【増える高齢者の透析】今後の課題と認知症の関係
透析治療を受ける高齢者の割合が年々増加傾向にあります。高齢者では透析治療を受けながら余生を過ごすこととなり、合併症や認知症を抱えるリスクは高齢になるほど高くなります。
今回は透析治療を受ける高齢者の課題と、透析と認知症の関係について考えていきましょう。
透析治療を受ける高齢者の割合
2017年の透析治療を受けている患者の平均年齢は68.4歳であり、最も割合が高い年齢層は男女とも65~69歳となっています。
65歳未満の透析患者数が年々減少している一方で、65歳以上の透析治療を受ける高齢者の割合は年々増加傾向にあり、透析患者数の増加は65歳以上の高齢者によるものです。
2017年の透析患者数32万1,516人のうち65歳以上の高齢者は21万5,646人であり、透析患者の67%を65歳以上の高齢者が占めています。
透析治療を受ける高齢者の割合が増加している背景には、わが国の高齢化率の上昇があります。
2017年の総人口に占める65歳以上の割合は27.7%となっています。さらに高齢化率はますます上昇し、2060年には39.9%となると推計されています。
参考文献:一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会 2017年末の慢性透析患者に関する集計 わが国の慢性透析療法の現況
高齢者の透析治療での課題
高齢者では心血管疾患や骨関節疾患などの複数の合併症や認知症を抱えているケースが多くみられます。
加齢の影響に加えて、透析患者は食欲が低下して栄養不良となりやすい状態にあります。また、入院することで活動性が低下し、筋力や体力が落ちて介護が必要な状態となるリスクも高まります。
加齢による記憶力の低下や動脈硬化の進行、アルツハイマー病など、認知症の発症や進行もみられやすくなり、経過が悪くなりがちです。
透析を受けることへの不安や将来の不安も感じやすく、身体のかゆみ、不眠などが精神面へ影響することもあります。
高齢者が透析治療を受けるうえで考えておきたいこと
高齢者が透析治療を受ける目的は、透析治療によって失われた腎臓の機能を補い生命維持を図ることと、生活の質を維持して寿命まで自分らしく生きることです。
合併症が多いほど透析治療開始後の予後は悪くなり、高齢者では合併症を複数抱えている場合も少なくありません。
病気を治すために透析治療を受けるのではなく、病気をケアしながら生活するという視点で透析治療をとらえ、治療に臨むことが必要です。
加齢とともに、介護度が上がるリスクや認知症になるリスクも高くなります。できるだけ自立した生活が継続できるように、栄養バランスのとれた食生活と運動習慣を心がけ、普段の生活からケアしていくことが大切です。
また、透析治療を受ける間は長時間、同じ姿勢で過ごさなければなりません。姿勢などを工夫して必要な治療をしっかり受けられるようにし、医師の指示通りに服薬しましょう。
高齢者の透析治療と認知症
2010年の透析人口全体で認知症の合併がある患者は、10.0%となっています。認知症は徐々に進行していく病気であり、透析治療は開始すれば一生継続が必要な治療なので、透析治療を続けていると認知症が進行していくこともあります。
透析治療は週3回、1回4時間ベッド上で安静を保たなければなりません。
記憶が障害され、自分のことや周りの状況を認識することが難しくなる認知症では、透析治療の必要性が理解できず、さまざまな不安などから突如、透析を受けられない状況となることや透析治療中に姿勢の安静を保つことが難しくなる場合もあります。
認知症高齢者の透析治療で求められること
透析治療は受けなければ早期に死に至るため、生命の維持、生活を維持するためには透析を行う医療機関と患者を介護する家族とが密接に連携を取り合い、治療を受けることが必要です。
しかし、透析治療時の医療機関への送迎や見守りだけではなく、介護を行う家族は自宅でも24時間介護をしており、負担は非常に大きなものです。
家族や治療を受ける本人の苦痛や不安を軽減しながら透析治療を受けられるように、地域や専門機関、他施設などが連携を取り合い、医療面・介護面の双方の支援の充実を図っていくことが求められています。
まとめ
高齢化が進むわが国では、今後も透析患者の高齢者の割合が増大することが見込まれています。
高齢になるほど認知症などを合併する高齢者の割合も増え、透析治療を継続するうえで問題が生じることや、本人の治療への意思が確認できない状況で透析治療が必要となることもあります。
透析治療を受ける本人がどのように予後を過ごしたいか、希望する治療やケアについて健康なうちに家族で本人の意思を確認、共有しておくこともとても大切です。
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