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2024年06月20日

【透析患者の男女比】なぜ、男性の方が透析患者が多いのか?

透析患者の男女比には顕著な差がみられます。なぜ男性透析患者の方が女性透析患者よりも多いのでしょうか。その理由について、研究報告をもとに考察し、女性透析患者特有の身体の変化についても説明します。透析患者に関する男女比についての疑問に詳しくお答えしていますので気になる方はぜひ、チェックしてみてください。

男女

透析患者の男女比

わが国の慢性透析療法の現況によると、2022年12月末の透析患者数は男性22万2,930人、女性11万1,723人(合計334,653人)でした。[1]

男女比で表すと約2:1で、男性が多いことがわかります。

透析患者の年齢構成を男女で比較すると、男女ともに70代以上の割合が多いですが、男性は70~74歳の割合が最も多いのに対して、女性では80~84歳の割合が最も多くなっています。10年前の2012年末のデータを見ても、男性は60~64歳、女性は70~74歳の割合が最も多くなっています。[2]

2022年末において、透析を導入した患者の平均年齢は男性70.76歳、女性72.92歳(全体71.42歳)でした。さらに、男女それぞれ導入が最も多かった年齢層は男性70~74歳、女性80~84歳で、男性が女性よりも早い年齢で透析を導入している割合が高いことがわかります。

・[1]わが国の慢性透析療法の現況(2022 年12月31日現在) 日本透析医学会雑誌56(12)473~536,2023
・[2] わが国の慢性透析療法の現況(2012年12月31日現在)日本透析医学会雑誌47(1)1~56,2014

男性で透析患者が多い理由

女性よりも男性に透析患者が多い理由は、はっきりとはわかっていません。しかし、考えられている要因はいくつかあります。

以下に、その理由を説明します。

男性は女性に比べて慢性腎臓病(CKD)が早く悪化する

男性は女性に比べて透析治療が必要となる慢性腎臓病(CKD)が早く悪化することが言われています。[3]ノルウェーの研究によると、中年期では男性よりも女性の方が腎機能が低いにもかかわらず、年齢を重ねると、女性の腎機能は緩やかに低下していく一方で、男性の腎機能は急速に低下すると報告されています。[4]

また、男性ホルモンであるテストステロンが慢性腎臓病(CKD)の悪化に関連するとの報告もあります。[5]

・[3] Rong Xu et al Gender differences in age-related decline in glomerular filtration rates in healthy people and chronic kidney disease patients BMC Nephrol. 2010
・[4] Toralf Melsom et al Sex Differences in Age-Related Loss of Kidney Function J Am Soc Nephrol 33(10) 1891–1902 2022
・[5] Jie V Zhao 1, C Mary Schooling The role of testosterone in chronic kidney disease and kidney function in men and women: a bi-directional Mendelian randomization study in the UK Biobank BMC Med 18(1)122 2020

悪化

女性は男性に比べて受診率が低い

スウェーデンの研究には、女性は腎機能が低下していても男性に比べて慢性腎臓病(CKD)の診断を受ける割合が低く、腎機能の検査や腎臓を専門的に診療する医師の診療を受けることが少ないという報告があります。[6]

その理由については明確には言及されていません。しかし、男性は急激に慢性腎臓病(CKD)が悪化しやすいのに比べて女性は緩やかにしか進行しないため、受診のタイミングが遅れやすい。また、女性は家事や育児などの家庭内の役割を多く担っているため、受診や入院をすると家庭が回らなくなる、家族が困ると考え、受診をためらうことがあるのかもしれません。

・[6]News from Karolinska Institutet Study reveals gender differences in care of chronic kidney disease 

糖尿病患者は男性に多い

2022年末のデータによると、透析患者さんの原疾患として最も多いのが糖尿病腎症です。さらに男女差でみると、男性43.2%、女性32.1%と男性が10%多い結果です。[1]

国民健康栄養調査では糖尿病が強く疑われる者の割合が男性19.7%、女性10.8%で糖尿病自体も男性が多いことがわかります。[7]

これらのデータから、糖尿病患者に男性が多いことが透析患者に男性が多い理由の一つと言えるでしょう。

・[7]厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告

女性の透析患者に起こる体の変化

透析で起こる身体の変化も男女で異なります。女性の透析患者さんに起こりやすい身体の変化をみていきましょう。

透析治療を受けている女性患者さんは、貧血や月経不順、生殖機能の低下がみられることがあり、平均閉経年齢は45歳で、これは健康な女性よりも4~5歳早いです。

透析患者さんは骨がもろくなりやすいことが知られていますが、閉経後の骨粗しょう症がさらに骨密度の減少を進行させることが報告されています。[8]

女性

まとめ

透析患者の男女比は、男性透析患者の方が多く、その差は2倍です。その理由として、次の理由が考えられました。

・女性に比べて男性は、慢性腎臓病(CKD)が早く進行する
・腎機能が低下していても、女性は男性に比べて検査や受診を受ける割合が少ない
・糖尿病、糖尿病腎症の罹患率が女性よりも男性の方が多い

また、女性透析患者は閉経の時期が早く、骨がもろくなりやすいことがわかっています。透析患者の男女比や男性、女性のそれぞれに起こりやすい状態について知っておくことで、対策が取りやすくなります。悪化する前の予防につなげましょう。

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