風邪にも要注意!透析患者さんの感染症対策
透析患者さんの死亡原因の第2位は感染症です。透析患者さんは、穿刺部からの細菌感染や尿路感染、誤嚥性肺炎のほかに、風邪などのウイルス感染症にも注意が必要です。
透析患者さんが風邪をひくとどのような経過を辿るのか・風邪を予防するための対策方法について確認していきましょう。
透析患者さんは風邪などの感染症に要注意
透析患者さんは尿毒症によって免疫が低下しており、健康な方よりも風邪などの呼吸器感染症にかかりやすく治りにくいという特徴があります。風邪などの感染症から肺炎を起こして死亡するケースもあるので、風邪だからといって軽視はできません。
肺炎を起こしていても高熱などのはっきりとした症状が出ずに、なんとなく身体がだるい・咳やたんがみられる程度の症状しかみられず、発見や対応の遅れにつながることもあるので注意が必要です。
参考文献1:佐々木公一 維持透析患者における肺炎の起因菌および菌検出の因子の検討 日腎会誌 2014;56(4):524-531.
参考文献2:大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓・高血圧内科 長期透析の合併症
参考文献3:ラジオNIKKEI 感染症TODAY 「透析患者の感染症マネジメント」
風邪やインフルエンザが腎機能を悪化させる可能性も
風邪やインフルエンザにかかると、脱水や飲んでいる薬の影響により腎機能が悪化する可能性があります。
脱水から腎機能が悪化
風邪やインフルエンザになると発熱、発汗、下痢、嘔吐などで身体の水分が失われ、脱水症状を起こしやすくなります。脱水になると身体の中の血液量も少なくなり、腎臓への血液供給も減って、腎臓の機能が悪化します。
薬の影響で腎機能が悪化
高血圧を合併している透析患者さんで血圧を下げる薬を飲んでいる場合や、腰痛やひざ痛などの関節痛・頭痛があって非ステロイド性消炎鎮痛剤を長期にわたって飲んでいる場合は、薬の影響で腎臓への血流が減り、腎臓の機能が悪化することもあります。
インフルエンザの治療薬の中には、タミフルなどの腎排泄の薬がいくつかあります。腎排泄の薬は腎機能が低下している透析患者さんが使用すると、薬の効きが強すぎたり副作用が出たりすることがあるので、薬の量の調節が必要です。
参考文献1:NHK 脱水と薬に注意!危険な「急性腎障害」 にの症状と対策とは
参考文献2:ADPKD.JP 腎臓に優しい生活習慣を知ろう 腎機能が低下している時の日常生活
透析患者さんは風邪が重症化することも
健康な人であれば、風邪をひいても自然に回復することも多いですが、透析患者さんは風邪をひくと肺炎を起こして重症化することがあります。特に、体力・気力が低下してフレイルに陥りやすい高齢の透析患者さんでは、重症化しやすい傾向にあります。
風邪の多くはウイルス感染ですが、二次感染で細菌感染を起こし肺にまで炎症が及ぶと、肺炎となります。
通常、肺炎では高熱・咳・痰などの症状が出ますが、高齢者でははっきりとした症状が出ないこともあります。「普段と何となく体調が違う」「食欲が減っている」「少しでも身体のだるさや咳、鼻水などがみられる」ときは、早めに主治医を受診しましょう。
参考文献:新潟大学医学部医学科 細菌感染症
まずは風邪予防を徹底しよう
風邪をひいて重症化しないために、まずは風邪をひかないように予防することが大切です。風邪を予防するためには次のことを心がけましょう。
- ・十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動を心がけ、日頃から体調を整える生活を送る
- ・インフルエンザなどの季節性のウイルス感染症が流行る前に予防接種を受けておく
- ・高齢者は肺炎球菌ワクチンの予防接種を受ける
- ・感染症が流行する時期には人ごみに出かけることは避ける。不必要な外出は避ける
- ・外出後は手洗い・うがいを励行する
- ・空気が乾燥する時期は部屋が乾燥しすぎないように、加湿を行う
- ・部屋の換気を行う
参考文献:透析者のための 新型インフルエンザ対策 - 日本透析医学会
まとめ
透析患者さんは、風邪などのウイルス感染症に特に注意が必要です。はじめは軽い風邪だと思っていても、肺炎を起こして重症化することや、身体が脱水状態となって、腎臓の機能が悪化することもあります。
特に高齢の患者さんは重症化しやすいので、いつもと体調が少しでも違うと感じたら、主治医を受診して適切な治療を受けることが大切です。
まずは日頃から体調を整えるための生活を心がけ、手洗い・うがいを励行し、感染症の予防に努めましょう。
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