透析患者は知っておきたいノベルジンという薬のこと
ノベルジンという薬の名前を聞いたことがあるでしょうか?透析患者さんが服用する可能性のある薬です。ノベルジンの薬の概要と透析患者さんが服用するケースについてお伝えします。透析患者さんによくみられる亜鉛不足を予防するための注意点についても説明しています。ノベルジンについての理解を深めていただければ幸いです。
ノベルジンは何の薬?
ノベルジンは、酢酸亜鉛水和物が主成分の薬剤で、ウィルソン病(肝レンズ核変性症)、低亜鉛血症に用いられます。もともとはウィルソン病の治療薬でしたが、2017年3月に低亜鉛血症への服用が追加で認証されました。
ウィルソン病
ウィルソン病は遺伝性の代謝異常疾患です。銅の体内代謝に障害が生じて肝臓や全身の臓器に銅が蓄積され、肝炎、肝硬変、神経症状、黄疸、腹痛、全身倦怠感、精神症状などの多岐にわたる症状がみられます。
低亜鉛血症
血液中の亜鉛の濃度が低下して体内の亜鉛が不足している状態です。肝疾患、糖尿病、腎不全、透析患者などでみられます。亜鉛が不足すると、脱毛、皮膚炎、貧血、味覚障害、発育障害、骨粗鬆症、慢性下痢、食欲低下などの症状が現れます。
ノベルジンの注意点・副作用
空腹時に服用すると胸焼けや胃痛などが起こるリスクがあるため、食後に服用します。血液中の銅の濃度が低下する可能性があるので、服用を開始してからも定期的に検査を受けて、血液中の銅と亜鉛の濃度を確認することが望ましいとされています。
透析患者が服用するケース
亜鉛不足になると、免疫機能が低下して感染症のリスクが高まり、重症化しやすくなります。傷の回復も遅れがちです。
透析患者さんは尿中にアルブミンが多く排出されるため、アルブミンに結合する亜鉛の量が減ります。また、食事制限によって摂取する亜鉛の量が不足しがちとなる上、食事から摂取した亜鉛も腎臓の機能低下によって腸管から吸収されにくくなります。透析治療によって亜鉛も失われるので亜鉛が不足しやすい状態です。
ノベルジンを亜鉛不足で使用する際には、ほかの病気の可能性がないと診断されて、かつ血清亜鉛濃度が80μg/dL未満であることとされています。服用が必要かどうかは主治医が判断しますので、倦怠感や味覚障害、脱毛、皮膚炎、下痢、吐き気などの自覚症状がある場合は主治医に伝えるようにしましょう。
亜鉛不足にならないために
透析患者さんが亜鉛不足にならないためには、日常の食事にも注意が必要です。食事に含まれる亜鉛は、肉、魚、貝類、乳製品、穀物などに多く含まれていますが、亜鉛を多く含む食品は、透析患者さんが制限しなければならないタンパク質やリンが多く含まれる食品でもあります。そのため、バランスを考慮しながらこれらの食品を摂取することが重要です。
亜鉛を補給するサプリメントも市販されていますが、自己判断での服用は避けて医師や栄養士、薬剤師に相談の上、指示に従うようにしましょう。亜鉛不足は血清亜鉛濃度で判断されるので、定期的な血液検査は欠かせません。定期検査を受けて早期に発見し、治療を開始できるようにしましょう。
まとめ
ノベルジンは、亜鉛が不足しやすい透析患者さんにとって亜鉛を補う大事な薬です。医師や栄養士から指導されている食事療法の内容に従い、食事からの亜鉛摂取を意識しましょう。免疫力が低下している透析患者さんにとっては、感染症にかかると命に関わることもあります。なるべく早く治療を始められるように、味覚障害や皮膚炎などの症状がある場合は主治医に伝えて検査につなげることも大切です。
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