透析患者が長生きするためにできること
透析患者が長生きするためにどのようなことができるでしょうか?透析患者の平均余命や生存率のデータから、透析患者が長生きできるかをみてみましょう。また、長生きするために、透析患者や家族ができることについても説明しています。透析患者が充実した生活を送りながら長生きするためのヒントになれば幸いです。
透析患者は長生きできない?
2003年(平成15年)時点で算出された日本の透析患者の平均余命は60歳男性で9.87年、60歳女性で11.31年です。1)日本全体の平均余命は60歳男性で21.98年、60歳女性で27.49年のため、2)透析患者の平均余命は一般の人の半分以下といわれてきました。
2020年(令和2年)時点では、日本の透析患者の平均余命は60歳男性で12.3年、60歳女性で14.3年となっており、3)2003年に比べて3年程度長くなっています。日本全体の平均余命は60歳男性で24.21年、60歳女性で29.46年であり、4)透析患者と一般の平均余命の差はやや縮まっています。
透析患者の1年生存率は年々高くなっています。1992年以降は、5年生存率、10年生存率ともに改善傾向にあり、5)透析医療の進歩によって生存率が高くなっていると考えられます。
・1)2004年末調査項目に関する予後解析
・2)平成15年簡易生命表
・3)わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在)透析会誌 55(12):665~723,2022
・4)令和2年簡易生命表
・5)年間死亡率と生存率
透析患者が長生きするためにできること
2021年末の透析患者の死亡原因としては、1位心不全、2位感染症、3位悪性腫瘍、悪液質・尿毒症・老衰など、4位脳血管障害です。心不全・脳血管障害・心筋梗塞を合わせた心血管障害は全体の死亡原因の約3割(31.5%)を占めます。3)透析患者が長生きするには、心血管障害、感染症などの死亡原因となる合併症をいかに予防していくかがカギとなります。
合併症を予防するには、体内に溜まった余分な水分や老廃物を透析で十分に除去することが大事ですので、透析と透析の間の体重増加が多くなりすぎないように体重コントロールが必要となります。水分管理、食事制限の実施も基本ですが、食べないで栄養失調になると、筋力や体力が低下して長生きすることはできません。食べ過ぎずにしっかりと栄養バランスよく食事を摂ることで、好きなことや趣味も楽しめ、活動的に過ごせるようになります。
感染症対策や禁煙はもちろん、貧血などがある場合には、適切な治療を受けて、合併症のリスクを抑えることも、長生きするためには大切です。
・長寿リン.JP 透析でいきいき長生き
・KISSEI 透析新ライフ 元気に長生きするための「8つの秘訣」~透析患者さんに知っておいていただきたいこと~
透析患者の家族ができること
透析治療は一度始めると生涯続ける必要がある治療です。日々の水分管理や食事制限、透析施設への通院、透析前後の体調の変化など、今までとは異なる生活を送ることになります。身体的な負担だけでなく、精神的なストレスもかかります。
その中で、病気や透析治療、日々の生活で必要な管理についてだけでなく、体調や気持ちの変化が起こりやすいことなどを理解してくれている家族がそばにいることは、透析患者にとって、透析治療を受け続けるモチベーションとなります。
家族だけで透析患者のサポートをすべて抱え込み、負担が大きくなりすぎてしんどくなってしまうことがないように、主治医や医療スタッフに相談できる環境を持ち、医療機関と一緒に透析患者をサポートしていくことも大切です。
まとめ
透析患者の近年における60歳の平均余命は延びており、さらに、5年・10年生存率は1992年以降高くなっている傾向がみられます。今後の透析医療のさらなる進歩によって、生存率は今よりも高くなるかもしれません。透析患者が長生きするためには、合併症の予防はもちろん、透析治療を十分に受けて栄養をしっかり摂り、活動的に生活を楽しむことも大事です。家族の透析治療への理解とサポートは、透析治療を継続していくうえでの大きな支えとなるでしょう。
※コラムに関する個別のご質問には応じておりません。また、当院以外の施設の紹介もできかねます。恐れ入りますが、ご了承ください。
※当ブログの記載内容によって被った損害・損失については一切の責任を負いかねます。ご了承ください。