透析装置のガスパージとは?忘れるとどうなる?
透析装置と透析患者のシャントをつなぐ前に実施する透析の準備(プライミング)工程の中で行われるのがガスパージです。透析を受ける際の知識として、ガスパージの具体的な内容、目的、忘れると起こるリスクについて確認しておきましょう。
透析装置のガスパージとは
透析におけるガスパージは、透析治療の準備段階であるプライミングの工程のひとつです。透析では、ダイアライザーと呼ばれる人工腎臓に、体から取り出した血液を通し、血液中の老廃物や過剰な水分を取り除きます。
ガスパージは、ダイアライザーをカプラーという部品と接続して透析装置につなぎ、透析液を流す工程です。ガスパージを行うと、ダイアライザーの空気と、血液回路の中の空気が追い出されます。
透析装置には、ガスパージを施行するためのスイッチがあるものや、ガスパージを行っていることを示す表記が出るものがあります。全自動化の透析装置では、プライミング工程の中にガスパージが組み込まれている場合もあります。
ガスパージの目的
ガスパージは、ダイアライザー、および血液回路の中の空気が、体の中に入り込むのを防ぐ目的で行われます。ダイアライザーやチューブの中に空気が残っていると、ダイアライザーの性能や体に影響が及びます。
ガスパージを忘れるとどうなる?
ガスパージを忘れると、ダイアライザーや透析回路のチューブ内に残った空気が体の中に入り、命にかかわる危険性があります。空気が体の中に入ってしまうと起こるのが空気塞栓です。
脳の血管に空気が入り込むと脳梗塞、脳塞栓を起こすリスクがあります。肺動脈に空気が入り込むと、肺塞栓を起こしかねません。肺塞栓は、胸痛、呼吸困難などの症状がみられ、重症化すると失神や心停止もみられます。
ほかにも、ダイアライザーの中に残った空気が血液にふれて固まってしまうと、ダイアライザーの機能が障害され、透析効率が悪くなります。
ガスパージは確認作業が大切
従来は、プライミングのひとつひとつの工程を医療スタッフが手作業で行っていました。昨今では、全自動透析装置の導入により、ガスパージを含むプライミングは、ボタンさえ押せば施行されるものも多くなっています。
しかし、ダイアライザーや部品の接続が甘かった場合や、確認作業を怠るようなことがあると、ガスパージが正常に完了されず、空気混入による事故が発生するリスクがあります。
ダイアライザーとカプラーをゆるみのないようにしっかりと接続する、ダイアライザーをセットする向きを確認する、気泡検出器を使用する、ガスパージの工程が行われていることを確認するなどの作業がしっかりと行われていることが重要です。
まとめ
透析におけるガスパージとは、ダイアライザーに透析液を満たして、中の空気追い出す作業です。ガスパージが適切に行われていないと、ダイアライザー内で血液が固まって透析効率の低下につながったり、空気が体に入って命に危険が及んだりします。
透析回路がシャントにつながれる前には、透析を安全に効率よく行うためのガスパージが行われていることを知っておきましょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。