知っておきたい!腎臓に良い食べ物の基礎知識
腎臓のための食事とは、腎臓に優しい食事をすることです。
腎臓病の食事療法の基本をおさえ、摂取した栄養素が腎臓にどのような影響を与えるのか、また、腎臓のための食事で気をつけたいポイントや食事療法での工夫を学んでいきましょう。
腎臓病における食事療法の基本
摂った食事の内容は腎臓に影響があるため、腎臓病の方は食事内容の制限が必要です。腎臓病における食事療法の基本は、タンパク質の制限、適正なエネルギー摂取、塩分の制限です。
場合によって、リン・カリウムの制限、適切な量の水分摂取が必要になることもあります。
腎臓病の食事療法のガイドラインは設けられていますが、個人の状態によって制限が異なってくるため、主治医に相談し指導を受けた制限を守りましょう。
タンパク質の制限
タンパク質は腎臓から老廃物として排出されるので、タンパク質を多く含む食べ物をたくさん摂ると腎臓への負担が大きくなります。腎臓への負担を少なくするためにタンパク質を制限します。
タンパク質の制限は、腎臓の機能を5段階に分けたステージ(GFR)のG3aから行います。G3aは腎臓の機能が60%未満となった段階です。1日当たりのタンパク質量は、G3aで標準体重1kgにつき0.8~1.0g、G3b以降は標準体重1kgにつき0.6~0.8gとされています。
タンパク質は身体をつくるために大切な栄養素なので極端に制限してしまうと、栄養不足となり、栄養障害や筋肉量・筋力の低下、身体機能の低下などをまねきます。人間の身体のタンパク質の組成に近い質の良いタンパク質を制限量を守って摂り、カロリーを充分に補うことが大切です。
適正なカロリー摂取
1日の適正なエネルギーの摂取量は、標準体重*1と身体活動量から求められ、標準体重1kgあたり25~35kcalとされています。性別、年齢、身体の状態などによって個別に設定されることもあります。
*1標準体重:身長(m)×身長(m)×22
塩分の制限
腎臓病の患者さんに多い高血圧は塩分の摂り過ぎが原因と考えられています。塩分は腎臓の機能のステージに関わらず、1日当たり6g未満(3g以上が推奨)とされています。
平成29年の国民健康・栄養調査では、日本人の食塩摂取量の平均値は男性10.8g、女性9.1gであり、普段の食事に比べて塩分量を3~4g以上減らさなければなりません。
普段から濃いめの味付けになれていると、塩分制限を守り続けるためには相当の努力が必要です。まずは少しずつ薄味になれることがおすすめです。
リン・カリウムの制限
腎臓の機能が低下するとリンやカリウムを排出しにくくなり、高リン結晶や高カリウム血症になることがあります。高リン結晶になると骨からカルシウムが溶けだし、骨がもろくなります。高カリウム血症になると、不整脈が生じて命に関わることがあります。
リンやカリウムはタンパク質を制限することによってある程度制限されますが、リンやカリウムを多く含む食べ物の摂り過ぎには注意が必要です。
適切な量の水分摂取
尿が少ない場合や身体にむくみが生じている場合には水分の制限も必要となります。水分を制限しすぎると脱水を起こすので、尿量をみて調整することが必要です。
参考文献1:日本腎臓学会 慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版
腎臓のために食事で気をつけること
腎臓のためには、バランスの良い食事を心がけタンパク質を摂り過ぎないこと、良質なタンパク質を摂ること、エネルギーを上手に摂ること、味つけや食べ方の工夫をして塩分を控えること、脂肪を摂り過ぎないことを意識しましょう。
バランス良く食事をとる
タンパク質の摂り過ぎを防ぐためにタンパク質を多く含む肉や魚、卵、豆類などの主菜は一品とし、主食、主菜、副菜、汁物をバランスよく食べましょう。練り物や加工食品などのタンパク質、食塩が多く含まれる食べ物の摂り過ぎには気をつけましょう。
良質のタンパク質を摂る
良質のタンパク質を摂ると身体のエネルギーとして利用され、老廃物ができにくくなります。身体の組成に近い良質のタンパク質が含まれる肉や魚、卵、牛乳などからタンパク質を摂りましょう。
エネルギーを上手に摂る
エネルギーは脂質と糖質から摂ります。パンやご飯などの主食にはタンパク質も含まれているので、タンパク質の含まれていない油、はちみつ、水あめ、春雨、くずきり、片栗粉などから摂取します。油を使って炒めものや揚げ物など調理法も工夫してみましょう。
味付けや食べ方の工夫をする
塩分を摂り過ぎないためには、味付けは香辛料や酢などを用いることや焼き目をつけて味にアクセントを利かす、しょうゆやソースは小皿にとって食材につけて調整する、ハムやソーセージ、練り物などの加工食品を食べすぎない、汁物の量は少なめにするなどの工夫を行いましょう。
脂肪を摂り過ぎない
脂肪はコレステロールを増やして動脈硬化を促進させます。脂肪が多く含まれる肉の脂身、バターやチーズなどの乳製品は控えましょう。
腎臓を守るために生活習慣、食生活に注意しましょう。
腎臓病と低タンパク食の関係
腎臓病ではタンパク質の制限が大事になってきますが、タンパク質が含まれる食べ物は肉や魚、卵、豆類だけではなく、米やいも類、小麦などの主食となる穀物にも含まれています。
タンパク質の制限を守ろうと米やパン、麺類などの主食を制限してしまうと、身体に必要なエネルギーも不足してしまいます。エネルギーが不足すると、身体はタンパク質を分解してエネルギーをつくり出し、結果的に分解されたタンパク質が老廃物となって腎臓に負担をかけることになります。
そのため、タンパク質の制限を守ると、カロリーが充分に摂れないということが起こります。
低タンパク食の活用
腎臓病の方の食事療法に適した、「低タンパク食」という治療用特殊食品が販売されています。
低タンパク食にはパンやご飯、麺類、レトルト食品のおかず、間食用のお菓子などがあり、主食を低タンパク食に置き換えたり、レトルト食品を組み合わせたりして普段の食事に活用すると、タンパク質を制限しながら必要なエネルギーを摂取することができます。
低タンパク食は病院の医療売店や薬局、通信販売などで購入できます。
まとめ
腎臓病では腎臓に負担をかけない食事をして、腎臓の機能低下を防ぐことが大切です。腎臓に負担をかけない食事とはタンパク質や塩分を制限し、必要なエネルギーを摂ることです。
塩分を控えたバランスの良い食事を基本に、主菜は良質なタンパク質を含む食べ物を制限の範囲内で食べることを心がけましょう。
市販の低タンパク食を組み合わせると、食事のバラエティも広がります。少しずつ薄味に慣れるようにして、食事療法を継続していきましょう。
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