腰痛を軽減したい!透析患者さんの腰痛の原因と対策
透析患者さんでは、ベッドで長時間過ごすことによる一時的な腰痛や日常的に継続して腰痛を抱えている方もいらっしゃいます。
腰痛は多様な原因から起こる可能性があるため何が原因で起こっているかを判断し、適切な対策をとることが必要です。透析患者さんでよくみられる腰痛の原因と具体的な対策方法についてみていきましょう。
透析患者さんで腰痛に悩む方は少なくない
2019年の国民生活基礎調査によると、腰痛は男性では1位、女性では肩こりと僅差で2位になるほど、抱えている人が多い症状です。
透析患者さんでも腰痛がある人は少なくありません。外来通院中の透析患者さんへのアンケートでは、約4割の透析患者さんが腰痛を抱えているという報告があります。
参考文献:厚生労働省 国民生活基礎調査 2019年 Ⅲ 世帯員の健康状況 1自覚症状の状況
透析患者さんの腰痛の主な原因
透析患者さんの腰痛の主な原因は次の5つです。
- ・透析治療中に長時間同じ姿勢をとり続けるために起こる一時的な腰痛
- ・運動習慣がなく、筋力低下から起こる腰痛
- ・透析アミロイドーシス、骨ミネラル代謝異常による整形疾患に関連する腰痛
- ・腎臓疾患や血管病変、神経疾患に関連する腰周辺の痛み
- ・心因的な要因から起こる腰痛
同じ姿勢を長時間とり続けることによる腰痛
透析治療中は4~5時間ベッドの上で過ごします。ベッド上で同じ姿勢をとり続けていると、同じ部位に圧がかかり、腰痛が出やすくなります。
運動習慣の減少から起こる筋力低下
わが国の慢性透析療法の現況(2018年12月31日現在)によると、「運動習慣がない、ほとんどない」という人の割合はどの年齢層においても最も多く、6割~8割を占めます。年齢が高い人ほど、また、透析歴が長い人ほど運動習慣がない傾向にあります。
透析患者さんは運動習慣がなく日常的に運動不足であることに加えて、日常生活で歩く機会が少なく、活動量も低い人が多いという報告があります。
運動習慣がないと、下肢を中心に筋力低下が進みます。加齢による影響も加わり、さらに筋力低下が進むと次のような影響が出てきます。
- ・筋肉が萎縮して柔軟性が低下する
- ・身体を支える力が弱くなり猫背になる
- ・膝を曲げることがしんどくなり、下の物をとるときに膝を伸ばしたまま手を伸ばす
- ・動くことがしんどくなり歩行量も減少する
このような状態が起こると腰への負担が増し、慢性的な腰痛になります。
透析アミロイド―シス、骨ミネラル代謝異常による整形疾患
透析患者さんは骨ミネラル代謝異常によって骨がもろく、変形しやすい状態です。長期の透析により、骨にアミロイドが沈着すると骨の変形も進みます。
腰部脊柱管狭窄症や変形性脊椎症、腰椎すべり症、圧迫骨折などが起こると腰痛が出ます。
疾患に関連する腰痛
腎炎や腎癌などの腎臓疾患、腹部大動脈瘤などの血管病変、脊髄腫瘍などの神経疾患などに関連して腰周辺の痛みがみられることがあります。
心因的な腰痛
長時間透析をしていることの辛さなどによる心因的な要因から腰痛が起こることもあります。
透析患者さんの腰痛対策
透析患者さんの腰痛対策には以下の方法があります。
- ・透析中は同じ姿勢をとり続けないために、体位変換を行う:自分で動ける場合は身体を起こす、横向きに寝るなどして身体を動かすようにする
- ・透析中に下肢のトレーニングをとり入れる:自転車こぎ運動やチューブ運動、足踏み運動などを行う
- ・毎日の歩行量・活動量を増やし、筋肉を使うようにする
- ・体幹・下肢のストレッチングで筋肉の柔軟性の向上を促し、筋力トレーニングで筋力増強を図る
- ・日常的に背中をまっすぐにした姿勢をとるように心がける:膝を使うようにして、腰に負担がかかる姿勢はとらないようにする
- ・しびれがある場合、痛みが増す腰痛、なかなか改善しない腰痛は主治医に相談の上、受診し、疾患が隠れていないかを確認する
- ・勢いよく座らない・転倒に気を付ける
- ・ストレスや不安感などを溜め込まないように、早めに周囲に相談する。リラックスできる方法を見つける
まとめ
透析患者さんの腰痛に対して運動療法の導入なども行われています。腰痛は整形疾患や内科的な疾患から起こる場合もあるため、一時的な腰痛や筋力低下から起こる腰痛ではないと考えられる場合は早めに受診し、適切な対応をとることが必要です。
運動不足の人は生活の中で動くことを少しずつ増やすことから始めましょう。筋力がつけば腰痛も軽減し、動くことも苦痛ではなくなっていきます。
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