透析患者が足を切断しないために知っておきたいこと
透析患者が足を切断するケースは、なぜ起こるのでしょうか。足を切断せざる得なくなるリスク要因や、下肢切断の多い年齢層や割合について説明しています。透析患者の足切断のリスクについて詳しく知り、足切断を避けるために大切なことを把握しましょう。
透析患者が足を切断するケース
日本における透析患者が四肢を切断する人数は、2009年(6,486人)から2014年(8,787人)にかけて、透析患者の増加に伴って年々増加傾向にあります。1)
透析患者が足を切断する要因としては、末梢動脈疾患(PAD)が多く見られます。末梢動脈疾患(PAD)は手足の動脈疾患の総称で、PADの中でも特に多いのが下肢閉塞性動脈疾患です。
下肢閉塞性動脈疾患とは
下肢閉塞性動脈疾患は下肢ASOやLEADと呼ばれます。足の血管の動脈硬化が進んで血液の流れが悪くなり、間欠性跛行(歩くと足が痛くなり、休むと痛みが和らいで歩けるようになる)や足のしびれ・冷えなどの症状が見られ、日常生活に支障をきたします。
病気が進行すると、さらに血流が悪くなって、安静にしているときでも足が痛むようになり、潰瘍(皮膚が皮下組織まで損傷して皮膚が大きくえぐれた状態)や壊疽(皮下組織、筋肉などの組織が死滅して壊死し、黒や黄色に変色した状態)を起こして、足を切断しなければならなくなります。
足を切断した透析患者は足を切断していない透析患者に比べて死亡リスクが高くなるという報告もあります。3)
・1)慢性透析患者での四肢切断の現況、新規発生とその要因
・2)2022 年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン
・3)透析患者の下肢切断 日本義肢装具学会誌 Vol.31 No.3 2015
・血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン
下肢切断の年齢と切断率
血行不良による足切断の年齢はほとんどが60歳以上と報告されています。
2009年から2014年の透析患者の四肢切断者数の割合は次の通りです。
2009年 | 2.9% |
---|---|
2010年 | 3.2% |
2011年 | 3.4% |
2012年 | 3.5% |
2013年 | 3.6% |
2014年 | 3.7% |
出典:4)より作成
日本の透析患者の年間の四肢切断の割合は0.62%と報告されています。日本の一般人口全体の0.0013%と比べると、透析患者の四肢切断率は高いことがわかります。4)
糖尿病患者も要注意です
透析患者の2~3割は下肢閉塞性動脈疾患を合併しているとの報告がありますが、1) 糖尿病を有している透析患者は糖尿病を有していない透析患者に比べて、下肢閉塞性動脈疾患を合併する割合が4倍以上高いとされています。 2)
糖尿病患者は足の潰瘍や壊疽を起こす糖尿病足病変を発症しやすく、末梢神経障害で感覚が鈍くなっていると、傷から感染して潰瘍や壊疽などの足病変を起こしやすくもなるので、注意が必要です。2021年末時点での透析患者の原疾患として最も多いのは糖尿病性腎症で4割近くの透析患者が糖尿病を合併しています。5)
糖尿病患者も要注意です
透析患者の2~3割は下肢閉塞性動脈疾患を合併しているとの報告がありますが、1) 糖尿病を有している透析患者は糖尿病を有していない透析患者に比べて、下肢閉塞性動脈疾患を合併する割合が4倍以上高いとされています。 2)
糖尿病患者は足の潰瘍や壊疽を起こす糖尿病足病変を発症しやすく、末梢神経障害で感覚が鈍くなっていると、傷から感染して潰瘍や壊疽などの足病変を起こしやすくもなるので、注意が必要です。2021年末時点での透析患者の原疾患として最も多いのは糖尿病性腎症で4割近くの透析患者が糖尿病を合併しています。5)
透析や糖尿病以外のリスク要因
重症化すると足を切断するリスクのある下肢閉塞性動脈疾患(下肢ASOまたはLEAD)の発症要因となるのは、透析や糖尿病のほかに、喫煙、高血圧、脂質異常症、心疾患、脳血管疾患などが挙げられます。年齢や性差もあり、60歳以上で多く、年齢が高いほどその頻度は多くなります。また、男女比では男性が女性の約2倍となっています。
下肢閉塞性動脈疾患を合併している透析患者の7割は症状が出ない状態で透析を開始しています。2)大きな症状が見られないままに重症化する場合もあるため、足をよく観察して、色はおかしくないか、傷はないか、冷たくないかなどをチェックし、トラブルに早く気付いてケアを行うことが大切です。2016年より、下肢末梢動脈指導管理加算が算定できるようになり、フットケアを導入する透析施設も増えています。
まとめ
透析患者が足を切断する要因となるのは、主に末梢動脈疾患(PAD)です。PADの中でも特に下肢閉塞性動脈疾患が原因となるケースが多くみられます。透析患者の四肢切断率は、一般人口全体の四肢切断率よりも高く、2009年から2014年にかけて増加しています。糖尿病を合併していると、下肢閉塞性動脈疾患を合併する割合が高くなります。下肢閉塞性動脈疾患は症状が出にくく、足切断すると死亡リスクも高くなるので、足のこまめな観察を行い、トラブルの早期発見・ケアにつなげましょう。
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