腎不全を世界一わかりやすく解説します
腎臓は体を適切な状態に保つはたらきがあります。まずは、主な腎臓のはたらきである「尿をつくる」「血圧の調整」「血液をつくるはたらきを助ける」「骨を丈夫にする」「体内の水分量・イオンバランスの調整」の5つを説明します。
腎臓のはたらき
腎臓は体を適切な状態に保つはたらきがあります。まずは、主な腎臓のはたらきである「尿をつくる」「血圧の調整」「血液をつくるはたらきを助ける」「骨を丈夫にする」「体内の水分量・イオンバランスの調整」の5つを説明します。
尿をつくる
血液をろ過して、体の中の余分な水分や塩分を尿として排出しています。体に必要なものは体の中に再び吸収します。
血圧の調整
血圧が高いときには塩分と水分を多く排出して血圧を下げ、血圧が低いときには塩分と水分の排出を少なくして血圧を上げて、血圧を調整しています。また、血圧を上げるホルモンをつくるレニンという酵素を分泌して、血圧を一定に保つサポートもしています。
血液をつくるはたらきを助ける
腎臓は赤血球をつくり出すエリスロポエチンというホルモンを分泌して、赤血球の数を調整しています。
骨を丈夫にする
ビタミンDを腎臓で活性化して体内へのカルシウムの吸収を促し、骨を強くしています。
体内の水分量・電解質の調整
汗を多くかいたときには濃い尿を少しだけつくって体の外に排出する、汗をかいていないときには薄い尿を多量につくって体の外に排出するというように、体調や気候によって体の中の水分量や電解質のバランスを保っています。
腎不全とは
腎臓のはたらきが正常の30%以下に低下して、体の中から老廃物を十分に排泄できなくなった状態です。
腎不全は、数日から数週間で急速に腎臓のはたらきが低下する急性腎不全と数年以上かけて腎臓のはたらきが低下する慢性腎不全に分けられます。急性腎不全は治療によって、改善が望めますが、慢性腎不全になると腎臓のはたらきを改善させることは難しくなり、腎臓のはたらきを補う透析治療や腎臓移植などの治療が必要となります。
腎不全の原因
2020年12月31日現在のわが国の慢性透析療法の現況によると、腎不全の原因として多いのは、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎などです。
糖尿病性腎症
糖尿病の合併症のひとつで、根本的な原因はわかっていませんが糖尿病によって高血糖の状態が長期間続き、全身の血管の動脈硬化が進みます。腎臓の糸球体の血管も壊れて目が詰まり、老廃物をろ過できなくなって起こるとされています。
慢性糸球体腎炎
腎臓病の中で最も多くみられ、腎臓の糸球体が炎症を起こしてたんぱく尿や血尿が1年以上続く状態です。免疫反応の異常が原因と考えられています。
腎硬化症
高血圧の状態が長期間続くことにより、腎臓の血管が動脈硬化を起こして腎臓のはたらきが悪くなる病気です。高齢者に多い特徴があります。
多発性嚢胞腎
遺伝性の腎臓の病気で、腎臓にできた複数の嚢胞が徐々に大きくなっていき、腎臓のはたらきが悪くなっていきます。大人になってから発症することが多く、70歳になるまでに半数程度で透析治療が必要になるとされています。
・わが国の慢性透析療法の現況(2020年12月31日現在)
・全腎協 糖尿病性腎症
・全腎協 慢性糸球体腎炎
・国立循環器病研究センター 腎硬化症
・東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター腎臓内科 多発性嚢胞腎
腎不全の治療
急性腎不全の治療では原因に対する治療で回復が望めます。
慢性腎不全の治療は今よりも悪くならないようにすることが目的となり、「食事療法、薬物療法、腎代替療法・腎移植」が行われます。
食事療法
エネルギーの十分な摂取、水分・塩分・たんぱく質・カリウム・リンの制限が基本です。年齢や腎不全の原因となる病気、腎臓の状態などによって、個別に医師や管理栄養士から指導された食事を守ります。
薬物療法
腎不全を治す薬はありません。高血圧、高カリウム血症、高リン血症、むくみ、貧血などの腎不全によって起こる合併症を予防するための薬や腎不全の進行を遅らせる薬を使用します。
腎代替療法・腎移植
低下した腎臓のはたらきを補う治療法として、血液透析や腹膜透析を行います。腎移植はほかの人の腎臓を移植して腎臓の機能を回復させる方法で、腎不全の唯一の根治療法です。
まとめ
腎不全は腎臓のはたらきが悪くなり、正常のはたらきの30%以下になった状態です。腎臓のはたらきが十分に行えなくなり、体の中に老廃物がたまって高血圧、貧血、高カリウム血症、高リン血症などのさまざまな合併症を引き起こします。
慢性腎不全になると腎臓のはたらきの回復は望めず、食事療法、薬物療法、透析療法などで進行を遅らせ、合併症を予防する治療が基本となります。根治するには腎移植しかありません。今一度、腎不全について確認し、治療に役立てていきましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。