乳酸菌飲料を取り入れよう!透析患者さんの便秘解消のすすめ
便秘で悩む透析患者さんは多くいらっしゃいます。透析患者さんは、リン・カリウムの少ない食品を上手に選んで便秘の対策を行う必要があります。
透析患者さんの便秘対策として、乳酸菌飲料を活用する方法について詳しくみていきましょう。
透析患者さんは便秘になりやすい
透析患者さんは水分制限や透析での除水で体内の水分が不足しがちで、便の水分も少なくなって硬くなり、便秘になりやすい状態です。
リンやカリウムを多く含む野菜や果物の制限が必要であり、食物繊維を食事から十分にとることができません。食物繊維は便を柔らかくして腸の中の善玉菌を増やし、腸内環境を整えるはたらきがあります。食物繊維が不足すると腸のはたらきが弱まり、便秘がちとなります。
ほかにも透析患者さんが服用するリンやカリウムを下げる薬や血圧降下薬、抗コリン作用のある薬は便秘の副作用が出ます。加齢の影響や運動不足で腹筋の筋力が低下すること、透析治療のために排便リズムが崩れやすいことも便秘の原因です。
便秘がひどくなると、まれに腸に孔が開いて命にかかわることもあります。便秘だと体重も増えるので、透析時に除水が過剰になり状態が悪くなることもあります。たかが便秘とあなどらず、便秘解消のための対策が必要です。
乳酸菌のはたらき
乳酸菌とは、発酵によって糖などの炭水化物から乳酸を作りだす微生物です。ヨーグルト、チーズ、漬物などに乳酸菌は多く含まれています。乳酸菌の持つ主なはたらきは3つあります。
1.腸内環境を整えて便通を整える
乳酸菌は腸の中の悪玉菌の増加を抑えて、腸内の悪玉菌と善玉菌のバランスを整えるはたらきがあります。腸内バランスが整えられると腸のはたらきがよくなり、便秘の解消に役立ちます。
2.腸内環境を整え、免疫力を高める
ヒトの免疫細胞は腸に集中してあるため、腸内環境が整うと免疫力も高まります。
3.血中脂質の改善
コレステロールを低下させる作用があり、血中脂質を改善します。
参考文献:e-ヘルスネット 乳酸菌
透析患者さんが乳酸菌飲料を飲む際の注意点
乳酸菌の含まれるヨーグルトは、便秘解消に良いとされている食品です。乳酸菌は摂り続けることで腸内環境が整うため毎日、食べ続けることが効果的です。しかし、ヨーグルトにはリンとカリウムが多く含まれており、透析患者さんは注意が必要な食品です。
100g当たり | リン(mg) | カリウム(mg) |
---|---|---|
ヨーグルト(無糖) | 170 | 100 |
乳酸菌飲料(乳製品) | 48 | 30 |
乳酸菌飲料(乳製品以外) | 44 | 13 |
参考文献:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
ヨーグルトはリン・カリウムが多く含まれる
ヨーグルト(無糖)には100gあたり、リン170mg、カリウム100mgが含まれます。同じように乳酸菌が含まれる乳酸菌飲料は100gあたり、リン48mg、30mgに抑えることができます。
乳製品ではない乳酸菌飲料は100g当たりカリウム13mgとさらにカリウムが少ないので、乳酸菌飲料をとり入れることもひとつの方法です。
ただし、リン・カリウムがヨーグルトよりも少ないからといって、水分代わりにたくさん飲むことは禁物です。乳酸菌飲料はさまざまなメーカーから出ており、種類によって含まれる成分も異なります。成分をよく確認し、1日の食事の栄養バランスを考えて量を調節することが大切です。
また、乳酸菌飲料は甘く糖分が含まれているので、糖尿病がある方は糖質やカロリーにも要注意です。
参考文献:文部科学省 食品成分データベース
乳酸菌飲料を上手に取り入れるポイント
透析患者さんの便秘は複数の要因が重なって起こっています。乳酸菌を摂取することに加えて腸内環境を良くする習慣をとり入れましょう。
食物繊維を多く含む食品を摂る
食物繊維を多く含む野菜、海藻、きのこはカリウムを多く含むのでゴボウ、オクラ、シメジ、えのき、ブロッコリー、春菊など比較的カリウムの少ない食品をしっかりと茹でこぼして食べましょう。
生活リズムを整える
毎日の起きる時間と寝る時間、食事の時間、排便のタイミングなど、生活リズムを整えて腸のはたらきを鈍らせないようにします。
適度な運動
運動することで血流もよくなり、腸のはたらきの改善が期待できます。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で運動しましょう。透析中のベッド上での足上げは腹筋が鍛えられ、排便時のいきみをサポートしてくれます。
まとめ
透析患者さんは食事制限が必要であり、便秘の解消に良いとされる食物繊維や乳酸菌を含む食品を摂る際にも注意が必要です。
そのため、リンやカリウムの少ない食品を選んで上手に取り入れることが求められます。乳酸菌飲料はヨーグルトに比べてリンやカリウムが少なく、腸のはたらきを整えてくれる乳酸菌を含む飲料です。
まずは主治医や栄養士に確認したうえで、乳酸菌飲料を上手に活用することがおすすめです。併せて、腸のはたらきをよくする生活習慣も心がけていきましょう。
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