髪の毛が抜ける?透析と抜け毛の意外な関係
透析患者さんは腎臓の機能低下による尿毒素やホルモンバランスが崩れる影響や、透析治療による頭皮の乾燥などによって髪の毛が抜けやすくなります。
そのほかにも糖尿病や生活習慣、ストレス、亜鉛不足なども抜け毛、薄毛の原因となります。透析患者さんの抜け毛の原因について詳しく知り、その対策方法についてもチェックしていきましょう。
透析治療によって髪の毛が抜ける?
男性も女性も、加齢に伴って、抜け毛や薄毛の悩みはよく聞かれることですが、透析治療によっても髪の毛のトラブルがおこることが言われています。
加齢によっておこる髪の毛のトラブルは、一般的には、30代から髪の毛の傷みやパサつきなどがみられはじめ、髪の毛の艶が失われていきます。40代では髪の毛の量が減り出し、50代では髪の毛が細くなってハリやコシが無くなり、髪の毛の量も少なくなって抜け毛や薄毛などの悩みが上位を占めるようになります。
透析患者さんが透析の導入を開始する平均年齢は2017年で69.7歳(2017 年 12 月 31 日現在)ですから、抜け毛や薄毛などの加齢に伴う髪の毛の悩みがみられることはごく自然なことに思えます。ですが、加齢とは別に、透析治療によって髪の毛の艶が無くなる、抜け毛が増える、薄毛になるなどの髪の毛のトラブルもおこるのです。
参考文献1:一般社団法人 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)
透析によって抜け毛がおこる原因
透析治療によって抜け毛がおこる原因についてみていきましょう。
加齢
透析患者さんの透析導入年齢は30代後半から増加傾向にあり、65歳~84歳にかけてピークとなっています(2017 年 12 月 31 日現在)。抜け毛がみられやすい年齢の方が透析患者さんには多いことが、ひとつの原因として挙げられます。
ホルモンバランスの崩れ
腎臓はホルモンをつくっているので、腎臓の機能が低下している透析患者さんでは、ホルモンのバランスが崩れやすい状態です。ホルモンバランスの崩れは、抜け毛の原因となります。
頭皮の乾燥
透析患者さんは、皮膚の皮脂腺や汗腺が長期の透析治療によって萎縮しており、皮脂や汗の出る量が少なく、皮膚のバリア機能も低下しています。
皮膚が保持する水分量も少なく、皮膚が乾燥しやすい状態です。頭皮が乾燥すると血行が悪くなるので、髪の毛に栄養が届きにくくなり、抜け毛の原因となります。
尿毒素の影響
透析患者さんは腎臓で余分な水分や老廃物をろ過できなくなり、本来は尿とともに体外に排泄されるはずの尿毒素が身体の中に溜まった状態となっています。
尿毒素が溜まると身体に負担がかかり、身体のだるさや高血圧、食欲低下、吐き気、嘔吐、睡眠障害、呼吸困難、意識障害などのさまざまな症状を引き起こします。尿毒素は毛根にもダメージを与え、抜け毛の原因にもなります。尿毒素によって身体にストレスがかかることも、抜け毛に関連しています。
糖尿病の影響
透析患者さんの原因疾患は糖尿病が一番多くなっています(2017 年 12 月 31 日現在)。糖尿病患者さんは抜け毛や薄毛のトラブルが起こりやすいことが言われています。糖尿病で血糖が高いと血管が障害されて血流が悪くなります。
血流が悪くなると酸素や栄養が身体の臓器に行き届かず、臓器がダメージを受けます。頭皮の血流が悪くなると髪の毛が細くなることや、髪の毛が成長する前に抜け落ちてしまうなどが起こり、抜け毛の原因となります。
また、2型糖尿病の発症の原因となる糖質や脂質の多い食事などの栄養バランスの偏りや運動不足、喫煙などは血行が悪くなり、髪の毛の成長に必要な栄養が毛根に届かず、抜け毛の原因となります。
ストレス
透析治療によって精神的なストレスが過剰にかかることで、髪の毛の成長が止まって髪の毛が細くなることや抜け毛が増えることもあります。
亜鉛の不足
亜鉛は髪の毛の成長によいとされています。透析患者さんは亜鉛不足がみられやすく、髪の毛の成長を促す亜鉛が少ないことも抜け毛に関連していると考えられます。
参考文献1:一般社団法人 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)
髪の毛が抜けるのを防止するポイント
髪の毛が抜けるのを防ぐには頭皮の乾燥を防ぐこと、髪の毛によい生活習慣を送ること、尿毒素を透析治療で除去することがポイントとなります。
洗髪時の注意点とスキンケア
洗髪時には、頭皮に優しいアミノ酸系や保湿成分の入ったシャンプーを選び、指の腹で頭皮を揉むようにして優しく洗い、頭皮の汚れはしっかり落としつつ、頭皮のダメージや乾燥を防ぎましょう。
洗髪後は、タオルで髪の毛をゴシゴシとこすったり、濡れたままで寝てしまったりすることは避け、ドライヤーを髪の毛から充分に離して乾かしましょう。頭皮の乾燥が続く場合には、保湿剤が有効な場合もあるので主治医に相談しましょう。
生活習慣の改善
栄養バランスのとれた食事と適度な運動で血行を促し、髪の毛に栄養が届きやすい環境をつくりましょう。
血行を悪くする喫煙は控え、十分に睡眠をとり、体調やホルモンバランスを整えて髪の毛によい生活習慣を送りましょう。ストレスの発散やリラックスできる方法を見つけてストレスを溜め込まないようにすることも大切です。
透析をしっかり受ける
抜け毛の原因に関連する尿毒素を身体から透析でしっかり取り除くことができるように、透析間の水分や塩分、たんぱく質やミネラルなどの摂取量を守って、透析を充分に受けられるようにしましょう。
まとめ
透析患者さんは腎臓の機能低下によって身体に溜まる尿毒素や、透析治療による頭皮の乾燥、生活習慣、ホルモンバランスの乱れ、ストレスなどから髪の毛に栄養が行き届きにくく、抜け毛や薄毛になりやすい状態です。
食事制限を守り、適度な運動を行って血流を促すとともに、髪の毛へのダメージを減らすように洗髪することと頭皮の保湿を心がけ抜け毛、薄毛を対策しましょう。
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