無酢酸透析(カーボスター)のメリット・デメリット
無酢酸透析とは、どのような透析なのでしょうか?従来の透析液には少量の酢酸が加えられていますが、無酢酸透析は、酢酸を使わずに行う新しい透析です。
この記事では、無酢酸透析がどのような透析であるか、従来の酢酸を含む透析とはどのように異なるのかを説明しています。また、メリット・デメリットについても整理しています。より自分に合った透析治療を受けるための参考知識として、無酢酸透析について学んでいきましょう。
無酢酸透析とは
透析液には、血液のpHバランスを整えるためのアルカリ化剤として、炭酸水素ナトリウムが使用されています。しかし、炭酸水素ナトリウムの使用によって、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが血液中で結晶として固まりやすくなることがあるため、それを予防するために少量の酢酸が使われています。
透析液中の酢酸が血液中に移行すると、酢酸の末梢血管拡張作用により、透析中の血圧低下が起こりやすくなります。また、炎症性サイトカインを誘導して炎症反応が出やすくなることもあります。肝機能の低下があると、酢酸不耐症により、透析中の血圧低下や頭痛、吐き気、嘔吐などが見られる場合もあります。
酢酸はこのような身体への影響があるため、酢酸を含まない無酢酸透析を導入する透析施設が増えてきました。
無酢酸透析の種類
無酢酸透析には酢酸を含まない透析液(カーボスター)を用いる透析(HD、オンラインHDF)や、AFBF(アセテートフリーバイオフィルトレーション)があります。AFBFは大量の補充液を使用して行うオフラインの血液濾過透析(HDF)で、補充液に酢酸が含まれていません。1)
カーボスターは酢酸を使わない代わりにクエン酸が使用されている透析液です。2007年に国内初の酢酸フリー透析液として、使用可能となりました。2)
・1)東腎協 No.190 無酢酸透析について
・2)EAファーマ株式会社 国内初!酢酸フリー透析剤 カーボスター®透析剤、新発売
無酢酸透析のメリット
無酢酸透析では、酢酸による末梢血管の拡張や心臓機能の抑制に影響されなくなるため、血圧低下や頭痛、嘔吐、吐き気、胸痛、手足がつるなどの症状が起こりにくくなる場合があります。無酢酸透析液(カーボスター)の臨床効果の報告では、酢酸を含む透析液から酢酸フリーのカーボスターに変更後は、血圧が安定しやすくなり、透析後の疲労感の軽減、食欲増加などがみられたとあります。3)
そのほかにも、心不全症状の改善、筋肉量の増加傾向、骨代謝の改善、心胸比CTRの低下など、従来の透析液に比べて生体適合性に優れ、QOLを向上させるという報告もみられています。1)
・3)大久保範子ほか 無酢酸透析液(カーボスターⓇ)における臨床効果の検討
・1)東腎協 No.190 無酢酸透析について
無酢酸透析のデメリット
pHバランスの調整を行う酢酸が含まれないため、体内がアルカリ性に傾く傾向があります。体内がアルカリ性に傾くと、血管が収縮して手足のしびれや筋肉のけいれん、収縮などが起こりやすくなります。4)
副作用としては、血圧低下、血液中のpH上昇・カルシウムイオンの減少や増加・血中重炭酸塩の増加や減少、血中ブドウ糖増加などの代謝・電解質異常、ショック、吐き気、頭痛、口の渇き、低血糖、低カリウム血症、骨粗鬆症、線維性骨炎、骨軟化症、異所性石灰沈着症などが挙げられています。5)
また、心不全などに用いられるジギタリス剤を使用する場合は注意が必要です。
・4)正井基之ほか カーボスター透析液の調整と慢性維持透析患者の酸塩基平衡 透析会誌 46(7):651〜659,2013
・5)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 カーボスター透析剤・M
まとめ
カーボスターは酢酸フリーの透析液で、血液透析(HD)やオンラインHDFで使われています。従来の透析液には酢酸が使われていましたが、酢酸による血圧低下や透析後の疲労感が透析患者のQOL(生活の質)の低下につながることもあり、無酢酸透析液(カーボスター)を導入する透析施設が増えています。無酢酸透析液にはデメリットもあるため、主治医と相談して、身体の状態に合った透析方法を選択していきましょう。
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