オーバーナイト透析のメリット・デメリット
一般的な週3日、1回4時間の透析治療よりも透析時間を延ばして行う長時間透析では、より老廃物を多く除去できるメリットがあります。
長時間透析を夜間の睡眠中に行う「オーバーナイト透析」は、日中の時間を有効に使えるというメリットがある反面、デメリットもあります。今回はオーバーナイト透析のメリット、デメリットをみていきましょう。
オーバーナイト透析とは
オーバーナイト透析は夜間の睡眠中の時間を利用して行う透析です。医療機関によって開始時間は異なりますが、多くの場合は夜の20時~23時の間に透析を開始し、朝の4時~7時まで7~8時間透析を行います。通常の透析と同様に医療機関に通院して行い、通院頻度は週3回となります。
若く働き盛りの患者さんは老廃物の量が多く、一般的な1回4時間、週3回の透析では血液の浄化が不十分で飲み薬を追加して対応している方も多くいます。
その点、週18時間以上の長時間透析だと透析時間が長いため、老廃物をしっかり除去できます。長い時間をかけて緩やかに透析を進めることができるので、身体への負担も軽減できます。
オーバーナイト透析は、長時間透析を睡眠中に行えることで得られるメリットがあります。その一方で、夜間の睡眠中に行う透析ならではのデメリットもあります。
オーバーナイト透析のメリット、デメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
・全腎協 より長く、元気に生活できるさまざまな血液透析療法
・重井医学研究所附属病院広報誌ハーモニー
・にれの杜クリニック
オーバーナイト透析のメリット
オーバーナイト透析には次のメリットがあります。
- 夜間の睡眠中に透析を行えるため、フルタイムの勤務や学校への通学、日中の家事が可能。
- 夕方の時間を有効に使うことができ、自宅で夕食を食べ、入浴してから透析を受けられる。
- 透析時間が長いため、一般的な透析よりも多くの老廃物の除去が可能。
- 一般的な透析に比べて長い時間をかけて透析を行うため、1時間当たりの除水量を少なくでき、心臓や体にかかる負担が軽くなる。かゆみ・透析後のだるさ・透析中の血圧低下を軽減でき、体調や血圧が安定しやすくなる。
- 腎性貧血の改善を期待できる。
- 血圧や電解質の調整が改善することにより、降圧剤やリン降下剤の飲み薬を減らすこと、辞めることを期待できる。
- 食事制限が緩やかになり、食事がしっかりと摂れるようになって活力が出る。
オーバーナイト透析のデメリット
オーバーナイト透析は夜間の睡眠中に行う透析であるため、日中と比べて緊急時の対応をとりにくいデメリットがあります。また、睡眠中に透析を行うため、透析を受けながら眠れることや体重管理や食事管理をしっかり守れるという条件を満たすことが必要です。
- 夜間の透析では日中に比べて緊急時の対応が十分にとれないため、心臓や脳の病気がある場合はオーバーナイト透析の対象とならない。
- オーバーナイト透析を受けながら眠ることができないと、日常生活に支障をきたすため、透析を受けながら夜間に眠れることが必要。
- 体重増加や水分・リン・カリウムなどの摂りすぎがあると除水量が増えて血圧が低下しやすくなり、夜間に安全に透析を行えなくなるため、体重管理・食事管理を自分で管理できることが必要。
- オーバーナイト透析を行っている施設が限られるため、どの医療機関でも受けられるわけではない。
- 透析前の飲酒は禁止。
- 体調が悪い時にオーバーナイト透析を行うことはできない。
- 初回からオーバーナイト透析を行うことはできず、日中の透析で問題がないと判断されてから開始となる。
- 睡眠中に透析の針を抜いてしまう危険がないことが必要。
オーバーナイト透析の費用
保険請求は通常の透析治療と変わりません。ただし、設備使用料や個室料、夕食・昼食を頼んだ場合の食事料などは別途必要となります。
医療機関によって実費の料金や内容は異なるため、事前に確認しておくことがおすすめです。
まとめ
オーバーナイト透析は長時間透析のメリットを活かし、体への少ない負担でしっかりと老廃物を除去することができますが、夜間の睡眠中の透析であるため「心臓や脳の病気がない」「透析をしながら寝ることができる」「体重管理や食事管理を行える」などの条件に当てはまる人でないと受けることができません。
オーバーナイト透析は日中の時間を有効に使えるため、フルタイムでの勤務や学校への通学が必要な方に向いています。メリット、デメリットを理解したうえで透析治療の選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
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