透析食の食材は「茹でこぼし」がポイントです
透析食では食材の「茹でこぼし」がポイントです。調理における茹でこぼしのメリットを知り、具体的な方法やポイントをおさえましょう。「水さらし」との比較もしているので、透析食をつくる際の参考にしてみてください。
透析患者と食事療法
透析患者の食事は、食塩や水分、たんぱく質だけではなく、エネルギーやリン、カリウムも気をつけなければなりません。
カリウムは体液の浸透圧を一定に保つはたらきや筋肉の収縮、神経の興奮性にも関わっています。健常な成人の場合、カリウムは食事から摂取したのと同じ量が便や尿によって体の外へ排出されますが、透析患者の場合は尿にカリウムを排出できず、血液中のカリウム濃度が高くなりがちです。
血清カリウム値の正常範囲である3.5~5.0mEq/Lを超えて5.5mEq/L以上になると、高カリウム血症と診断され、吐き気、嘔吐、手足のしびれ、脱力感、動悸、不整脈などの症状がみられます。重症例では心停止を起こすこともあります。
透析患者では、血清カリウム値は5.5mEq/L以下、1日のカリウム摂取量は1500mg以下をめざします。
・東邦大学 栄養素の名は
・くまクリニック
・ADPKD.JP 栄養素から見た腎臓 〜腎由来のさまざまな血液中の成分の異常
茹でこぼしをオススメする理由
カリウムはあらゆる食品に含まれる栄養素です。主菜の肉や魚はタンパク質制限を行う際に食べる量を減らすことで、一緒にカリウムも制限できます。
副菜としてよく使われる野菜・芋類・海藻類・きのこ類は、食物繊維やビタミンも含まれるので、ある程度の量を確保しながらカリウムを減らす工夫が必要です。
調理の際に食材を「茹でこぼし」すると、水に溶けやすいカリウムを減らせます。ビタミンも水に溶けて減ってしまいますが、ゼロになることはありません。
肉類や麺類も茹でるとカリウム量をカットできます。食材を水につけない蒸し調理、電子レンジ調理はカリウムを減らせないため、注意が必要です。
「茹でこぼし」のポイント
野菜・芋類・海藻類・きのこ類の茹でこぼしのポイントを説明します。
- 茹でこぼしてもカリウムが減りにくい食材は、とうもろこし、かぼちゃ、芋類、豆類です。食べる量を調整しましょう。
- できるだけ細かくカットすることで細胞が壊れ、カリウムが溶けだしやすくなります。芋類は小さく切ってたっぷりのお湯を使って茹でましょう。
- 豆類は、茹でこぼしを2回繰り返しましょう。
- 茹でるお湯の量が多く、茹でる時間が長いほど、カリウムは減りやすくなります。葉物は3~5分程度、根菜は10~15分程度の茹で時間が目安です。
- 茹でたお湯の中にはカリウムが多く溶けだしているので、再利用はせずに捨てましょう。
- 食材は食べる前に絞る、水切りするなどして水分が残らないようにしましょう。
- 茹でるとかさが減る葉物類、きのこ類は茹でる前に計量しておき、食べ過ぎを防ぎましょう
【食材別】水さらし or 茹でこぼし
「水さらし」でも食材に含まれるカリウムを減らせますが、「水さらし」よりも「茹でこぼし」の方がカリウムの除去率は高めです。
茹でこぼし (水の量:2.5~5倍) |
水さらし (水の量:12倍量、短冊切り・薄切り) |
|
---|---|---|
根菜類 | 約20~50% | 約41% |
葉物類 | 約46% | 約9% |
芋類 | 約15% | ― |
きのこ類 | 約30% | ― |
「水さらし」のポイント
- なるべく水に触れる面積が大きくなるように、切り方は、みじん切り、千切り、薄切りなどがおすすめです。
- 食材が十分につかるたっぷりの水でさらしましょう。
- 食べる前は食材の水分をしっかりと切りましょう。
まとめ
副菜で使う野菜や海藻類、きのこ類、芋類は注意したい食材です。「茹でこぼし」や「水さらし」で事前に食材に含まれるカリウムを減らせます。
効率よく除去するためには、なるべく小さく食材を切ってたっぷりのお湯で茹でこぼし、食べる前に水分をしっかり切ることがポイントです。茹でこぼしのひと工夫を加えるとともに、食べる量も管理して摂り過ぎには気をつけましょう。
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