処方されているケースもあります。

がんなどの非常に強い痛みには非麻薬の中枢性鎮痛薬のブプレノルフィンやペンタゾシン、麻薬のモルヒネやオキシコドンが使用されます。

実際には主治医が透析患者さんの体の状態や痛みに対する利き具合、副作用の影響などの経過をみながら判断した痛み止めが用いられており、透析患者さんの痛み止めとして約7割にNSAIDs、約2割にアセトアミノフェンが使われているという報告があります。

参考文献:公益財団法人日本腎臓財団 クスリ:痛み止め

透析患者さん痛み止め

透析患者さんと胃薬について

痛み止めで起こる胃腸障害の副作用を防ぐために胃薬が一緒に処方されることがありますが、胃薬で予防できるのは胃や十二指腸の潰瘍や出血などに限られ、小腸や大腸の粘膜障害は防ぐことが難しいとされています。

市販の胃薬はアルミニウムを含んでいるものが多く、透析ではアルミニウムを排出できずにアルミニウム脳症やアルミニウム骨症を起こすため、透析患者さんは飲むことができません。

胃腸障害は緊急な治療が必要な場合もあるので、主治医から痛み止めと一緒に処方された胃薬を服用し、胃腸の不調を感じた場合はかかりつけ医を受診しましょう。

 

透析患者さんとロキソニンなどの頭痛薬について

ロキソニンはロキソプロフェンというNSAIDsで薬剤師のいる薬局でも購入できます。

透析患者さんは残された腎機能の低下や胃腸障害が起こるリスクが高く、抗凝固薬や抗血小板薬と一緒に飲むと消化性潰瘍を発症しやすくなるため、自己判断での購入・服用はおすすめできません。

高齢者や胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往のある人はとくに注意が必要です。一度潰瘍ができると出血や穴が開くなどの重篤な状態となりやすいので、主治医から処方された場合に、どうしても必要なときのみ服用することが望まれます。

 

参考文献:厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル

透析患者さんが注意したい痛み止めの成分とは

NSAIDsが痛みを緩和する仕組みは痛みや炎症の原因となるプロスタグランジンが作りだされることを阻害するからです。プロスタグランジンは腎臓や胃を保護する作用もあるため、残存している腎機能の悪化や胃腸障害が起こりやすくなります。

そのためNSAIDs全般の服用に注意が必要です。

NSAIDsには次の種類があります。

  • ・イブプロフェン(製品名:ブルフェン、イブ)
  • ・ロキソプロフェン(製品名:ロキソニン)
  • ・ジクロフェナクナトリウム(製品名:ボルタレン)
  • ・アスピリン(製品名:バファリン)
  • ・エテンザミド(製品名:ノーシン、新セデス)
  • ・イソプロピルアンチピリン(製品名:セデス・ハイ)
  • ・インドメタシン(製品名:インダシン)
  • ・メフェナム酸(製品名:ポンタール)
  • ・スルピリン(製品名:メチロン) など

アセトアミノフェンもプロスタグランジンが作りだされることを阻害しますが、腎障害や胃腸障害に影響するプロスタグランジンの産生は阻害されないため、NSAIDsよりは比較的リスクが少ない痛み止めとして扱われています。

ただし、透析患者さんではアセトアミノフェンの成分が蓄積しやすく、長期間の使用は肝機能に影響を与えることがあるため、飲む期間や量には注意しなければなりません。

 

透析患者さんと痛み止めの処方

まとめ

透析患者さんは複数の病気を抱え、痛み止めを使う機会も多くあります。

一般的には非ステロイド性消炎鎮痛薬薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが痛み止めとしてよく使われますが、腎機能の低下や胃腸障害、肝機能障害などの副作用があるため、慎重な使用が望まれます。

基本的には痛みがあるときは主治医に相談し、副作用を避けるために頻回や長期間の服用は控え、痛みが我慢できない場合のみ服用することが重要です。


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