心胸比って？透析患者さんの心不全管理について

透析患者さんのドライウェイトの決定の際には心胸比（CTR）の値を目安にします。心胸比の詳しい説明や透析患者さんの心胸比の目安値、心胸比が大きい場合や小さい場合はどのような影響があるのかについて確認していきましょう。

心胸比（CTR）は心胸郭比とも言われ、胸のレントゲン画像の胸の幅に対する心臓の幅の比率を求めた値です。

心胸比＝a＋b（心臓の幅）/c（胸郭の幅）×100（％）
で求められます。

一般的に用いられている心胸比の正常値は「50％未満（45～50％）」とされています。心胸比が50％以上の場合は心臓が大きい「心拡大」の指標となります。ただし、もともと心胸比が正常値よりも小さい人は心胸比が50％未満であっても心拡大と判断されることもあります。

・国立循環病研究センター　[91] 心臓が大きいと言われたら
・循環器用語ハンドブック　心胸［郭］比〈cardiothoracic ratio；CTR〉

透析患者さんにとって心胸比は、透析後の目標体重であるドライウェイトを決めるためのひとつの目安となり、定期的に胸のレントゲン検査を行って心胸比を確認します。体に水がたまっていると心臓も水がたまって大きくなり、心胸比の値も大きくなります。

心胸比のほかに、次のような情報と合わせてドライウェイトの決定が行われます。
・体重
・血圧
・hANP（ハンプ：ヒト⼼房性ナトリウム利尿ペプチド）：体内の水分量が増えると上昇するホルモン
・心エコー：心臓の状態、下大静脈の太さを調べる
・透析後の全身状態

・光生病院　あれこれ豆知識　第9号　＜ドライウェイト（基礎体重）について＞
・阿佐谷すずき診療所　ドライウェイト（透析時基本体重）

透析患者さんの心胸比の目安は「男性：50％以下、女性：55％以下」とされています。ただし、心臓の大きさは個人差があるため、個人によって目安となる値は変わります。例えば、若い時からスポーツをしている人や心臓の病気がある人など、もともと心臓が大きい人の場合は心胸比の目安値を超えていても問題がないと判断される場合もあります。

心胸比は前回やそれ以前の値と比べてどう変化しているのかという見方によって判断されます。

・検査数値の見方
・善仁会グループ　胸部レントゲンについて　心胸郭比（CTR : Cardio-Thoracic Ratio）

心胸比が大きい場合、または小さい場合の状態や起こる影響について説明します。

心胸比が大きい場合は心音の聴診や心電図検査、超音波検査などを実施して、心臓の状態に問題がないかを確認します。

心胸比が大きい状態が続いていると、心臓に水がたまっている状態が続いているため、心臓に負荷がかかります。長い間にわたって心臓に負荷がかかり続けていると心臓の血液を送り出すポンプの働きが低下し、体の隅々まで栄養や酸素を送り出せなくなる心不全の状態となります。心不全では息切れ、動いているときに呼吸が苦しくなる、尿量が減る、手足のむくみなどの症状がみられます。

心臓への負荷を減らすためにドライウェイトを下げて透析で取り除く水の量を多くします。 ドライウェイトを下げ、しっかりと透析をすることで、水がたまって大きくなっていた心胸比は小さくなります。

心胸比が35%未満の場合は滴状心（てきじょうしん）の目安とされます。滴状心は慢性閉塞性肺疾患（COPD）の場合にみられます。慢性閉塞性肺疾患では空気を外に出せず、肺に過剰に空気が溜まって心臓が圧迫され、心臓が滴のように押されている状態です。 滴状心では心臓の機能自体への影響はほとんどないとされていますが、将来的に心不全につながることもあるため注意が必要です。

・じんラボ　心胸比
・日本離床学会　Q&A Vol.150　【滴状心で心機能低下する？】COPD画像での質問
・きたうらクリニック　心胸比が大きくなるって・・・

まとめ