【下痢にも要注意】知っておきたい透析患者さんのケア
透析患者さんは便秘にもなりやすいですが、下痢にもなりやすいので要注意です。
患者さんが下痢になりやすい理由と下痢の症状がみられるときの対策、下痢を繰り返すときのケア方法についてみていきましょう。
透析患者さんは下痢になりやすい
透析患者さんは水分制限や食物繊維摂取不足、服薬の影響、腹筋の筋力低下、透析治療などの影響で便秘になりやすいことが言われていますが、下痢で悩む方も少なくありません。
透析患者さんが下痢になりやすい理由には次のことが挙げられます。
便秘で下剤を服用して起こる下痢
便秘のお悩みを抱えている透析患者さんは多く、便秘と診断されている方以外でも下剤を服用している透析患者さんは多くいらっしゃいます。
下剤を飲んでいると便がゆるくなり、下痢を起こしやすくなります。大腸を刺激し蠕動運動を促して便を出す刺激性下剤は、習慣的な使用につながりやすく、大腸の動きが低下して下剤の量が増え、下痢が継続してみられることがあります。
糖尿病の影響による下痢
糖尿病の患者さんで自律神経障害がみられる方は、腸が自律神経の影響を受けて下痢の症状がみられることがあります。
過敏性腸症候群による下痢
透析での身体的・精神的なストレスによって自律神経のはたらきが影響を受けると、大腸の蠕動運動が活発になる過敏性腸症候群になり、下痢を起こしやすくなります。
感染症による下痢
透析患者さんは免疫力が低下して感染症にかかりやすくなっているので、細菌やウイルスによる腸炎の症状として下痢がみられることがあります。
下剤以外の服用している薬による下痢
服用する薬によっては下痢しやすいものもあります。
低血圧による下痢
透析中に血圧が下がると、その影響で下痢の症状が出ることがあります。
下痢を起こしてしまったときの対策
下痢の原因によって対応が異なってくるので、主治医に伝えて診察を受けましょう。
細菌性の感染症による下痢であれば、抗菌剤での治療が必要な場合もあります。便秘対策としての下剤の服用や、下剤以外の服用している薬によってひどい下痢がみられる場合には服用する薬の量や服用回数、服用するタイミングなどを主治医や薬剤師の調整を受けて指示を仰ぐ必要があります。
糖尿病による自律神経障害で下痢が起こっている場合は、高血糖状態が続いて起こる場合が多いので生活習慣を見直し、血糖のコントロールを図るようにします。
慢性的な下痢がみられる場合は、腸内の環境を整えるためにも栄養指導内容に沿ったバランスのとれた食事、適度な運動、十分な休息も大切です。なかには重大な病気が隠れている場合もあるので、下痢の症状が続く場合は主治医に相談しましょう。
下痢傾向の強い透析患者さんに必要なケア
下痢傾向が強い透析患者さんの場合には、脱水、栄養不良、皮膚トラブルに注意が必要です。
こまめな水分補給
下痢を頻回に繰り返すと身体の水分が多く失われるので、脱水を起こすリスクが上がります。
ただし、透析患者さんは水分を摂り過ぎてもよくないので、体重を測りながら少しずつ水分補給を行います。
カフェインや糖分、塩分が含まれていない水・お茶が水分補給には適していますが、場合によってはスポーツドリンクの方が脱水対策には良い場合もあるので、主治医に確認しましょう。
コーヒーや緑茶、紅茶などは利尿作用があるので水分補給には向いていません。
栄養不良の予防
下痢を起こしていると食事もとりづらく、腸で栄養も吸収されにくいので栄養不良になりがちです。まずは腸内環境を整えて下痢を予防することが大切ですが、下痢が長く続く場合には主治医の判断で栄養剤の補給を行う場合もあります。
スキンケアと褥瘡の予防
下痢を頻回に起こしていると、肛門周囲の皮膚が便の成分や拭く刺激によってただれやかぶれなどの皮膚トラブルを起こしやすくなります。
皮膚のバリア機能を保護するスキンケア剤でのスキンケアや、皮膚への負担が少なくなるように優しく拭くことが必要です。
寝たきりの方の場合には、オムツ内の蒸れと体圧によって褥瘡ができやすい状態になるため、体位変換やオムツ交換の回数を増やすスことが大切です。
まとめ
透析患者さんは便秘になりやすいことが知られています。一方で、下剤や服用している薬の影響、糖尿病による自律神経障害、過敏性腸症候群、感染症などの影響により下痢も起こしやすくなります。
下痢になる原因によって対応が変わってくるので、主治医に相談しましょう。下痢を頻回に繰り返すと、脱水や栄養不良、皮膚トラブルなどのリスクが上がります。
下痢の予防のためには腸内環境を整えることが大切です。栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休息をとり、生活習慣から整えていきましょう。
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