抜歯をしても大丈夫?透析患者さんの歯科基礎知識
透析患者さんは虫歯や歯周病になりやすいのですが、透析治療で週に3回通院していると定期的な歯科通院ができていない方も多いようです。
虫歯や歯周病が気づかないまま進行し、痛みや腫れの症状が出てから歯科に行くと、「抜歯」と言われたケースもあるでしょう。
抜歯は歯を抜き傷ができて出血するので、感染しやすく出血しやすい透析患者さんにはリスクが高い治療です。透析患者さんが抜歯をする際に気をつけたいことについて確認していきましょう。
透析患者さんは抜歯しても大丈夫?
透析患者さんは感染しやすく口内が乾燥しやすいため、虫歯や歯周病などのお口の中のトラブルが多くなります。
透析患者さんは透析中に血液が固まらないように抗凝固薬の使用や、血栓ができないように抗血栓療法を行っている場合が多いので出血しやすい状態にあります。そのため、出血リスクのある抜歯には注意が必要です。
事前の準備や対応が整った歯科で行うと、さまざまなリスクが考えられる透析患者さんの抜歯を安心して行えるでしょう。
参考文献:原田歯科医院 透析をしているが、抜歯は問題ないか?
抜歯をする際に注意したいこと
糖尿病をはじめとする基礎疾患を持っており、透析の影響でさまざまなリスクを抱える透析患者さんが抜歯する際にはほかにも次のような注意が必要です。
出血しやすい
- ・血液凝固に関する血液検査値(PT-INR値など)を確認して、抜歯ができるかを判断する
- ・透析当日は抗凝固薬を使用しているので、透析当日の抜歯はしない。透析翌日以降に抜歯を行う
- ・抜歯後は十分な止血をする。抜歯を数本する場合やガーゼで持続的な圧迫止血が難しいと想定できる場合は止血シーネ(マウスピースのようなもの)を事前に準備する
- ・しっかりと縫合をする
感染に注意する
- ・免疫機能が低下していて感染しやすいので、予防として抗菌薬を服用するなどの対策が必要
モニタリング
- ・シャントのある腕では血圧測定しない
- ・循環器疾患などの合併症を抱えている患者では、処置中の血圧、SPO2、心電図などのモニタリングを行う
- ・起立性低血圧やめまいを防ぐために、寝ている体勢から急に体を起こすことはしない
- ・事前に透析主治医に透析日、患者さんの状態、合併症、血液データ、抜歯時の注意点などを確認する。抜歯後は、抜歯の箇所、抜歯の状態などの情報共有、連携を図る
- ・服薬している薬が複数ある場合が多いので、投薬して問題がないかを確認する
その他歯科治療に関する注意点
透析患者さんが抜歯や手術などを行う歯科治療を受ける際には出血、感染などのリスクが伴います。
定期的に歯科検診を受けて虫歯や歯周病の進行を予防する
透析患者さんは虫歯や歯周病にかかりやすいので、抜歯や手術が必要となる状態になる前に、普段から定期的に歯科検診を受け、口腔内の清掃や虫歯、歯周病のチェック、早期の治療を受けるようにしましょう。
歯科、透析双方の主治医に透析治療を受けていて抜歯が必要な旨を伝える
抜歯や手術などの出血が想定される歯科治療を行う際には、透析で通院している病院の主治医と抜歯をする歯科医院との連携が必要となります。
透析主治医には抜歯が必要と言われたこと、歯科主治医には透析治療を受けていることを伝えるようにしましょう。
まとめ
透析患者さんが抜歯する際には出血や感染が問題となり、簡単には治療を進めることは難しくなります。
口の中が渇きやすい、感染しやすいなどの理由により、透析患者さんは虫歯や歯周病になりやすいので、抜歯しなければならない状態まで進行しないように日頃から歯科検診を受けることが大切です。
また、抜歯が必要になった場合は透析の主治医にその旨を伝え指示を受けるようにしましょう。
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