人工透析は週何回がベスト?標準の週3回から週2回に減らしたり、週4回に増やせる?
人工透析は週何回行うのが良いのでしょうか。週3回・1回4時間が一般的とされている人工透析は週1~2回に減らせるのか、また、週4~5回に増やせるのかを説明します。回数を減らしたり増やしたりすると、どういった影響があるかも確認しましょう。
人工透析は週3回、1回4時間が標準です
日本では多くの医療機関で週3回・1回4時間の人工透析が採用されています。日本透析医学会のガイドラインによっても、最低限守るべき人工透析の時間として、週3回・4時間以上が推奨されています。1)
腎臓は、体の中にたまった過剰な水分や老廃物、電解質などを尿として排出するはたらきを毎日休みなく行っています。本来ならば、腎臓が1週間当たり168時間はたらいてこなしている作業を、週3回・1回4時間の透析では週12時間で補っているのです。
健康な腎臓に比べると十分な回数・時間とは言えませんが、生命維持のためには必要最低限だと考えられています。
日本の保険制度においても、1カ月の保険算定可能な人工透析の回数は月14回とされています。2)これは週3回・1回4時間を基本にした回数(週3回×4週+2)です。
・1) 日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン:血液透析処方」透析会誌 46(7): 587-632.2013
・2)今日の臨床サポートJ038人工腎臓8
人工透析を週1~2回に減らせる?減らすとどうなる?
時間が制限される人工透析の頻度を少しでも減らしたいと思っている透析患者さんもいるでしょう。透析は週何回まで減らせるのでしょうか。
1週間の合計時間でみると、週3回・1回4時間と同時間以上になる週2回・1回6時間以上でも良いのでは?と思いませんか。しかし、透析と透析の間の日数を比較すると、週3回では中1日~2日ですが、週2回では中2~3日となります。
中2日以上空くと、水分や老廃物のたまる量が多くなり、体への負担が大きくなります。透析ガイドラインによって、中2日の体重増加として推奨されている6%未満1)を守るために、食事・水分管理も厳しく行わなくてはなりません。
また、中2日の翌日の死亡、心血管疾患による死亡と入院のリスクが高くなるという米国の報告3)もあり、常に中2日以上となる週2日以下の人工透析は推奨されるとは言い難いでしょう。1回6時間以上行う長時間透析も、週3回の頻度で実施します。
人工透析を週4~5回に増やせる?増やすとどうなる?
では、人工透析は週何回まで増やせるのでしょうか。週5回以上の透析は頻回透析と呼ばれます。1)頻回透析は、透析までの間が隔日以下となるため、水分や老廃物のたまる量をおさえられるほか、透析量を増やせます。
透析量とは、人工透析によってどのくらいの体液が浄化されたかを表す数値です。1回あたりの透析時間(A)と1週間当たりの透析回数(B)を用いてA×B2で計算されます。
週5回・1回3時間と週3回・1回4時間で比べると、週5回の透析量は75、週4回の透析量は48です。1回の透析時間を増やすよりも、透析回数を増やす方が透析量は増え、十分に水分や老廃物を除去しやすくなります。
頻回透析を実施している医療機関は多くはなく、透析回数を増やすには在宅透析という選択肢もあります。
まとめ
日本では週3回・1回4時間の人工透析が、生命維持を図るための最低限のラインとして推奨されています。
人工透析を週2回以下に減らすのは透析と透析の間が長く空き、体への負担が増して死亡リスクや心血管疾患のリスクが高くなるため、おすすめできません。反対に週4回以上に回数を増やした人工透析は、透析量が増えて体の状態を保ちやすくなります。
体の状態や体重管理の状態、通院先の医療機関で実施している透析方法によっても選択できる透析方法は異なります。仕事や家庭の都合もあるでしょう。生活の質を維持・向上するためには週何回の人工透析が自分にとってベストかを主治医とよく相談してみてください。
・全腎協 より長く、元気に生活できるさまざまな血液透析療法
・日本透析医学会ほか 頻回・長時間透析の現状と展望 透析会誌 52(9):497~531,2019
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