透析治療で重要な「除水」のハナシ
透析治療における除水は透析患者が日常生活を送るためには欠かせない治療です。透析患者の状態によって適切な除水量、適切な除水速度が決定され、十分な除水を行うには透析患者自身の体重管理も重要となります。
除水について理解を深め、透析治療時に十分な除水が行えるように日常的な管理を意識するきっかけとしましょう。
透析治療の除水とは?
透析患者は体の中の不要な水分を尿として体の外に十分に出すことができません。そのため、血管の中に不要な水分がたまって血圧が上がります。血管から押し出された水分が皮膚の下側にたまった状態がむくみです。肺や胸に水がたまると息切れや呼吸困難の症状がみられるようになり、心臓への負荷も増して心臓の機能低下にもつながります。
透析患者の体の中にたまった水分を透析治療によって取り除くことを除水といいます。
除水量の計算方法と除水速度について
除水で取り除く水の量(除水量)は、適切な量である必要があります。
適切な除水量とは、その透析患者の体の中に余分な水分量がない状態の体重(ドライウェイト)と透析前の体重の差です。ドライウェイトは患者の体調や血圧、⼼胸⽐(胸郭の幅に対しての⼼臓の幅の⽐率)、心エコーの所見、血液検査の結果などから総合的に判断して決定され、定期的に見直されます。
除水量は次の方法で計算しますが、その日の体調や年齢、合併症などもふまえて決定します。1回の除水量は透析日と透析日の間が中1日の場合はドライウェイトの3%以内、中2日の場合は5%以内が理想です。
除水量の計算方法
(透析前の体重)―(ドライウェイト)=除水量
例えば、ドライウェイトが52kgの患者の透析前の体重が53kgであれば、
除水量は、「53kg-52kg =(≒1000ml)」となります。
除水速度について
透析治療で除水を行う際には、除水速度(1時間あたりにどのくらいの量の除水を行うか)を決めます。除水速度が速すぎると、血圧の低下や心臓に大きな負担がかかります。
日本透析医学会の維持血液透析ガイドラインでは、「平均除水速度は15ml/kg/時以下を目指す」とあります。例えば、ドライウェイトが52kgの場合は「15ml×52kg=780ml」で1時間あたり780ml以下の除水となり、4時間透析では「780ml×4時間=3120ml」で除水量は最大3.12Lです。
・日本透析医学会 維持血液透析ガイドライン 日本透析医学会雑誌 46 巻 7 号 2013
・日いい透析ドットコム Q248 DWや除水の意味がよくわかりません。 DWや除水の計算方法も教えてください。
除水できないとどうなる?
透析間の体重増加が多く、ドライウェイトまで十分に除水できない状態が続くと余分な水分が体の中にたまります。
体重の5%程度の余分な水分の増加では、症状が出ないことが多いです。しかし、余分な水分の増加が10%程度になるとむくみや夜間の呼吸困難、咳などがみられるようになります。
さらにひどくなると肺に水がたまり、寝た姿勢で呼吸困難がひどくなる起坐呼吸となります。
ドライウェイトが本来設定されるべき値よりも高く設定されている場合にも十分な除水ができません。体の状態に合わせてドライウェイトの見直しをし、透析間の体重が増えすぎないように管理を行うことが大切です。
除水しすぎるとどうなる?
除水しすぎると、血圧の低下や足のつり、立ちくらみ、声のかれなどの症状がみられます。血圧の低下は透析間での体重増加が多い場合に、除水しなければならない水分量が多くなり、急激な除水を行うことによっても起こります。
まとめ
透析患者にとって、体にたまった余分な水分を取り除く除水は重要な治療です。除水は少なすぎても多すぎても体に負担がかかるため、適切な量とスピードで行う必要があります。
透析日と透析日の間の体重が増えすぎると、理想の除水量と除水速度での除水が難しくなるため、日頃から体重管理を意識して行いましょう。
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