透析患者に輸血が必要になったら読む記事
透析技術の向上や薬剤の使用によって透析患者の腎性貧血に対する輸血の機会は少なくなってきていますが、どうしても輸血が必要となるケースはあります。透析患者に輸血が必要となるケースや輸血の方法、輸血のリスクについて知っておきましょう。
意外に知らない輸血のこと
輸血とは、血液や血液成分を補う治療法です。血液の成分には次のはたらきがあります。
- 全身に酸素を運ぶはたらき
- 出血したときに血をとめるはたらき
- 血圧を一定に保つはたらき
大量の出血や病気、薬の副作用などによって、血液の成分の量が不足する場合や血液の成分のはたらきが悪くなる場合には、体に酸素が十分に運ばれず、体の組織が障害されます。また、血が止まらなくなって血圧が低下して命に危険が及ぶこともあります。
このように血液成分の量の不足や血液成分のはたらきの不良などがあり、血液成分を補う必要がある場合に行うのが輸血です。
透析患者の輸血方法
透析患者は血液透析時、シャント部分に体から血液をとり出す側(脱血側)と血液を体に返す側(返血側)の2カ所に針を刺して行います。透析患者が輸血をする際には、血液製剤の中に含まれるカリウムを除去するために、ダイアライザーを通して行うことが基本となり、一般的に輸血の際に使われるのはシャントの脱血側です。
輸血した血液分だけ水分量が増加し、心臓への負担が増えることや輸血による副作用のリスクもあるため、透析患者への輸血や輸血の量の決定は慎重に行われます。
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透析患者が輸血するケースとタイミング
透析患者が輸血するのは次のようなケースです。
- 重症の貧血
- 急激な出血で血圧や心拍数が安定しない場合
- 手術で大量の出血がある場合
- 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の治療で改善しない(ESA低反応性)貧血
- 副作用のために赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の治療が困難な場合
透析患者は腎性貧血の際に赤血球輸血が必要となることがあります。貧血の症状がある透析患者に輸血を行うタイミングは、治療目標とするヘモグロビンの数値のみで判断するのではなく、透析患者の状態をみて決めます。輸血によって症状の改善が得られることが輸血を行う判断には必須条件です。
透析患者が輸血するときの注意点
患者の血液型と合わない血液を輸血した場合には、赤血球が壊れる溶血性貧血や血液が止まりにくくなる血液凝固異常などが起こるリスクがあるため、患者の血液型と輸血する血液型の適合を厳格に管理する必要があります。
輸血によって、次のような様々な副作用が考えられます。
- ⾚⾎球が壊されて数が少なくなる溶血
- アレルギー反応やアナフィラキシーショック
- 輸血後数時間以内に急激に肺に水がたまり、呼吸困難の状態となる輸血関連急性肺障害(TRALI)
- 輸血によるウイルス感染
- 体の中に必要以上に鉄が溜まる鉄過剰症
- 輸血側のリンパ球が患者側の体の組織を攻撃し、障害が起こる移植片対宿主病(GVHD)
- 大量に輸血した際にみられるクエン酸中毒
- 主要組織適合抗原複合体(MHC)抗原による感作
透析患者に対する輸血が決定されるのは、慎重な判断のもとにリスクよりも輸血をして得られるメリットが大きいと考えられる場合です。輸血の際にはできるだけ少ない量で実施します。
まとめ
透析患者に対しては薬物療法でも改善が見込まれない腎性貧血や、手術などで大量出血した際に輸血が必要となります。透析患者への輸血の実施は、リスクよりも輸血したときの症状の改善が見込まれるときに判断され、最低限の量の輸血が行われます。
輸血が必要となった際には、輸血が必要な理由や輸血によるリスクの説明があるため、十分に理解・納得したうえで治療を受けましょう。
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