シャントを長持ちさせるために知っておきたいシャントマッサージ
シャントには透析の度に多量の血液が流れて血管に負担がかかるため、シャント狭窄が起こることがあります。シャント狭窄が起こると、患者さんへの負担の大きいシャント治療やシャントを作りなおす手術が必要となります。シャントを長く使うための対策のひとつとして、シャントマッサージについて知っておきましょう。
シャントが狭窄する理由
シャントは透析の際に多くの血液量を確保するために、動脈と静脈をつなげて作られています。
動脈から勢いよく流れ込む多量の血液によって静脈には大きな圧がかかります。透析の度に行うシャントへの穿刺も静脈への負担となり、血管の内側の壁が厚くなって血管の狭窄が起こります。また、血の塊が血管に詰まり、狭窄を起こすこともあります。
シャントが狭窄するとシャントの中を通る血液の流れが悪くなって血液を体から回収しにくくなり、透析に時間がかるようになります。また、狭窄した部分を通れなかった血液が逆流し、透析にて一度濾過された血液が再び濾過される状況が起こり、透析効率が悪くなります。
シャントが狭窄した場合にはカテーテルを血管に通し、狭くなった血管をカテーテルの先についた風船を膨らましてシャントを拡げるシャントPTAやシャントの作り直しを行います。
シャントマッサージの効果
シャント狭窄を繰り返す患者さんにシャントの狭窄部分を拡げるためのマッサージを行っている施設があります。シャントマッサージの施行結果ではシャントマッサージを開始してからの方がシャントPTAの施行間隔が1か月以上空くようになったという結果がみられています。
シャントマッサージはシャントPTAのように患者さんのシャントにカテーテルを挿入する身体的な負担や不安などの精神的な負担も軽減できるメリットがあります。
シャントマッサージの手順
透析施設でスタッフによって行われるシャントマッサージのひとつに加圧式のマッサージがあります。シャントの中枢部を遮断し、末梢から狭窄部分に血液を送り込んで血管を拡げる仕組みです。
1.シャントの狭窄している部分よりも肩側の腕部分を駆血帯で縛り、静脈を浮き上がらせます。
2.狭窄している部分よりも肩側の静脈を指で圧迫しておさえ、血液の流れを遮断します。
3.狭窄している部分よりも手指側の静脈を手指側から肩方向に向かって順番に指で押し、狭窄部分に血液を送り込みます。
自分でもできるシャントマッサージ
手指側から肩側に向かって血管をなぞるようにマッサージを行います。
ただし、シャントを作った直後や瘤ができている人、人工血管部分、感染している場合、抜針直後はシャントマッサージを行うことはできません。シャントマッサージは行う前に必ず主治医に相談してから行うようにしましょう。
シャントを作った後には、ゴムボールや弾力のあるスポンジボールを手で握る・開く動作を繰り返すと、シャントの血流を保つための予防運動になります。
毎日、シャントを軽く触れて確認したり、腕を耳に当てたりしてシャントの血流の音と状態を確認しましょう。硬くなっている部分がある場合や、血液の流れる音が聞こえない場合は狭窄が起こっている可能性があります。いつもと異なる状態のときにはかかりつけの透析施設に相談しましょう。
・頻回にPTAを繰り返す症例におけるシャントマッサージの有用性
・シャントマッサージ
・MediPress透析 シャントの種類 〜自己血管
まとめ
シャントを長持ちさせるための方法として、透析施設ではシャントマッサージが行われています。透析施設で行われるシャントマッサージはしっかり力を入れて行われるもので、必要な患者さんに対して透析スタッフが実施します。
自身でシャントマッサージを行う場合は、主治医に実施の可否やマッサージ方法を確認してから行うようにしましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。