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2022年04月27日

人工透析はもういらなくなる?腎臓再生の行方

近い将来、人工透析はもういらなくなるかもしれません。東京慈恵会医科大学の腎臓再生グループがラットとマウスを用いた腎臓再生に成功しました。東京慈恵会医科大学により報告された腎臓再生の研究とはどのような研究であるかを知るとともに、医療が発展することによる人工透析への影響について考えてみましょう。

慈恵医大が腎臓再生に成功

東京慈恵会医科大学の腎臓再生グループが2017年11月22日付のプレスリリースで腎臓再生に成功したことが発表されました。これにより、人工透析はもういらなくなる可能性が示唆されました。

これは、ラットの腎臓へと成長するネフロン前駆細胞をマウスの胎児の体の中に注入して腎臓再生を行った研究です。マウスの前駆細胞は薬剤を用いて除去し、注入したラットの前駆細胞のみでできた腎臓の再生に成功したものです。再生した腎臓で尿がつくられることも確認できています。

マウスで再生する腎臓はマウスの腎臓のサイズにしか成長せずに小さいため、ブタの胎児に患者のネフロン前駆細胞を注入して腎臓を成長させ、患者に移植する胎生臓器ニッチ法での腎臓再生がめざされています。

2022年3月1日には、遺伝子操作を行わない通常のブタの胎児の腎臓をサルに移植して腎臓の再生をめざせることが示されました。

よりヒトに近い動物であるサルと、ブタとの異種間の移植において、ブタの胎児の腎臓をサルに移植する方が生まれて間もないブタの腎臓を移植するよりも拒絶反応が低いことを証明したものです。臨床で使用されている免疫抑制剤が利用できることも確認されています。

また、サルに移植されたブタの腎臓にサルの血管が入り込んで成長していくこともわかりました。

大学

東京慈恵会医科大学らプレスリリース ネフロン前駆細胞から腎臓再生成功~臨床応用に向けた最終段階へ~ 2017.11.22
東京慈恵会医科大学らプレスリリース 再生腎臓からの尿排泄に成功 ~臨床応用に向けた大きな一歩~ 2015.9.18

東京慈恵会医科大学らプレスリリース 腎臓の再生医療実現に向けた取り組み開始について 2019.4.5
東京慈恵会医科大学らプレスリリース ブタ腎臓移植は、胎仔腎臓の方が拒絶反応が弱い〜サルを用いた世界初の証明〜 2022.3.1

医療の発展と医療ビジネスの関係

2020年12月31日時点の慢性透析患者の数は、わが国の慢性透析療法の現況によると、34万7,671 人と報告されています。※1

人工透析にかかる1人当たりの月額医療費は約40万円であり、※2年間にすると1人当たりの人工透析の医療費は約480万円と算定されます。慢性透析患者34万人で推算すると、1年間の人工透析にかかる医療費は日本全体で約1.6兆円にもなるのです。

2020年の国民医療費は42.2兆で、※3日本の総医療費の約4%を人工透析にかかる医療費が占めています。

もし、医療の発展によって腎不全の治療の第一選択肢が腎臓再生となり、人工透析はもういらなくなる未来が来れば、2020年末時点で全国に4,493 施設ある透析施設は透析患者から必要とされなくなる未来が予測されます。そうなると、約1.6兆円にもおよぶ医療ビジネスが破綻に追い込まれるかもしれません。

一方で再生医療が今後さらなる発展を遂げてより安全性も確立されるようになれば、再生医療分野におけるビジネスがより成長していく未来も見えます。医療の発展とともに、医療ビジネスの動向もめまぐるしく移り変わっていくことが推察されます。

※1 日本透析医学会 わが国の慢性透析療法の現況(2020年12月31日現在
※2 厚生労働省 平成31年度腎疾患対策予算(案)について
※3  厚生労働省 令和2年度 医療費の動向
「人工透析はもう要らない」慈恵医大が腎臓再生に成功

今後の展開に注目

腎臓

2022年3月1日にブタの胎児の腎臓をサルに移植することで新生児のブタの腎臓を移植するよりも拒絶反応を低く抑えることができたものの、依然として、多くの免疫抑制剤の使用が必要な状態だといいます。

現在は、移植したブタの腎臓のネフロン前駆細胞と移植先のサルのネフロン前駆細胞の両方が存在する状態ですが、移植したブタの腎臓の組織がすべて移植先の患者のネフロン前駆細胞に置き換わり、免疫抑制剤を必要としなくなることが目標とされています。

そのために、患者由来のiPS細胞からネフロン前駆細胞を迅速につくる技術の開発と、薬剤を利用してブタの組織が消失するような遺伝子改変ブタをつくる研究がすすめられています。

東京慈恵会医科大学らプレスリリース ブタ腎臓移植は、胎仔腎臓の方が拒絶反応が弱い〜サルを用いた世界初の証明〜 2022.3.1

まとめ

今後さらに腎臓再生の研究が進めば、人工透析はもういらなくなる未来が来るかもしれません。多くの透析患者さんが腎臓再生で救われるその一方で透析医療が必要なくなれば、日本の約4%を占める透析医療のビジネスが消えてしまう未来も示唆されます。

医療が発展すれば医療ビジネスに影響がおよび、動向が変化するのは当然です。今後、研究がすすめられ、ヒトでの腎臓再生が実現されるか動向に注目です。

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