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2021年05月18日

透析患者さんのホルモンバランスの乱れと対処法

ホルモンは内分泌腺でつくられる化学物質で、体がどのような状況の時にも一定のはたらきを行うように調節しています。副甲状腺は喉にある甲状腺の後ろ側に4つ位置していて、血液中のカルシウムやリンの濃度を調節するはたらきを持っている副甲状腺ホルモンを分泌します。

透析患者さんではこの副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌され、ホルモンバランスが乱れる状態がみられます。透析患者さんのホルモンバランスの乱れについてみていきましょう。

 

透析患者はホルモンバランスが乱れやすい

腎臓はカルシウムやリン、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどのミネラルの調整を行うはたらきを持っています。

腎臓の機能が低下すると、ミネラルの調整が上手くいかなくなり、ミネラルのバランスに合わせて分泌される副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになるため、透析患者さんはホルモンバランスが乱れやすくなります。

 

ミネラル代謝とホルモンバランスの関係

ミネラルの中でもリンとカルシウムは骨や歯、体の細胞、血液などに存在しており、体を動かす際のエネルギーを作り出すことや心臓・筋肉のはたらきの調整を行っています。

健康な人ではリンやカルシウムの量は腎臓のはたらきによって適切に調整されています。

さらに、体の中のリンやカルシウムの量が少なくなったり多くなったりすると、副甲状腺ホルモンが分泌され、多すぎるリンの排泄や少なすぎるカルシウムの補給を促します。

透析患者さんはリンを尿中に排出できないために体の中のリンの量が多くなる高リン血症や、カルシムの吸収を助ける活性化ビタミンDが作られないために体の中のカルシウムが少なくなる低カルシウム血症となりやすい状態です。

高リン血症や低カルシウム血症になると、リンやカルシウムの量の異常を改善するために副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、ホルモンバランスの乱れが生じます。

透析とミネラルバランs

ホルモンバランスが崩れるとどうなるの?

ミネラルの調整が上手くいかなくなり、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、ホルモンバランスが崩れる状態が続くと二次性副甲状腺機能亢進症になります。

二次性副甲状腺機能亢進症の状態では、体の中に足りないカルシウムを補うために骨を溶かしてカルシウムを吸収しようとします。また、透析患者さんはリンを排出できない状態が続きます。

結果、カルシウムとリンが骨以外の血管や関節、眼、皮膚などに沈着する異所性石灰化やカルシウムが溶け出し、骨がスカスカになる線維性骨炎になります。

異所性石灰化が血管に起こると動脈硬化が進んで狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の原因となり、死亡リスクが高くなります。

血管以外の場所の石灰化が起こると、関節では関節の動きの制限や痛み、眼には充血、皮膚にはかゆみの症状が出ます。

線維性骨炎では骨がもろくなり、骨折しやすくなります。

 

透析患者さんのホルモンバランスの改善ポイント

ホルモンバランスが崩れないように二次性副甲状腺機能亢進症の予防、改善を図るには透析療法、食事療法、薬物療法の3つの治療を組み合わせて行うことが大切です。

 

透析療法

透析治療をしっかりと受けて、できるだけ体の中のリンを取り除きます。

食事療法

リンを含んでいる食品は多いため、できるだけリンの少ない食品を選ぶことが必要です。透析患者さん向けの低リン食を上手く活用して必要なたんぱく質は摂りつつ、リンを少なく抑えましょう。

 

薬物療法

食品から摂ったリンとくっついて便と一緒に排泄するタイプのリン吸着薬を服用します。

 

透析とホルモンバランス

まとめ

透析患者さんは腎臓の機能低下からミネラルの異常をきたし、副甲状腺ホルモンが必要以上に多く分泌される二次性副甲状腺機能亢進症になることがあります。

副甲状腺が多く分泌されると、心血管疾患や骨折のリスクを高めるので、予防・治療が必要です。

予防・治療は体内のリンを取り除く透析療法、できるだけ体内のリンを増やさないようにする食事療法、リンを吸着して体外に排出する薬を飲む薬物療法の3つをしっかりと行うことが大切となります。


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