透析患者は脳梗塞になりやすい?原因と予防法を知っておこう
脳梗塞は透析患者が合併しやすい病気で、透析患者の死因の上位にも入っています。脳梗塞とはどのような病気であるのか、また、透析患者の死因や脳梗塞の発症率を確認し、透析患者が脳梗塞になりやすい原因についても解説します。脳梗塞の予防法を知って対策していきましょう。
脳梗塞とは
脳梗塞は脳血管障害のひとつで、脳の血管が詰まる病気です。脳の血管が破れる脳出血と脳梗塞をまとめて、脳卒中や脳血管障害とも呼ばれます。脳梗塞では、血管の詰まった箇所から先の血流が長い時間にわたって完全にストップしてしまうと、詰まった先の部分の脳細胞が死んでしまい、意識障害や身体の麻痺、言語障害、高次脳機能障害などが起こることがあります。
治療により、血管が詰まってから数時間のうちに再び血流が戻れば、身体の麻痺や言語障害などの症状の程度が軽くなることや、症状が残らないことも期待されます。
脳梗塞の原因としては、脳や頚部の血管の動脈硬化により、血管の内部が狭くなって血管管が詰まってしまうラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞があります。また、心房細動などの心臓の病気によって起こる心原性脳塞栓も原因のひとつです。不整脈によってできた血の塊が脳の血管に運ばれていき、血管が詰まることで起こります。
脳梗塞発症の原因である生活習慣病や心臓の病気の治療が主な対処法です。身体の麻痺や言語障害、高次機能障害などの後遺症が残った場合は、機能回復や生活の質の向上をめざしたリハビリテーションも行われます。
透析患者は脳梗塞になりやすい?
2021年末のわが国の慢性透析療法の現況によると、透析患者の死因として5番目に多いのが脳血管障害5.6%です。さらに、2021年に透析を始めた人の死因としても脳血管障害4.1%は5番目に多い結果となっています。1)
以前までは脳血管障害の中でも、脳出血が多くみられるとされてきましたが、近年は、脳梗塞が増加傾向にあるといわれています。2)
米国においては、脳卒中で入院した健常人と透析患者を比べると、透析患者は健常人に比べて脳卒中での入院は6~10倍も高いと報告されています。国内の脳梗塞の発症率を調査した報告では、一般住民では年間1000人に0.8~0.9に対して、透析患者では年間1000人に21.5でした。析患者の脳梗塞発症率は、一般に比べて20倍近く高いという結果がみられています。3)
透析患者が脳梗塞になりやすいのは、動脈硬化を促進させる糖尿病、高血圧、脂質異常症の合併が多く、さらに、リン・カルシウムの代謝異常が起こして動脈硬化を引き起こしやすいためと言われています。
・1)わが国の慢性透析療法の現況(2021年12月31日現在)透析会誌55(12):665~723,2022
・2)社)日本透析医学会「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」. 第7章 脳血管障害 II.脳梗塞
・3)常喜信彦,中田憲司,藤﨑毅一郎 透析患者の脳卒中と心房細動透析会誌 55(5):279~283,2022
脳梗塞の予防法
脳梗塞の予防法としては、高血圧や糖尿病の管理、定期検診、生活習慣の改善が挙げられます。
・高血圧や糖尿病の管理
高血圧や糖尿病を合併している場合には、医師の指示に従って、血圧や血糖値を測定し、必要な治療を受けましょう。生活習慣の改善も大切です。
・定期検診を受ける
定期的な血液検査や心臓の検査などを受けて、高血圧や糖尿病、心臓疾患などの異常を早期に発見し、適切な対策や治療を開始できるようにしましょう。
・健康的な生活習慣
透析食の制限を守り、運動制限がなければ無理なく続けられるウォーキングなどの有酸素運動や低負荷の筋力トレーニングを組み合わせた運動習慣を取り入れましょう。
喫煙は脳梗塞のリスクを高めるので、禁煙することも大切です。また、アルコールの摂取量も適度に抑えましょう。
まとめ
透析患者は脳梗塞の原因となる高血圧や糖尿病を透析患者は合併していることが多く、リンやカルシウムの代謝異常による動脈硬化の影響もあり、脳梗塞になりやすい傾向がみられます。医師の指示に従って高血圧や糖尿病の管理を行うこと、水分や食事の制限、適度な運動、禁煙などの生活習慣に留意することも大切です。
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