減塩も重要!透析患者さんの一日目安塩分量と減塩ポイント
透析患者さんは病院で行う透析治療や薬物療法のほかに、家庭で行う減塩も重要な治療のひとつです。
今回は、透析患者さんが減塩しなければならない理由と一日の目安となる塩分量、毎日の食事で実践したい減塩のポイントについて確認していきましょう。
透析患者さんが減塩する理由とは
透析患者さんは腎臓の機能が低下していて、身体から余分な塩分や水分を排出することができず、身体の中に水分や塩分が溜まります。
身体の中に水分や塩分が溜まると、さまざまな症状や腎臓の機能低下を起こすため、透析患者さんは減塩が必要です。
高血圧になって腎臓の機能が悪くなる
腎臓の機能が低下している透析患者さんは、食事で摂取した余分な塩分を腎臓から排出することができず、身体の中に塩分が溜まってしまいます。
身体の中に塩分が溜まると高血圧となり、腎臓の血管の動脈硬化が進んで、さらに腎臓の機能が低下します。
水分をたくさん摂ることにつながり、心不全や肺水腫を引き起こす
塩分をたくさん摂って身体の中に塩分が溜まると、喉が渇いて水分をたくさん飲むことにもつながります。腎臓の機能が低下していて、身体の水分量を適切に保つことが難しい透析患者さんは、余分な水分を尿として排出することができず、身体の中に水分が溜まってしまいます。
身体の中に余分な水分が溜まると、むくみや呼吸困難、高血圧となり、心不全や肺水腫を引き起こすこともあります。最悪の場合命に関わるので、担当医の指示のもと、塩分制限をしっかりと行いましょう。
60代以上の日本人は、世界的に見ても食塩摂取量が多い
世界保健機関(WHO)では、1日の食塩摂取目標量は5gとされていますが、日本人(20歳以上)の食塩摂取量の平均値は10.1gです。日本人の食塩摂取量の平均値を年代層別でみると、男女とも60代以上の食塩摂取量が多く、世界基準の2倍以上となっています。
透析患者さんを年代層別でみると60代以上の方が多く、普段から塩分を多く摂り過ぎる傾向にある60代以上の方は、とくに塩分の摂取量に気をつける必要があります。
WHO推奨 食塩摂取量 5.0g | ||||
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日本人の食塩摂取量の平均値 | 60代男性 | 70歳以上男性 | 60歳女性 | 70歳以上女性 |
10.1g | 11.6g | 10.9g | 9.9g | 9.5g |
参考文献:平成30年国民健康・栄養調査結果の概要
透析患者さんの一日の塩分目安量
慢性透析患者の食事療法基準では、食塩の摂取量として推奨されているのは6g未満です。
ただし、一律6g未満とすると、患者さんによっては低栄養や心不全となる場合があるので、体格や栄養状態、尿量、身体活動度によって摂取量基準は調整する必要があります。
透析患者さんは、主治医の指示に従って1日の食塩摂取量を守るようにしましょう。
透析患者さんが知っておきたい減塩のポイント
しょうゆやソース、ケチャップ、みそなどの調味料、ラーメン、うどん、みそ汁などの汁物、梅干しや漬物、つくだ煮など、ハムやソーセージ、干物などの加工食品、外食、インスタント食品は多くの塩分を含みます。これらの食品を上手く控えて減塩しましょう。
調味料は量を控える
- ・しょうゆやソース、ケチャップなどの調味料はかけるのではなく、小皿に出してつけて、量を調節できるようにする
- ・調味料には多くの塩分が含まれているので極力控え、素材の味を生かして酢やレモン、香辛料、香味野菜などでアクセントを利かす
- ・減塩しょうゆなど、塩分調整された調味料を、量をはかって使う(減塩調味料を使用するときはカリウムの摂り過ぎにならないように気をつけましょう)
外食やインスタント食品、加工食品、漬物、佃煮は控える
- ・外食は塩分を多く含む料理が多いため、なるべく控える
- ・インスタント食品、加工食品、漬物、佃煮、干物などは塩分が多いので控える
- ・加工していない食材で調理する
汁物は飲み干さない
- ・ラーメンやうどん、みそ汁などの汁物は塩分が多いため飲み干さず、少しだけにする
まとめ
透析患者さんにとって、腎臓の機能を長持ちさせ、合併症を引き起こさないために日常生活の中で減塩することが大切です。
透析患者さんの一日の食塩摂取量の基準は6g未満とされていますが、個人のケースによって必要な食塩摂取量は変わるため、主治医に確認して減塩しましょう。
一般的に日本人は食事で塩分をたくさん摂る傾向がありますので、意識せずに食事をすると塩分の摂り過ぎとなってしまいます。減塩の調味料を選んだり、塩分の多い食品を控えて、工夫して食事を楽しみましょう。
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