腎臓のはたらきって?透析と腎臓の関係
腎臓はどのようなはたらきを持っているか知っていますか?よく知られているのは尿をつくることですが、それ以外にも腎臓にはたくさんのはたらきがあります。
腎臓が悪くなると、さまざまな機能が低下し、全身に症状が現れて命に関わることもあります。腎臓の5つのはたらきを知り、透析と腎臓の関係についてみていきましょう。
腎臓の5つのはたらき
腎臓は尿をつくるはたらきがよく知られていますが、そのほかにも、身体の機能を正常に保つための大切なはたらきを担っています。
尿をつくって身体の外へ老廃物を出す
腎臓は血液をろ過して、身体に必要な血液成分やタンパク質と、身体の外に出す不要な物質(老廃物)とに分けています。必要な物質は身体の中に再吸収し、老廃物は尿として身体の外へと排出します。
血圧の調整
腎臓は身体の中の水分と塩分のバランスを保つはたらきをしています。身体の中の水分や塩分が少なくなり血圧が低くなると、レニン(酵素)やアルドステロン(ホルモン)を出して塩分の吸収を促し、血液量を増やして血圧を上げます。
反対に身体の中の塩分が多く、血圧が高いときには、レニンを出すのをおさえて身体から塩分を排出します。身体の中の水分と塩分のバランスの調整とともに血圧の調整を行っています。
身体の水分量・電解質のバランスを調整
腎臓は体調や気候に合わせて、尿の量と濃さを調整し、身体の水分量と電解質のバランスを調整しています。汗をたくさんかいたときには、濃い尿を少しだけ排出し、汗をかいていないときには薄い尿をたくさん排出します。
赤血球を増やす
腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌して、赤血球をつくるはたらきを促しています。腎臓の機能が低下してエリスロポエチンがつくられなくなると、赤血球が少なくなって貧血になります。
活性型ビタミンDをつくって骨を強くする
腎臓はカルシウムを吸収し、骨を強くするはたらきをもつ活性化ビタミンDをつくっています。腎臓の機能が低下して活性化ビタミンDがつくられなくなると、カルシウムが吸収されず、骨がもろくなります。
腎臓のはたらきが悪くなると
腎臓のはたらきが悪くなると、本来、尿として身体の外へと排出されるはずの老廃物や余分な水分が身体の中に溜まり、さまざまな症状が現れます。
はじめのうちは自覚症状がほとんどないまま腎臓は徐々に悪くなっていき、やがて腎不全、尿毒症へと進行していきます。
1.たんぱく尿や血尿が出る
初めの頃は、自覚症状はほとんどなく、尿検査をするとたんぱく尿や血尿がみられます。たんぱく尿は尿の泡立ちがみられます。
2.腎不全
腎臓のはたらきが正常時の30%以下となる腎不全になると、浮腫(むくみ)、運動時の息切れ、動悸、高血圧、尿量の低下、夜間頻尿などがみられます。心不全、高血圧、貧血、骨がもろくなる、血液中のカリウムの濃度が高くなるなどの症状もみられます。
3.尿毒症
腎不全がさらに進んで、腎臓のはたらきが正常時の15%程度となると末期腎不全となり、尿毒症の症状がみられます。腎不全の症状に加えて、身体のだるさ、吐き気、頭痛、不眠、食欲低下、知覚異常、けいれんなどの症状がみられます。肺に水が溜まると、息苦しくなることや咳が出ることもあります。
透析と腎臓の関係
一度悪くなった腎臓のはたらきがよくなることはなく、腎臓の機能低下が進んでいきます。数か月以上腎臓の機能低下が続き、身体の中の水分量や電解質バランスが整わない状態を慢性腎不全といいます。慢性腎不全では、腎臓の機能低下が進むのを緩やかにするために、食事や運動、薬物療法などを行います。
慢性腎不全からさらに腎臓の機能低下が進み、末期腎不全となると、腎臓のはたらきが著しく低下し、身体の中に老廃物が蓄積して命に関わる状態となります。老廃物を身体の中から除去して排出する腎臓の機能を補うため、透析治療や腎移植といった腎代替療法が必要となります。
腎臓のはたらきが正常時の15%以上であっても、尿毒症の症状や高血圧、高カリウム血症、貧血、意識障害、心不全などの症状がみられ、日常生活が著しく制限される場合には透析導入の適応となることもあります。
年齢やライフスタイルなどを考慮し、血液透析、腹膜透析、腎移植から自分に合った治療法を選択します。
参考文献:国立循環器病研究センター病院 腎不全
まとめ
腎臓は尿をつくって身体の中の老廃物を排出すること以外にも、血圧の調整や身体の水分量と電解質のバランスを保つ、骨を丈夫にする、赤血球をつくることを促すなど、さまざまなはたらきを持っています。
腎臓のはたらきが悪くなると全身に症状が現れ、放っておくと命に関わる重篤な状態となります。腎臓のはたらきが悪くなり始めは自覚症状に乏しいため、自覚症状が出たときには腎臓の機能低下が進行していることもあります。
むくみや身体のだるさ、尿量の変化、尿の泡立ちなどの症状がみられたら早めに受診しましょう。わかった時点で早期に治療が開始できるように、定期的に検診を受けることがおすすめです。
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