ミネラルバランスが崩れやすい!透析患者さんとミネラルの関係
ミネラルは生きていくために体に必要な栄養素です。腎臓はミネラルの働きに関わっているため、腎臓の働きが悪くなっている透析患者さんではミネラルバランスが崩れることによってさまざまな症状が現れます。
透析患者さんで起こるミネラルバランスの問題について詳しく解説していきます。
ミネラルは腎臓でバランスが保たれている
ミネラルとは無機質とも呼ばれます。体を構成している酸素、炭素、水素、窒素の主な4元素以外のカリウム、リン、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンなどで、私たちの体に必要な五大栄養素のひとつです。
それぞれのミネラルは異なる作用を持っており、生きていくために必要な体の機能の維持や調節に関わっています。
ミネラルは体の中でつくることはできず、食事から摂取する必要があります。ミネラルが不足しても摂り過ぎても、体のさまざまな不調につながります。
腎臓は体内の余分なミネラルを尿へ排泄したり、必要なミネラルの吸収を促したりして、体にとって適切な量に調整する働きを担っています。
透析患者さんとミネラルの関係1.高リン血症
リンはカルシウムの次に体に多く含まれ、骨や歯を形成しています。リンは肉・魚・卵・乳製品・豆類などのタンパク質やインスタント食品などの加工食品にも多く含まれていて、とり過ぎてしまいやすいミネラルです。
健康な人では食べ物に含まれるリンが腸で吸収されると、吸収された量と同じ量のリンが腎臓の働きによって尿に排出されます。しかし、透析患者さんは腎臓の働きが低下しているため、尿へリンを排出できず、体内にリンがたまります。
透析治療で体内のリンを排出できますが、透析治療で排出できるリンの量は健康な人に比べて少なく、だんだんと体内にリンがたまると高リン血症となります。
高リン血症になると、全身の臓器の石灰化の原因になります。血管が石灰化すると動脈硬化を進行させ、心不全や心筋梗塞、脳梗塞などの心血管障害や足の壊死などの重篤な病気を引き起こします。ほかにも関節や皮膚、眼の結膜にも石灰化は起こります。
関節の石灰化が起こると関節の痛みや動きが悪くなり、皮膚の石灰化はかゆみや皮膚の深い部分まで損傷する潰瘍ができます。そのほか眼の結膜の石灰化では目が充血します。
透析患者さんとミネラルの関係2.低カルシウム血症
カルシウムは、人の体に最も多く含まれているミネラルです。大部分は骨や歯に含まれ、残りはカルシウムイオンとして出血の予防や筋肉の興奮を抑える働きも持っています。
腎臓は、腸からのカルシウムの吸収を促して骨を丈夫にする活性型ビタミンDをつくっています。透析患者さんは腎臓の機能が低下していて活性型ビタミンDをつくることができません。そのため、血液中のカルシウムが低下すると低カルシウム血症となります。
低カルシウム血症になるとしびれや筋肉のけいれん、イライラするなどの症状がみられます。
そのほかミネラルのバランスによっておこる問題
透析患者さんでは腎臓の働きが悪いため、ミネラルの調整が上手くいかずに高リン血症と低カルシウム血症が起こります。
リンの量が増える、またはカルシウムの量が減ると不足しているカルシウムの補充や過剰なリンを排出しようとして、リンとカルシウムの量の調整を行っている副甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されます。この状態を二次性副甲状腺機能亢進症といいます。
二次性副甲状腺機能亢進症では、骨からカルシウムが溶け出して骨がもろくなって骨折しやすくなることや、石灰化によって関節の痛み、皮膚のかゆみ、心筋梗塞などの症状がみられます。
まとめ
透析患者さんではミネラルバランスの崩れによって高リン血症や低カルシウム血症、二次性副甲状腺機能亢進症が起こります。
血管の石灰化は進行すると心筋梗塞や脳梗塞など命に関わるリスクもあるため、日々の食事療法や薬物療法、透析治療をしっかりと受けて、ミネラルバランスのコントロールを図ることが大切です。
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